フリュウ・ギャラリーに出品したイラストです。
キャプションをそのまま引用↓
こころの声を聞くこと。
前兆を見逃さないこと。
本当の宝物を求めるとき、宇宙のすべてが味方になる。
わたしはまだ、旅の途中。
スイスの雪子さんが作った童話にchonが絵をつけました。
ゆっくりゆっくり、読んでみてください。

宇宙人に会ったことがありますか?いいえ、ですって?それでは、これから、二人のオシリス人、セルジュとエミのお話をしましょう。
ペガサス座の惑星オシリスでは、心の中で強く思ったことは、良いことも、悪いことも、全部その通りになってしまうのですが、住民は、心が清らかで、朗らかなので、平和に暮らしています。
ある日、大司祭ポペアは、地球を眺めていて、悲しくなりました。人々は、争いに明け暮れているようなのです。地球人が十分に進歩すると、オシリス星に移り住むのです。つまり、地球人は、未来のオシリス人ということができます。ポペアは、弟子達を呼んで、地球に行き、人々に、オシリスへの準備をさせることにしました。地球上のあらゆるところ、学校、病院、会社、家庭、政治の場などへ、派遣されるのです。その中に、セルジュとエミもいました。セルジュは動物への接し方を、エミは心からの笑いを伝えるのが、与えられた仕事でした。

ポペアの弟子達は、地球人の子供として、五大陸のどこかに生を受け、セルジュはスイスに、エミは日本に生まれました。生まれた途端に、自分達がオシリス人であることは、忘れてしまい、会っても、誰だか、わからなくなってしまいました。お互いに、小指と小指を絡ませた時だけ、本当の自分を思い出すのです。
・・・・・
サーカスのシーズンは秋に始まります。レックスサーカスにも、玉乗り、マジシャン、猛獣使いなどの、新しい芸人が入ってきました。その中で、名前の知られていたのが、天使の目をした黒豹使いのセルジュと、爆笑を呼ぶ、空中ブランコ乗りのエミ、別名、空飛ぶキノコでした。

セルジュは、鞭も持たずに檻にはいることで、知られていました。七頭の黒豹にやさしく話しかけながら、そして、笑いながら遊んでいるように見えるのでした。セルジュの目といえば、天使の目はこんなのかな・・・と思われるように大きく、そして、何ともいえない色をしていました。誰にでも、いつでも、礼儀正しく、そして、やさしいので、猛獣使いよりも、羊飼いのようでした。黒豹たちと長い時間を過ごすのに、顔にも、体にも、かすり傷一つありませんでした。
エミは、小さくて、身長121センチ、長い髪の毛をしていました。誰でも、エミを見ただけで、何だか、おかしくなって、頬が緩んでしまうのです。ちっちゃなエミが、空中ブランコで、こちらから、あちらへ飛び、そして、くるくるっと回るのは、大したもので、「ワッー、ウッー、アッー」と歓声があがり、「空中ブランコ乗りのエミ」というと、立派に聞こえますが、まるで、空飛ぶキノコのようでした。エミが、空中を飛んで、そして、怪我もしないで、すっーと地上に降りると、必ず、拍手と大爆笑が起こり、テントまで震えてしまうのでした。
他のサーカス芸人と同じように、セルジュもエミも、自分のトレーラーハウスに住んでいました。セルジュのは、大きくて、パステルカラーの花や、ロマンチックな絵で飾られていました。エミのは、まるで森の小人の小屋みたいで、そこらじゅうにキノコがあるのでした。小さなのや、細くて長いのや、三角のや、黒いのや、オレンジに白でブツブツの水玉模様があるのや、そして、横になって、怠けているキノコまであるのでした。二人はお隣同士で、親友になるのには、余り時間がからなかったのです。
二人とも、自分達がオシリス人という事は知りませんでした。
レックスサーカスは、ドイツ巡業で、ミュンヘン、フライブルク、シュトゥットガルト、フランクフルト、コブレンツを回り、六月にケルンにやって来ました。
エミは、六月末まで、このサーカスで働くことになっていましたので、ケルンが最後の町でした。セルジュは、シーズン最後まで残ることになっていました。
とうとう、エミの最後の日がやって来ました。いつものように、サーカスでは午前中は練習、午後は自由でしたので、セルジュとエミは、ライン河沿いに散歩に出かけました。セルジュは、ゆっくりゆっくり歩くのですが、エミは、チョコチョコと、まるで走っているようでした。河端のベンチに座り、あれこれとおしゃべりをしました。そして、夕方の公演準備の時間がせまりましたので、エミはセルジュに小指を出して言いました。「来年もお会いできるわね。お約束・・・。」セルジュもエミに小指を差し出しました。「約束するよ。」皆様は、何が起こったのか、想像できますね。

