アジア映画巡礼

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『プアン/友だちと呼ばせて』バズ・プーンピリヤ監督舞台挨拶レポート

2022-08-07 | 東南アジア映画

8月5日(金)から公開されているバズ・プーンピリヤ監督のタイ映画『プアン/友だちと呼ばせて』が、絶賛の嵐!です。金曜日からちょこちょこツイッターとかチェックしているのですが、cocoのツイッターだと現在326件で満足度100%! まさかやらせではあるまいな、と思いつつ書き込みを読んでみると、その充実した内容にうならされてしまいました。皆さん、感性も文章力&表現力もすごーい! 大手新聞の映画評とかも出てたし、これはやはり「8月はタイ映画!」みたいです。

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個人的に感心したのは、この映画の宣伝パーソンの方が熱心なことで、かつきちんとした宣材を送ってきて下さるため、拙ブログも喜んで載せさせていただいています。というわけで、おんぶにだっこですが、来日中のバズ・プーンピリヤ監督の舞台挨拶レポートをどうぞ。今回は昨日、8月6日(土)に渋谷シネクイントで行われたもので、バズ・プーンピリヤ監督と映画評論家の森直人さんがご登壇。いただいたレポートを貼り付けておきます。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の監督とアジアの巨匠ウォン・カーウァイがタッグを組んだことで話題となり、サンダンス映画祭で絶賛された『プアン/友だちと呼ばせて』が、8 月 5 日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイントほかにて絶賛公開中です。「こんな映画アリ!?」と大興奮を巻き起こし、本国タイで年間ランキング 1 位、アジア各国でタイ映画史上歴代興収 1 位を奪取、世界中からリメイク権を熱望され、日本でも大ヒットを記録した『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ監督最新作。彼の才能に心底惚れた、『花様年華』『恋する惑星』の巨匠ウォン・カーウァイが自らプロデュースを熱望。完成した作品はサンダンス映画祭でプレミア上映され、ワールドシネマドラマティック部門で審査員特別賞に輝きました。この度、『プアン/友だちと呼ばせて』の公開を記念して、タイ No.1 の呼び声高い監督のバズ・プーンピリヤが 4 年ぶりの緊急来日。映画評論家の森直人さんと共にウォン・カーウァイとの映画作りなど制作秘話をたっぷりと語りました。
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『プアン/友だちと呼ばせて』公開記念トークイベント>
■日時:8月6日(土) 14:40~15:10 ※上映終了後のイベント
■場所:渋谷シネクイント(渋谷区宇田川町 20-11 渋谷三つ葉ビル 7F)
■登壇:バズ・プーンピリヤ監督、森直人(映画評論家)<敬称略>
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 カナダ・モントリオールで開催中の第 25 回ファンタジア国際映画祭アジア映画部門で観客賞銅賞を受賞した『プアン/友だちと呼ばせて』のトークイベントが 8 月 6 日都内で行われ、バズ・プーンピリヤ監督と映画評論家の森直人が登壇した。
 この日、都内の複数の劇場でトークイベントを行ったプーンピリヤ監督。「タイ人の間でも渋谷は有名で、個人的にも好きな街です。渋谷に新宿に銀座。日本の街はそれぞれ個性的で大好きです」と JAPAN ラブ宣言。第 25 回ファンタジア国際映画祭アジア映画部門での観客賞銅賞受賞を観客から拍手で祝福されると、両手を合わせて「コップンカップ!(ありがとう!)」と喜んでいた。
 プーンピリヤ監督は日本映画にも造詣が深いようで「是枝裕和監督は、私が映画監督になりたいと思っていた時に影響を受けたアイドルのような存在。しかも彼の映画『誰も知らない』は私の人生の一部を変えました。素晴らしい映画とは最後まで心に残るものであり、素晴らしい芸術であると思わせてくれたからです。この場をお借りして是枝監督には感謝を伝えたいです」とリスペクトしていた。
 森から、製作総指揮を務めたウォン・カーウァイとのコラボレーションについて聞かれたバズ監督は、「1990 年代の映画を観て育った世代にとって、ウォン・カーウァイはみんなのアイドル。だから『一緒に仕事をしよう!』と言われたときは『夢ではないか?』と思ったくらい」とビックリ仰天したことを披露。およそ 1 年半に渡る脚本の修正作業を共に行ったそうで、「彼の考え方や映画製作についても学び、まるで彼が先生で僕が生徒の映画学校で学んでいる気分でした」と共同作業の様子を回想した。
 元カノに会いに行くというストーリーラインを思いついたとき、ウォン・カーウァイからはあるミッションを与えられたという。それは「本当に自分の元カノを訪ねてインタビューする」というもの。バズ監督は「過去の出来事は一体何だったのか?自分の間違いは何だったのか?を明確にする狙いがあったわけですが...。しかし実際に自分の元カノに取材するというのは、想像以上のチャレンジでした」と苦笑いだった。

