チャイナMBAマネジメント協会

「CMMA: China MBA & Management Association)」

7/30日経朝刊 「中国版ビジネススクール 商学院に留学生増加」

2013-07-30 | 長江商学院MBA
長江商学院 商慣行理解・人脈に強み 言葉の壁など課題 (2013/7/30付 日本経済新聞朝刊)

 キャリアアップを考える世界のビジネスパーソンの間で「商学院」と呼ばれる中国版ビジネススクールが注目を集めている。中国独特の商慣行や専門知識を学べたり、将来のビジネスにつながるような人脈を築けたりするのが魅力だ。中国で最も人気を集める長江商学院の留学生に商学院の活用方法や課題を聞いた。

 北京随一の繁華街、王府井。大手企業や監査法人も入居する市内有数の大型商業ビル内に長江商学院はキャンパスを構える。香港の財閥、長江実業グループの創業者でアジア一の富豪としても知られる李嘉誠氏が2002年に立ち上げた大学院大学だ。

 「中国のエネルギーと農業ビジネスを学ぶには、米欧ではなく中国で学ぶ必要があった」と語るのはインドネシア人のダルジャ・ジェッシーさん(35)。昨年9月、長江の経営学修士(MBA)コースに入学。49人中、外国人は7人で、あとは国有企業社員など中国のビジネスエリートだ。


14カ月でMBA

 授業は濃密だ。教授陣の多くは米ハーバード大など米欧の名門ビジネススクールから引き抜いた。教授1人当たりの論文発表数は世界の大学院大学で6位。「国有企業の研究」「中国からみた新興国戦略」といった最新テーマを学べる。

 授業は多い日で1日6時間。放課後もケーススタディーの議論や試験対策などで夜まで勉強漬けだという。石川尚さん(35)は「勉強はかなりきついが、米欧なら通常2年間かかるMBA取得が、14カ月で済む」と語る。

 中国では1990年代、国立の清華大学などが相次ぎMBAコースを創設。以来、ビジネススクールを開校する動きが全国に広がった。専門サイトのMBA中国網によると、現在は全国に260校以上。そのほとんどが清華大や北京大学など有力国立大学系で、ここに私立系が躍進する余地があった。

 国立大系の場合、教師陣はほとんどが国内出身。学生も学部から進学するケースが大半で、外部の会社経営者や留学生が学びに来るのはまれだ。一方、私立の魅力は「交流サロン」としての機能だ。国立大に比べ課外活動は充実し、多くの経営者や中央政府の高級官僚も学びに来るとの評価が多い。このため私立に人気が集中する傾向が続く。

 長江の卒業生6000人のうち、半数以上の3000人が国有企業や大手企業の経営者として中国経済に影響力を持つ。中国の電子商取引最大手、アリババ集団の馬雲会長も卒業生の一人だ。華為技術(ファーウェイ)やレノボ・グループなども幹部研修で長江を利用する。

 留学生にとって、こうした卒業生ネットワークをどう生かせるかが問われる。オリックスの中国統括法人で投資や経営企画を担当する大内昭典さん(32)は卒業生の一人。「中国の仕事でわからないことは長江の同窓生に直接質問して解決する」。長江は中国各地の35都市に同窓会を持ち、これがビジネスにつながることも多いという。


欧米並み学費

 もっとも、ただ入学するだけで万事うまくいくというわけではなさそうだ。一番のネックが「言葉の壁」だ。

 ベルギー人のグレゴリー・ヴァンデンベルグさん(24)は「中国の経営者は英語ができない人が多い。コミュニケーションが取りにくい」と語る。「中国でヘッジファンドを立ち上げたい」と長江に入学したが、人脈形成に四苦八苦している。

 卒業生の著名経営者を招く講演会など、人脈形成の機会は多い。しかし「中国語が堪能でないと、本格的に人脈をつくるのは難しい」と感じる。

 留学生の受け入れ体制にも課題が残る。学費は約38万元(約620万円)と欧米並み。講師は一流で、キャンパスも北京の一等地にある。だが「キャンパスはまるでオフィスビル。講師陣も論文執筆がノルマなのか、学生と触れ合おうとしない。これじゃ高い金を払う意味がない」。留学生の一人は不満を漏らす。

 「大学は学生が恩を感じるような深い教育を提供しなければならない」。ハーバード大経営大学院の竹内弘高教授は指摘する。欧米の名門校は在学中の人脈形成から就職活動までを全面支援する。そうした文化も「選ばれる基準」として考えているためだ。中国版ビジネススクールが欧米並みの環境に育つには時間もかかりそうだ。

(北京=阿部哲也)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