サーカスへ帰る途中、暑くて暑くて、エミは「雪が降ったら・・・」と、そして、セルジュは「風が吹かないかなあ・・・」と、強く思いました。近くにポプラの木があって、空から白いものが、ふわふわと落ちてきていました。それは、風に吹かれたポプラの綿毛で、芝生には、もう沢山落ちていましたが、午後の暑い日射しの下で、消えずに残っていました。エミは、落ちてくるのを捕まえようとしましたが、全部、手の中で消えてしまうのでした。セルジュとエミは小指を絡ませて、青空と、ポプラの木と、風に吹かれて落ちる綿毛を眺めていました。二人は、この時、自分達の力に目覚めたのでした。
・・・・・
私は、毎日、ライン河沿いに散歩に行くのですが、二三日前、ポプラの木の側で、青いハンカチを見つけました。片隅に「Serge」と刺繍がしてありました。周りを見渡しましたが、誰もいませんでした。オシリス人のセルジュ、天使の目をした黒豹使いのセルジュがその場所にいた、と確信しています。そのハンカチは今でも、私の手元にあります。セルジュにお返ししたいのですが・・・。
皆様は、今年、サーカスに行くかもしれませんね。もしかしたら、セルジュかエミに会えるかもしれませんよ。
そして、もしかしたら、皆様の中の誰かが、オシリス星から来た人かもしれません。そうしたら、地上でのあなたのお仕事は何でしょうか。
・・・・・
文:小林雪子
絵:chon
雪子さんのブログでも公開してくださいました。
ゆっくりゆっくり、読んでみてください。

宇宙人に会ったことがありますか?いいえ、ですって?それでは、これから、二人のオシリス人、セルジュとエミのお話をしましょう。
ペガサス座の惑星オシリスでは、心の中で強く思ったことは、良いことも、悪いことも、全部その通りになってしまうのですが、住民は、心が清らかで、朗らかなので、平和に暮らしています。
ある日、大司祭ポペアは、地球を眺めていて、悲しくなりました。人々は、争いに明け暮れているようなのです。地球人が十分に進歩すると、オシリス星に移り住むのです。つまり、地球人は、未来のオシリス人ということができます。ポペアは、弟子達を呼んで、地球に行き、人々に、オシリスへの準備をさせることにしました。地球上のあらゆるところ、学校、病院、会社、家庭、政治の場などへ、派遣されるのです。その中に、セルジュとエミもいました。セルジュは動物への接し方を、エミは心からの笑いを伝えるのが、与えられた仕事でした。

ポペアの弟子達は、地球人の子供として、五大陸のどこかに生を受け、セルジュはスイスに、エミは日本に生まれました。生まれた途端に、自分達がオシリス人であることは、忘れてしまい、会っても、誰だか、わからなくなってしまいました。お互いに、小指と小指を絡ませた時だけ、本当の自分を思い出すのです。
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サーカスのシーズンは秋に始まります。レックスサーカスにも、玉乗り、マジシャン、猛獣使いなどの、新しい芸人が入ってきました。その中で、名前の知られていたのが、天使の目をした黒豹使いのセルジュと、爆笑を呼ぶ、空中ブランコ乗りのエミ、別名、空飛ぶキノコでした。

