鉄道ファンならずとも、あこがれる列車がある。それは天皇・皇后両陛下など皇族が乗車される「お召し列車」だ。

 この列車、鉄道各社が管理している。たとえば、JR東日本にはE655系「なごみ(和)」がある。これは、2007年に2代目の「お召し列車」として完成した。列車中間には、両陛下や国賓が乗る「特別車両」がある。ここには、高さ95センチ、幅220センチという大きな窓ガラスには防弾加工が施されている。

 それ以外の車両の内装は、明るい木目調で統一され、全席に電動のリクライニングシートが備えられ、タッチパネル式のモニターもある。モニターではテレビや前面展望などの映像が見ることができる。これは、東北新幹線や北陸新幹線にある最上級の車両「グランクラス」にもなく、まさにお召し列車だけの“特別仕様”だ。

 このE655系、皇室とその関係者しか乗車できないと思われているが、実は一般人でも乗ることができる。JR東日本・広報担当者はこう話す。

「E655系はツアーなどの団体専用列車としても運用されています。この場合、『特別車両』や菊の御紋は外されます。弊社が運営するツアーでは、2015年11月29日に房総半島を日帰りで一周するものがありました」

 なるほど、われわれでも“インペリアル”な恩恵にあずかれるというわけである。ツアーの概要はこんな感じだ。

 午前8時8分に東京駅を出発。車内で房総の食材を使った特別弁当を食べ、千葉県いすみ市にある大原駅に到着。そこから二手に分かれて観光して、大原駅に再集合。そこから東京に戻り、東京駅に午後6時11分に到着する。

 日帰り旅行にもかかわらず、費用は2万8800円〜とかなり高額だ。同区間の往復の運賃とグリーン料金はあわせて9910円なので、食事代や観光料金が含まれるとはいえ、“破格”である。

 このほか、国内の各旅行代理店を通じて、年何度かE655系に乗れるツアーが組まれている。2016年1月23日には、日本旅行のツアーで「那須塩原市制10周年記念 JRハイグレード車両『なごみ』で訪ねる『なすしお玉手箱号』那須塩原の旅」があった。

 このツアーは上野駅で集合し、栃木県の那須塩原駅で現地解散するというもの。片道料金にもかかわらずそのお値段は1万4800円だった。

 ぜひ、「お召し列車」に乗ってみたい……そう思って、いくつかの旅行代理店に問い合わせてみた。

 だが、現在、ツアー募集はなかった(2016年2月12日時点)。旅行代理店によれば、当然ではあるが、お召し列車は皇室の利用が優先されるため、ツアーが実施される、およそ1カ月前にならないと募集要項は明らかにならないという。憧れの列車を体験するにはこまめな情報収集が必要になるようだ。

(ライター・河嶌太郎)


ツアーに参加するほどの金銭的な余裕はないけど、車体の美しいフォルムに惚れた!