上田力 「クロス・トーク」

作・編曲家、ピアニスト:上田力とスタッフが徒然なるまま語ります。

゛クラシックな表現 ゛

2009-03-02 | diary
゛私がこの曲を指揮すると、他の指揮者よりクラシックな表現になっているかもしれません。センチメンタルになりすぎたり、大ゲサすぎる抑揚はつけないようにしているのかもしれません~チャイコフスキーの音楽が、とてもクラシックなものだと考えているからです。 ゛

語るのは、1940年レニングラード生まれ、モスクワ音楽院出身のドミートリ・キタエンコ、N響1月の定期に12年ぶりの来日、「悲愴」を振るに先だってのコメントで先々週の「N響アワー」でのこと。

N響の「悲愴」とくれば、先ず故岩城宏之が涙と汗まみれで、情感タップリに振った名演奏を思い出してしまうのだが、キタエンコの指揮ぶりは、ちょっと違っていた。先ず各パートをバランス良く響かせて曲の構造がクッキリ浮かび出てくるのを目指していたようで、その点は、N響も、これだけハッキリとメリハリの利いた音を出せるようになったかという好印象を受けたのだが、反面、<涙にぬれた顔に薄陽がさし、涙の中から寂しい笑顔を取り戻す>といった岩城宏之指揮の絶妙な情感は全く感じられなかった。

これがキタエンコが説く ゛クラシックな表現 ゛だとすると、若い指揮者や奏者、譜面通り正確でミスの無い無表情な演奏を最優先させている日本の現状を連想しちゃうのだけれど、巨匠といわれるキタエンコには、まさかそんなことはないよね…?

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