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英語メディアが第三者の目で見た日中のデモ、浮かび上がるのは

2010年10月20日 11時46分53秒 | コラム・ルポ
英語メディアが第三者の目で見た日中のデモ、浮かび上がるのは(gooニュース・JAPANなニュース) - goo ニュース

英語メディアが伝える「JAPAN」をご紹介するこのコラム、今週は日本と中国で起きているデモについてです。どちらがどちらの引き金になったかもはや分からない「どっちもどっち」な状態を、英語メディアは第三者の目で見て伝えています。胸が悪くなるような不快な場面も。そしてそういう第三者の目で漁船衝突事件とその後の顛末を見ているだろうアメリカのノーベル賞学者は、浮かび上がってくるのは巨大な「ならず者」の姿だと書いています。(gooニュース 加藤祐子)

○「中日でデモ」と報道

18日付のBBCは「中国デモの損害を日本憂慮(Japan laments China protest damage)」という見出しの記事で、菅直人首相が国会で、中国における反日デモについて「中国側に遺憾の意を伝えるとともに、邦人及び日系企業の安全確保を強く要請している」と答弁したことを伝えました。「遺憾の意を伝える」は「expressed regret」と英語になっています。記事は続けて、中国当局も、週末にかけて東京で行われた反中デモについて「深い懸念(deep concern)」を表明したと言及しています。

記事は、複数の中国都市で日本系企業や店舗、日本車などが投石などの被害にあったと伝える共同電を引用し、そして続けて、「日本のナショナリストたち(Japanese nationalists)」が16日、東京の中国大使館周辺でデモ行進したこと説明。この場合の「nationalist」を「愛国者」と訳すか「国粋主義者」と訳すか、「国家主義者」と訳すか「民族主義者」と訳すのか、価値判断はお任せします。

BBCは「中日対立、デモで長引く(Protests prolong China-Japan row)」という別の記事でも、東京の中国大使館前のデモでは、何百人もの人が「『日本が危ない』、『侵略者中国を許すな』などの横断幕を持っていた」と紹介しています。

(余談です。日本が「日中関係」と言い、中国発の記事は「中日」と言うのは当然でしょうが、英語記事では「China-Japan」と表記することが多いです。その表記に色々な意味を深読みしようとすればできますが、ここでは行数が足りません。ちなみに「日清戦争」は英語で「Sino-Japanese War」、「日露戦争」は「Russo-Japanese War」と呼ぶのが一般的です)。

余談でした。ロイター通信も「諸島紛争をめぐり中国と日本でデモ」という見出しの16日付記事で、「中国の複数都市で、デモ参加者は日本に対する怒りを露わにした」、「東京では諸島の領有権をめぐり今月2度目になる反中デモが開かれ、数千人が行進した」と前文で続けざまに並列しています。

記事は、四川省成都の繁華街に大学生ら約2000人が集まり、「警官数千人が見守る中」、「『釣魚島を守れ』、『日本と戦え』など口々に叫びながら」ショッピングセンターを行進した、「商店の一部には損害が加えられたとの報道もある」と報道。陝西省西安や河南省鄭州でも行われた学生デモについても、言及しています。

そして続けて、「東京では諸島の領有権をめぐり今月2度目になる反中集会が開かれ、数千人が行進した」、「東京では2000人以上が、旧陸軍の射撃場跡地だった青山公園に集まった。日本国旗を掲げ、『中国に尖閣諸島を侵略させない、中国に日本やアジアの国々を侵略させない』と唱えながら、混雑する六本木地区を通り抜けて行進し、中国大使館へ向かった」と報道。

記事は、デモ主催者のひとりが「日本は第2次世界大戦で侵略者ではなかったという主旨の論文を公表して解任された元航空幕僚長、田母神俊雄氏」だということも解説しています。

