アジア映画巡礼

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ぶっ飛びJK物語『ポライト・ソサエティ』①イギリスの印パ系女子高生って?

2024-08-14 | 映画一般

行きたい、とずっと思っていながら、いまだに訪問できていないのがイギリスの首都ロンドンです。それも、インド亜大陸からの移民が多く住むというサウソールに行ってみたい、と思ったのは、もう20年ぐらい前。アジア各地のインド系住民社会を、香港、タイ、マレーシア、シンガポール等で覗いてみて、大英帝国インド時代の宗主国イギリスにも行って、インド系の人々の生活を見てみたい、と思ったのがきっかけでした。日本でも公開されたいくつかの映画、例えば『僕の国、パパの国』(1999)や『ベッカムに恋して』(2002)などで描かれてはいますが、やはり自分の目で見たい、と思ったのでした。とはいうものの、2019年までは大学の非常勤講師やら月1回発行する「インド通信」の仕事やらがあって、その合間をかいくぐって、春休みはインド、夏休みは香港と東南アジアに行く生活をしていたため、踏ん切りがつきませんでした。で、さて行こう、と思ったら今度はコロナ禍があり、ロンドン行きは頓挫したままです。そこへまたもややってきたのが、魅力的な映画『ポライト・ソサエティ』(2023)でした。『僕の国、パパの国』に続いての、パキスタン系イギリス人のお話です。まずは、映画のデータをどうぞ。

『ポライト・ソサエティ』 公式サイト
 2023年/イギリス/英語・ウルドゥー語/104分/字幕:田渕貴美子/原題:Polite Society
   監督:ニダ・マンズール
 出演:プリヤ・カンサラ、リトゥ・アリヤ、セラフィーナ・ベ、エラ・ブルッコレリ、ショナ・ババエミ
 配給:トランスフォーマー
8月23日(金)新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかロードショー 

©2022 Focus Features LLC. All rights reserved.

もう一度ストーリーをおさらいすると、主人公はロンドンで暮らす高校生のリア(プリヤ・カンサラ)。マーシャルアーツというか武道や体術を学び、将来の夢はスタントウーマン。高校の先生や同級生からはバカにされるが、親友のクララ(セラフィーナ・ベ)とアルバ(エラ・ブルッコレリ)はリアの味方。だから、いじめっこボスの同級生コヴァックス(ショナ・ババエミ)にコテンパンにやられても、リアはへこまない。ところが、家でのリアの味方だった姉リーナ(リトゥ・アリヤ)が、ここのところ元気がないのがとっても心配。絵画専攻で通っていた美大にも行かなくなり、部屋でくすぶっている。スタントの稽古にもおざなりにしか付き合ってくれないし...。と思っていたら、イスラーム教のお祭りイードがやってきた。母ファティマ(ショーブ・カブール)のお仲間で大金持ちのラヒーラ夫人(ニムラ・ブチャ)が、「イード・ムバーラク(おめでとう)」と宴を開催、両親に連れられ、リアとリーナもラヒーラの豪邸へ。ラヒーラには一人息子サリム(アクシャイ・カンナ)がいて、女の子たちはみんな彼の周りに群れるのだが、リアはもちろん、リーナも知らん顔。それがかえってよかったのか、サリムからリーナにお付き合いの申し出が。しかしリアには、これがどうもうさんくさく思われて...。

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というのが前半のあらすじなんですが、何と言っても面白いのがリアのJK生活。クラスにはいろんなエスニシティの女の子がいて、人種のサラダボールとはこのことか、と改めて感心します。上が制服なんですが、かわいいっちゃかわいいものの、何だか、汚してもいい&着安さが基準みたいなずだ袋系のデザインに、濃い色系。せっかくのティーンのかわいさが、とか言って抗議しないの、君たち、という感じです。「イギリスの高校制服」でググってみたら、大体みんな、ブレザーにネクタイ+プリーツスカートとかで、制服図鑑に載せられるようなカッコいいものばかり。う~ん、制服姿のままリアとコヴァックスがガチで闘うシーンがあるので、その時スカートがめくれ上がったりしないように、ということを考えての映画用制服なんでしょうか。制服図鑑的な格好も見てみたかったわ、ニダ・マンズール監督。

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私服も、リアはまあまあなんですが、上のアルバとクララのようにすごくラフです。JKファッション、ちょっと参考にならないかも。私が時々見るアメリカのドラマで、南インド系の女の子が主人公である『私の“初めて”日記(Never Have I Ever)』というのがあるのですが、そこでは女子高生のデービー(多分”デーヴィー”だと思う)も、それから彼女の親友のエレノアとファビオラも結構オシャレなんですよね。アメリカのJKがこうなので、イギリスのJKも、と思っていたのですが、少々幼い感じがしてしまいます。ただ、イードの宴に来ていた若い女性たちや、姉リーナの結婚式に出席する人たちは、突然変身したかのようにゴージャスなエスニック・ファッションを身にまとい、光り輝くばかりの美しさになります。最初の画像にあるのはその時のシーンなのですが、闘ったリアとリーナはだいぶヨレヨレしているものの、とてもゴージャスな丈の長いドレスとスパッツのような足下を隠すチュリーダール・パジャマを着ています。プレスにある須永恵美子先生(東京外大AA研)のエッセーによると、このリアのドレスは映画『偉大なるムガル帝国』(1960)のヒロインの役名にちなんで、「アナール(ザクロ)カリー(蕾)」と呼ばれるのだそうです。下の踊りのシーンで着ているドレスに似ているからかも知れません。アナールカリー役はマドゥバーラーです。「恋すれば、何を恐れることがあろう」という歌詞で、アクバル大帝(プリトヴィーラージ・カプール)の面前で王子サリーム(ディリープ・クマール)に訴えかける歌になっています。

Jab Pyar Kiya To Darna Kya (जब प्यार किया तो डरना क्या ) Video Song || Mughal-E-Azam Movie Songs

 

『ポライト・ソサエティ』の中でリアが歌い踊るのはまた別の歌なので、次にご紹介することにします。普段はこんな冴えないファッションのリアとそのお仲間なんですが、いざという時の実行力はもうバリバリで、とっても頼もしく、また個性豊かで魅力的。こういう風に活き活きとJKたちを描けるのは、女性監督だからでしょうか。中でも私が惚れたのは、いじめっ子だと思っていたコヴァックスで、なんとまあ男気がある、というと変な表現になってしまいますが、女気があると言うべきか、その言動には拍手パチパチです。リアとならんでいるのがコヴァックスなので、この顔と格好を憶えておいて下さいね。私も昔ガタイが大きくて、ちょっと間違えばいじめっ子キャラになっていたので、よけいに共感するのかも知れません。若い時に、こんな風に人助けができていたら、一生の自信と財産になりますよね。

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最後に予告編を付けておきますので、公開まであと10日、楽しみにしてお待ち下さい。

すべてが型破りの青春バトル・アクション!映画『ポライト・ソサエティ』8.23㊎公開|本予告

 


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