グダグダ cobamix

グダグダと書いています

聖教新聞 (2018/ 7/ 4) 〈介護〉 祖父母の認知症

2018年10月22日 21時38分41秒 | コラム・ルポ

2018年7月4日 聖教新聞

在宅介護する孫娘を描く
「体験型」介護ジャーナリスト 漫画家 青山ゆずこさん
 
 

 認知症の祖父母を在宅介護した、20代半ばの体験を漫画化して共感を呼ぶ、青山ゆずこさん。新著『ばーちゃんがゴリラになっちゃった。』(徳間書店)に描かれる“ゆずこ家の介護”について聞きました。(写真は本人提供、漫画は著書から)

現実は想像以上

 介護の“か”の字も知らない私が、認知症の祖父母と同居したのは、25歳の時。それまでは、実家を出た母とおば(母の妹)が時々、祖父母の様子を見に行っていました。

 大好きな祖父母が認知症になったら、孫は何ができるか――私にはそんな思いもありましたが、当時1人暮らしでしたので「一緒に住めば生活費が浮くかも」と、よこしまな考えも(笑い)。ところが認知症介護の現実は想像以上に大変だったのです。
 祖父はアルツハイマー型の認知症で、周りに興味が湧かず、自分の世界に閉じこもる傾向。何事も“われ関せず”といった様子です。
 一方、祖母は脳血管性の認知症で、暴言や暴力、徘徊など、あらゆる症状が。腕力があって暴れると手に負えず、まるで“ゴリラ”でした。
 昔の優しかった祖父母の姿はなく、変わった理由を知りたくて同居を続けました。でも予備知識のない私の介護は直面する課題を“体当たり”で乗り越えたようなもの。そんな体験を漫画にしたのは、介護中の人でも読めるものがあれば、きっと役に立つと思ったからです。
 私自身、介護中は本を読む余裕などなかったのですが、後になると、介護の知識があれば改善できたと思うことが少なくありません。本作は、お菓子を食べながら気軽に読めるよう、あくまでも控えめに描きました(笑い)。“介護ど素人”の苦闘を笑いつつ、何かヒントを得るきっかけになればと思っています。

溝ではなく絆を

 介護は当初、私と母、おばの3人で行いました。祖母が妄想で悪口を誰か一人に語る場合もあり、誤って信じると3人が不仲になりかねないと懸念。私たちは祖母の発言をSNS(インターネット交流サイト)で共有しました。

 介護する3人が団結する傍ら、父はといえば、母から家のことを任され不満げな表情。おじも何を手伝えばいいのか分からない様子。そこで父やおじとも情報を共有し、祖父母の家に手すりを取り付ける力仕事などを頼みました。
 食事や入浴の介助など、要介護者に直接関わることに限らず、間接的に支えることも介護です。せっかく介護するなら、家族の「溝」を作るのではなく「絆」を強めるものにしたかったのです。
 ただ、家族でも介護の受け止め方はさまざま。例えば母は、元気だった頃の祖父母をよく知っているので、認知症による変化を受け入れるには長い時間が必要でした。私は孫だから介護できた、という側面もあります。

想像力を働かせ

 認知症介護で有効だったのは、私が“ダメ人間”になる作戦。祖母が食事を拒む時は「私が苦手な食べ物だから、代わりに食べてほしい」などと頼むと引き受けてくれたのです。頼られると誰でも悪い気はしないからでしょう。

 介護の愚痴を聞いてくれる人は大切な存在ですが、慰めのつもりでも「認知症だから仕方ない」という言葉には、つらく感じました。納得するため私がそう思うことはあっても、人に言われると“逃げ場”がなくなるようで……。家族が家族を介護する難しさの一つかもしれません。
 それでも想像力を働かせ、「本人が認知症とどう闘っているのか」を知ろうと努力。「介護者は認知症とどう向き合うべきか」と考えるよりも祖父母の気持ちに迫り、より良い介護につなげました。
 これぞ、ゆずこ家の介護と言いたいところですが、私が後悔したくなかっただけかもしれません。一人で抱え込まないことを心掛け、おかげで家族や周囲の人が巻き込まれたのは事実です(笑い)。

悔やむタラレバ

 「寄り添う介護とは、一緒にいることだけを指すのではない」と思えるようになったのは、祖父の他界後、祖母を介護施設に預けてから。在宅では体を痛め、挫折を感じる場面も増えていました。

 客観的に振り返ると、施設に預けるタイミングとしては少し遅いくらい。経験上、介護者が「私は大丈夫」と言いだしたら倒れる直前。家族が家族を嫌いにならないためにも、施設を利用しましょう。家族の不安をよそに、要介護者は“新たな居場所”に慣れていくもの。祖母も同様で、その人生を家族が認めるのも介護ではないでしょうか。
 死別後、介護で〇〇していればと悔やむ“タラレバ”は自分を傷つけるだけ。介護に完璧や正解はないからこそ、自分らしく、そして、わが家らしい介護でいい――それが私の答えです。

 あおやま・ゆずこ 茨城県出身。「体験型」介護ジャーナリスト。フリーライター。漫画家。大学を卒業後、週刊誌のライターとして活動。孤独死や貧困など社会的な問題を取材。2011年から認知症の祖父母と同居し、その介護体験を漫画にしたウェブ連載が好評を博す。イラストは独学。


この記事を読んですぐ、『ばーちゃんがゴリラになっちゃった。』を買いましたけど…。

コメント    この記事についてブログを書く
« ガタケットからの安兵衛 | トップ | やっと…カレー »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。