アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

悩ましいインド映画人名表記

2014-02-18 | インド映画

一昨日のブログ記事でつい吠えてしまった(笑)、『ダバング 大胆不敵』のキャスト&スタッフ人名表記。「ここが変です~」とご連絡すると、提供元のビオスコープさん、配給の太秦さん共に、すぐさま次のチラシ等からは訂正して下さることに。「アヌパム・カー」もちゃんと「アヌパム・ケール」と直ることになりました。アヌパム・ケールの顔がパッと浮かばない方のために、顔写真を付けておきましょう。

Photo by R.T. Chawla

ビオスコープさんのお話では、当初は当然「アヌパム・ケール」と思っていたところ、以下のような理由から、日本ではむしろ「アヌパム・カー」が定着したと考えるべきではないか、ということで「アヌパム・カー」になさったのだそうです。

①確認した時点でWikiでの表現が「アヌパム・カー」になっていたこと。(現在は併記されている)
②昨年の話題作『世界にひとつのプレイブック』での表記が全て「アヌパム・カー」だったこと。
③その前のウディ・アレン作品『恋のロンドン狂想曲』も「アヌパム・カー」となっていた。 

そうなんですねー、アヌパム・ケールはIMDbを見てみると、1982年のデビュー以降すでに365本(!)もの作品に出演しているのですが、ここ10年ぐらい、とみに英米圏の映画やTVドラマへの出演が増えています。従って、英語読み(?)のカタカナ表記が露出することが多いのですねー。しかし、英語読み、とは言っても、確かに「her」は「ハー」ではありますが、歌手兼女優の「Cher」は「シャー」ではなく「シェーア」というような発音で、日本では「シェール」と表記していますし、「Kher」を「カー」と読むのが正しいとは言えません。

「アヌパム・カー」という表記は、多分2003年に公開された『ベッカムに恋して』(2002)から日本で使われるようになったのでは、と思います。それ以前に1999年に『シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦』 (1995/下はそのロビーカード)が公開されており、そこでは正しく「アヌパム・ケール」と表記されていたのですが、この映画は世間的認知度が低いままに終わったため、この表記は定着しなかったんですね。で、その後アヌパム・ケール出演作が公開されると、『ベッカムに恋して』の表記が参照され続けてきたのではと思います。梁朝偉(トニー・レオン)主演の『ラスト・コーション』の時も、「アヌパム・カー」となっていたので配給会社にはチラと言ったのですが、もうプレスも出来ていてダメだった憶えがあります。

というわけで、一度間違いが定着するとなかなか訂正ができなくなります。間違いが起きる原因は、主として次の3つではと思います。

1.英語読み、あるいは英語読みだと配給会社が考える表記にしてしまう。ヨーロッパ系の人名だと調べたりする人も、アジア系だとその手間をかけないことが多いので、「アヌパム・カー」始め、「シェカール・カプール」(正:シェーカル・カプール)、「アスガー・ファルハディ」(正:アスガル・ファルハーディー)などが流布してしまっています。

2.2つあって迷った時は、ネットを検索して数の多い方にしてしまう。「アヌパム・ケール」2,480、「アヌパム・カー」6,520、これは「アヌパム・カー」が正しい、となってしまうのですね。ネットでの多数決に頼ると、真実を見誤ること多し。確か、『ロボット』の監督名の誤記「シャンカール」(正:シャンカル)も、これでミスったのではなかったかと...。

3.自分の耳を過信する。慣れない外国語の音は、特に耳があまりよくない日本人には聞き分けられないと思うのに、「こう聞こえた」と譲らない人がいます。その犠牲が『ミモラ 心のままに』 (1999)という題名です。劇中の歌「ニンブーラー(小さいレモン)」が配給会社の人には「ミモラ」と聞こえたのだとかで、提供元が激しく抗議するも、却下。こうして、一生後ろ指さされる羽目に(笑)。

あと、インドの専門家の間でも、表記のゆれがあります。「si」と「shi」の区別を特に明確にせず、両方とも「シ」で表記してしまう派(私もそうです)と、厳密に「スィ」と「シ」に書き分ける派。これは、「zi」と「ji」を両方とも「ジ」にするか、「ズィ」と「ジ」にするか、ということにも関わってきます。私は、アルカカットさんこと高倉嘉男さんが「これでインディア」にまとめられた「カタカナ表記」(素晴らしいお仕事です~)をよく参照させてもらっているのですが、「スィ」表記も含めていくつかの点では意見を異にします。

それから、最近は私も「音引きは落としてもOK」派になってしまったのですが、そうすると、自分が書く時にすごくストレスが溜まることがわかりました。「プリヤンカー・チョプラ」(by「ボリウッド4」)はやっぱり「プリヤンカー・チョープラー」と書きたい! ああ、まったくもって、人名表記は悩ましいです....。

とりあえず「アヌパム・ケール」は、『ダバング 大胆不敵』を大ヒットさせてこちらを定着させてしまいましょう! サルマーン・カーンも、『ミモラ』のリベンジを果たしてねっ!!

 

 
 

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