AP通信も17日、「中国と日本で数千人、諸島領有権めぐり集会(Thousands in China, Japan rally over island claims)」という記事で、まず中国各地の学生デモについて報道。加えて、国営新華社通信が成都や西安のデモを英語でのみ伝えたことにも触れて、中国本土のサイトに載ったデモに関するコメントや写真はすぐに削除されたことも説明しています。「中国でのデモ行動はすぐに解散させられるか、厳しく管理されていることが多い。16日のデモ主催者たちが当局の許可を得ていたかは不明だ」とも言及しています。

その上でAP記事は、「中国のデモは、東京で抗議行動が予定されているというネット情報に反応して行われた様子だ。東京は約2500人が国旗を手に中国大使館へ向かい、諸島に対する中国の領有権主張に抗議。国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受け服役中のノーベル平和賞受賞者、民主活動家・劉暁波氏の釈放を求める人たちもいた」と書いています。

ふだん日中関係をさほど詳しく伝える新聞とは言い難い「ロサンゼルス・タイムズ」や「アイリッシュ・タイムズ」も、「日中両国でデモ」と報道。「アイリッシュ・タイムズ」は、「東シナ海にある諸島の領有権紛争をめぐり中国と日本の双方で今週末、デモが行われたのを受けて、アジアの二大超大国、中国と日本の間の緊張関係は悪化した」と書き、まず中国各地のデモを報道。さらに、「東京の中国大使館で16日午後、日本の右翼数千人が抗議行動を起こしたことに、中国は『深く懸念している』と中国外交部の馬朝旭報道局長が述べた」ことや、馬局長が中国の一部の都市で発生した反日デモについて、「日本側の誤った言行に義憤を示すのは理解できるが、国を愛する熱情は、法に基づいて理性的に表現しなければならない」と述べたことも紹介しています。

さらに新華社通信の英語版にも、「中国大使館における日本の右翼デモに、中国が深く憂慮」という16日付記事が載りました。

記事は、「中国は日本に対し、『外交関係に関するウィーン条約』が定めた関連義務を確実に履行し、中国駐日大使館・領事館、関連機構及び人員の安全を確保する効果的な措置を採るよう要求した」という馬報道局長の談話を伝え、さらに、「中国が主権を主張する東シナ海の釣魚島沖で9月7日に、日本海上保安庁の巡視船2隻と中国漁船が衝突して以来、中・日関係はこじれている。東京では、右翼団体が『日本側の態度を明確にするため』、中国大使館の前に3000人を動員しようと計画していた」と書いています。

新華社としてはこれを英語版に載せて世界に発信するというのが、ポイントなのだろうなと思います。それはともかくとしても、英語メディアの多くはこうして「中国と日本の両国でデモ」と書いています。中立の第三者の目で眺めるならば、中国の学生たちが一方的にデモ行動をして日本企業や商店や日本車を襲っているだけではない――という情勢です。

○なぜ学生たちはデモできたのか

その一方でAP通信は18日になると、「中国、荒っぽい反日デモを容認(China allows rowdy anti-Japanese protests)」という記事を配信しました。「国民の不満が中国政府そのものに向いてしまうのを防ぐため(中略)当局は荒っぽい反日デモを容認した」という分析です。同じことは2005年の反日活動の時も、さかんに言われました。

「中国当局が容認する中、各地の抗議行動は平和的に始まったが、次第に制御不能になっていたようだ。参加者の一部は下品で人種差別的な横断幕を掲げていたし、中国人女性の服が日本の着物に似ているからと公衆の面前で脱がせようとまでした。政府は後に国民に対し、愛国心を表現する際には法律を守るよう警告した」と記事は書いています。

学生たちが「中国女性の服を脱がせようとした」とは、いったい何事か。記事によると、成都にあるコーヒー・チェーン「Dicos」で食事をしていた女性は、実は伝統的な中国服を着ていたのだが、それを日本の着物と間違ったデモ隊は「むりやり服を脱がせた」とAP通信は書きます。女性はトイレで服を着替え、ほかの人から服を借りる羽目になったのだと店長が話しているそうです。