 本作にはプーンピリヤ監督自身のパーソナルな面もふんだんに盛り込まれているようだ。「この作品は個人的な映画だと思います。撮影中も自分と対話しているような感覚でした。過去の自分が現在の自分に語り掛けてきて、それは将来の自分にも影響を与えるような気がする。若き自分へのトリビュート的な作品であると言えるでしょう」と思い入れを明かした。
 撮影素材も大量となり「編集はまさに挑戦。大量のフッテージがあり、最初の編集バージョンは 3 時間 50 分くらいありましたから。そこからいかに映画の肝になるところを失うことなく、短くしていくか」とかなりの難産だった様子。それに森が「3 時間 50 分バージョンも観てみたい!」と興味を示すと、バズ監督は「今晩送りましょうか?」とジョークを放って笑わせた。
 また、余命宣告を受けた青年ウードを演じたアイス・ナッタラットについてバズ監督は、「ウードの役作りをするべく、彼は誰よりも先に NY に行って、タイレストランで数週間実際に働きました」と役者魂を紹介し、「スゴイネ!」と日本語で絶賛。アイスは 17 キロもの減量に挑戦したが、「アイスには NY にいる末期がんになった私の親友ロイドに会ってもらいました。アイスは彼に会ったことで役作りのインスピレーションを受けたようで、とても熱心に役を演じてくれました。アイスはこの作品が、私とロイドの記憶に対する思い出に捧げる映画であると理解してくれたのだと思います」と感謝していた。
 最後にプーンピリヤ監督は、「ここ数年パンデミックで大変ではありますが、このように皆さんと再会できて、日本でこの場所に立てていることは自分にとって意味のあることです。皆さんも私のように人生をエンジョイしていきましょう!」と呼び掛けて挨拶を締めくくった。

『プアン/友だちと呼ばせて』は現在、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイントほかにて絶賛公開中(公式サイトはこちら)ですが、日本語版主題歌「Nobody Knows(Japanese ver.)feat. 向井太一」も8月5日にリリースされました。映画のシーンを盛り込んだPV(ちょっとだけですが、チュティモンちゃんも登場)、映画をご覧になった方もこれからご覧になる方も、しっとりした曲&歌声と共に楽しんで下さいね。

STAMP / Nobody Knows (Japanese ver) feat. 向井太一


最後にもう一つだけ、この映画の注目点を。本作の字幕はアンゼたかしさんで、監修は高杉美和さんです。アンゼたかしさんの字幕は以前から、一度じっくりと拝見したいと思っていたのですが、欧米作品をずっと手がけていらしたのでなかなか機会がありませんでした。今回拝見して、映画を見終わったあと「あ、字幕ってあったっけ?」状態になり、やっぱりお上手なんだなあ、と思いました。アジア映画の字幕をもっと手がけて下さるといいのですが、アンゼさんにやっていただくのにふさわしい作品かどうか、というのもありますし、ま、今回の僥倖をとりあえず喜ぶことにします。配給のGAGAさん、GJ!

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それから高杉さんはタイ語の専門家で、かつタイ映画の専門家とも言える人で、タイ映画@日本には欠かせない人。今回の監督舞台挨拶でも通訳をやってらっしゃいます。アンゼさんは英語字幕台本から日本語字幕を作られたと思うのですが、①固有名詞のカタカナ表記、②英訳する時の飛躍、超訳など、③英語と原語の考え方の違いによる不明点(例えば、「My sister」と英訳されていても、日本語なら「姉」か「妹」かを判断しなくてはいけないetc.)などが正確でないと、不完全な字幕になってしまいます。残念ながらこの原語監修が抜きにされることも多く、以前は特殊言語の映画には監修がきちんと付けられていた東京国際映画祭も、数年前から経費削減のためナシになりました。今はネットもあるから、検索すればいいじゃないか、とおっしゃるかも知れませんが、ネットの固有名詞表記は間違いだらけ。インド映画でよく間違えられるのは「Rahul」なんですが、正確に「ラーフル」という訳が出てくるのはまずまれで、英語からの翻訳者さんはほとんどが「ラフール」に。シャー・ルク・カーンも泣こうというものです(訳が分からない人は『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』を見よう!)。今回のタイ映画はちゃんと監修も付けて下さり、再び配給のGAGAさん、GJ!! なのでした。

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映画の公式サイトはこちらです。上映館がどんどん増えていますので、お近くの映画館で「プアン(เพื่อน/友だち)」とご一緒にぜひどうぞ。

 


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