アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

TIFF:DAY4

2012-10-23 | 東南アジア映画

本日も勤務日だったので、TIFFの映画は1本だけ。インドネシア映画『スギヤ』です。

「アジアの風」

■特集:インドネシア・エクスプレス~3人のシネアスト

『スギヤ』 (Soegija) インドネシア公式サイト
 2012/インドネシア語・日本語・オランダ語/インドネシア
 監督:ガリン・ヌグロホ/主演:ニルワン・デワント、アニサ・ヘルタミ

「スギヤ」というのは、インドネシアで初めてカトリックの司教となったアルベルトゥス・スギヤプラナタ(1896-1963)の通称です。映画は彼の覚え書きの形で1940年から1950年までを描く、という体裁を取っています。その間インドネシアでは、1800年から続くオランダ支配に反旗を翻す独立運動が起こり、1942年からは日本軍に占拠され、日本敗戦後の1945年からはオランダとの間で独立戦争となり、1949年12月に独立を達成するという、激動の歴史が刻まれたのでした。

映画は、スギヤ(ニルワン・デワント)が司教となった時のセレモニーから始まって、スギヤの歩みを辿っていくのですが、そこに何人かの人生が重ね合わされます。1人は、独立運動活動家の兄を持つマリイェム(アニサ・ヘルタミ)。それから中国系インドネシア人で、食堂を経営する祖父や母と共に暮らす少女リンリン。さらに、字の読めない少年や、日本人軍人など、いろんな人のエピソードが盛り込まれて行きます。

一番印象的なエピソードは、字の読めない少年のもので、彼は最初オランダ軍の軍人に身分証のチェックを受けて、「自分の身分証を読み上げてみろ」と強要されます。そのあげく、「自分が読めもしない身分証を持っている」と罵られ、痛めつけられるのです。下のスチールの手前がその少年です。

やがて、独立戦争の中で敵に見立てた柱に字を書き、「aを殺せ!」「次はbだ!」と銃剣を突き立てているうちに、彼はやっと字を憶えます。そして最後、オランダ軍のキャンプに人々が攻め入った時、少年は「オレは字が読めるぞ。ムルデカ(独立)と書いてあるじゃないか!」と叫ぶのです。

と書くと、いかにもジーンと来るシーンを想像してしまうのですが、ガリン・ヌグロホ監督はどのエピソードも淡々と処理していて、いまひとつ映画に引き込まれません。さらに、日本人軍人(インドネシア在住の俳優鈴木伸幸)は当初リンリンの祖父の店にいわくありげな姿で登場し、その後軍人として出てくるのですが、日本人の目から見ると奇妙なことだらけ。祖父に「危機」と大書したメモ帳を見せ、「妻から送られてきた」と言ったり、軍人姿で出てくる時はやけに猫背で全然軍人らしくなかったり、インドネシア軍に殺される直前には「通りゃんせ」を歌ったり。もろ、フリクショナル・ムービーになってしまっていました。

そんなこんなであまり感動できないままでしたが、時代の再現にはかなり注意が払われているようで、シーンとしては見応えがありました。Wikiのサイトには製作費約127万ドルと出ていますが、大半がセット代(小道具や衣裳も含む)だったのでは、と思います。ガリン・ヌグロホ監督作品というので期待していたのですが、アハマドさんが教えて下さったインドネシアをよくご存じの方のコメントを読んでみても、やはり手放しでほめてあるものは少ないようで...。 

あと、この映画の字幕にちょっとひっかかるところがあり、「若かれし頃」(正しくは「若かりし頃」)とか、教会用語で1つ2つ意味がわかりにくいもの(例:「代牧」)がありました。TIFFの字幕では珍しいですね。最後の字幕翻訳者のクレジットも出ませんでした。なぜでしょう....。

 

 


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