記事によると、「成都のデモが当局の許可を得ていたか不明だが、政府支援を受けている大学組織が主催していたと、香港の『蘋果日報(アップルデイリー)』は書いている。成都の西南民族大学の学生は(中略)デモの計画はネットのチャットグループを通じて広まったが、主催者が誰かは分からないと話した」とのこと。

「北京の中国人民大学で国際関係論を教える時殷弘教授は、政府がデモに反対していたなら、学生たちが参加できたはずはないと話す」とAP通信は書き、さらに北京の中国社会科学院政治学研究所のアナリスト、リュウ・シャンイン氏にも取材。デモは中国人の怒りが中国政府への不満に変化する前に、日本への怒りとして発散させるための場なのだとリュウ氏は指摘します。「国民感情を抑圧すれば、不満が高まるだけだと政府は承知している。国内での政府の評判は、腐敗に汚職、住宅費の高騰、年金問題などと、ただでさえ悪い。国民が外国に抱く不満を発散させてやらなければ、国民は政府の正当性を疑うようになってしまう」と。

中国国務院直属にして最高峰のシンクタンクともいえる中国社会科学院の研究者が、外国メディアに対して、ここまではっきり政府批判をするのに驚きました。これもまた、中国のひとつの側面なのでしょう。開かれていると捉えるべきか、メディア戦術に優れていると捉えるべきか。

しかしそれにしても。「伝統的な中国服」と「日本の着物」の区別もつかずに、女性にその場で服を脱がせようと、いきりたつ学生の集団というのは……。AP通信が伝えたこの出来事が本当なら(疑う理由もありませんが)、非常に象徴的な場面だったように思います。胸が悪くなるほど。

かつて自分も長いこと学生でしたし、大学生だから無知で愚かなわけでも、大学生の集団だから愚かなわけでも、学生運動だから愚かなわけでもないというのは承知しています。それでも、AP通信が伝えたこの場面には、なにか本質的な、暗澹たる既視感を覚えます。今の社会に居場所や仕事が見つけられず、不満に満ちた若者集団、政府や権力者にいいように利用される、教条的でファナティックな若者集団というのは……。ヒトラー・ユーゲントを持ち出すまでもなく、中国にはかつて文化大革命があり、紅衛兵という集団がいたわけですから。

今の中国政府には、21世紀的な経済力と1960年代的な統治術が共存している(1960年代的というのは中国においてであって、欧米基準からすればそれは1930年代的)。それが、私が抱いている違和感の根本なのではないかと思えてきました。

中国政府に対する違和感。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムで、中国のレアアース輸出規制を取り上げて、「非常に不穏な感じがする(I find this story deeply disturbing)」と書きました。「世界最新の経済超大国は、その地位に伴う責任を担う用意がないようだ。残念ながら、漁船事件に対する中国の反応はこのことを更に裏付けるものだった」と。

「主な経済大国は通常、国際システムにとっての利害は自分にとっての利害でもあると認識しているので、経済戦争を選ばない。ひどい挑発を受けても。中国によるひどく保護主義的な為替レート政策について、アメリカの政策担当者がどれだけ呻吟と逡巡を重ねてきたかを見れば、それは明らかだ。しかし中国は、政治紛争を意のままにするため、通商上の力関係を何のためらいもなく駆使した。国際通商法にあからさまに違反しているのに(そんなことはしていないと否定するが)。レアアースのエピソードを中国のほかの国際商取引の行動と足し合わせると(中略)、そこに浮かび上がるのは、ルールを守ろうとしない、ならず者の経済超大国 (rogue economic superpower) の姿だ。問題は、では私たちはそれについてどうするつもりなのか、ということだ」


これだけメディアが発達した現代。中国の学生にも、中国政府の意図が分かりそうなものですが。
それとも、徹底的な情報操作が行われているんでしょうかね? 

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