というのも、1924年に『レディ・ビー・グッド』というミュージカルの劇中歌として書かれて以来、数えきれないほどの歌手や奏者によって表現され続けてきた、この「ファッシネイティング・リズム」を、デイヴはなんと7拍子(4+3拍子とも解釈できる)に設定、その7拍子の基本リズムの中で、部分的には更に変拍子フレーズのアクセントを多用するなど、とても複雑でテンションの高いアレンジ構成にしている。
にもかかわらず、デイヴのピアノ以下、腕達者揃いのカルテットは、逆に、そのテンションを楽しんでいるかのようにグルーヴいっぱいのリラックスした演奏を展開している。
レイ・チャールズが、わざわざヴォイス・メールを寄せてきたのも、彼には当然7拍子アレンジであることやアタマの1拍なんてことはわかっていながら、そんな“仕掛け”を全く“仕掛け”とは感じさせないデイヴの鮮やかな表現力に対して、むしろ“称賛”の意味をこめたジョークを贈りたかったのではないかという気がする。