セルジュは、鞭も持たずに檻にはいることで、知られていました。七頭の黒豹にやさしく話しかけながら、そして、笑いながら遊んでいるように見えるのでした。セルジュの目といえば、天使の目はこんなのかな・・・と思われるように大きく、そして、何ともいえない色をしていました。誰にでも、いつでも、礼儀正しく、そして、やさしいので、猛獣使いよりも、羊飼いのようでした。黒豹たちと長い時間を過ごすのに、顔にも、体にも、かすり傷一つありませんでした。
エミは、小さくて、身長121センチ、長い髪の毛をしていました。誰でも、エミを見ただけで、何だか、おかしくなって、頬が緩んでしまうのです。ちっちゃなエミが、空中ブランコで、こちらから、あちらへ飛び、そして、くるくるっと回るのは、大したもので、「ワッー、ウッー、アッー」と歓声があがり、「空中ブランコ乗りのエミ」というと、立派に聞こえますが、まるで、空飛ぶキノコのようでした。エミが、空中を飛んで、そして、怪我もしないで、すっーと地上に降りると、必ず、拍手と大爆笑が起こり、テントまで震えてしまうのでした。
他のサーカス芸人と同じように、セルジュもエミも、自分のトレーラーハウスに住んでいました。セルジュのは、大きくて、パステルカラーの花や、ロマンチックな絵で飾られていました。エミのは、まるで森の小人の小屋みたいで、そこらじゅうにキノコがあるのでした。小さなのや、細くて長いのや、三角のや、黒いのや、オレンジに白でブツブツの水玉模様があるのや、そして、横になって、怠けているキノコまであるのでした。二人はお隣同士で、親友になるのには、余り時間がからなかったのです。
二人とも、自分達がオシリス人という事は知りませんでした。
レックスサーカスは、ドイツ巡業で、ミュンヘン、フライブルク、シュトゥットガルト、フランクフルト、コブレンツを回り、六月にケルンにやって来ました。
エミは、六月末まで、このサーカスで働くことになっていましたので、ケルンが最後の町でした。セルジュは、シーズン最後まで残ることになっていました。
とうとう、エミの最後の日がやって来ました。いつものように、サーカスでは午前中は練習、午後は自由でしたので、セルジュとエミは、ライン河沿いに散歩に出かけました。セルジュは、ゆっくりゆっくり歩くのですが、エミは、チョコチョコと、まるで走っているようでした。河端のベンチに座り、あれこれとおしゃべりをしました。そして、夕方の公演準備の時間がせまりましたので、エミはセルジュに小指を出して言いました。「来年もお会いできるわね。お約束・・・。」セルジュもエミに小指を差し出しました。「約束するよ。」皆様は、何が起こったのか、想像できますね。

サーカスへ帰る途中、暑くて暑くて、エミは「雪が降ったら・・・」と、そして、セルジュは「風が吹かないかなあ・・・」と、強く思いました。近くにポプラの木があって、空から白いものが、ふわふわと落ちてきていました。それは、風に吹かれたポプラの綿毛で、芝生には、もう沢山落ちていましたが、午後の暑い日射しの下で、消えずに残っていました。エミは、落ちてくるのを捕まえようとしましたが、全部、手の中で消えてしまうのでした。セルジュとエミは小指を絡ませて、青空と、ポプラの木と、風に吹かれて落ちる綿毛を眺めていました。二人は、この時、自分達の力に目覚めたのでした。
・・・・・
私は、毎日、ライン河沿いに散歩に行くのですが、二三日前、ポプラの木の側で、青いハンカチを見つけました。片隅に「Serge」と刺繍がしてありました。周りを見渡しましたが、誰もいませんでした。オシリス人のセルジュ、天使の目をした黒豹使いのセルジュがその場所にいた、と確信しています。そのハンカチは今でも、私の手元にあります。セルジュにお返ししたいのですが・・・。
皆様は、今年、サーカスに行くかもしれませんね。もしかしたら、セルジュかエミに会えるかもしれませんよ。
そして、もしかしたら、皆様の中の誰かが、オシリス星から来た人かもしれません。そうしたら、地上でのあなたのお仕事は何でしょうか。
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文:小林雪子
絵:chon
雪子さんのブログでも公開してくださいました。