今年も中村成志さんの「五首選会」に 参加させていただきます。
１２月はバタバタしておりますが、
収縮の危機にある短歌脳を休ませないように
できるだけのことをしようと思っています。
参加の皆さん、よろしくお願いいたします。
さて、ワンコの今年の１００首『逢わないでいる』（仮）はこちらです。
自選五首 「相変わらずカッコつけたやつら」
013:故
「どうすれば会える」メイルがつぶやいて（くやしい）胸が故障したまま
014:残
「残響で生きてる」（それはいつの声）胸の内側揺らしつづける
022:でたらめ
「何処からの人なの」空よ（でたらめに眼に映り込む）空から来たの
028:説
「眼の奥に居る」（うなだれてきっともう）説明できない私のかたち
029:公式
「解なし」にふと眼を逸らす（運命の）公式集には雨のらくがき
はい、去年と同じ選び方です…
今年は「」＆（）のごてごてカッコつけたのを選びました
内容でだと…また違う歌を選ぶのですが…敢えてカッコつけたのを選びました。
「おしゃべりな空だ」(両腕さし伸ばす)プラネタリウムがある町に来て
049:方法
気がつけば死ぬ方法を知っていた知っているからまた恋をする
066:豚
「今季初超宇宙的豚汁」とつぶやくメイルの続きが恋で
083:溝
きっとある海溝ほどの隔たりの縁に二人は腰かけていて
085:フルーツ
「サイテー」がまだくちんなか蠢いてフルーツ牛乳噛んで飲み干す
ワンコ山田さんの歌が持つ安心感はなんなのだろう、と考えます。
ひとつには、定型をやわらかく守っている、ということもある気がします。
大きな破調や句割れ句跨りなどがあまりなく（あるときはもちろんあるけれど）、リズムが自然に体に入ってきます。
では分かりやすいかというと、それがそうでもない（「超宇宙的豚汁」？）。
今年は、ひとつの恋愛絵巻。始まりも終わりも、あるようでないような、日常のなかの事件。
第二部の予感もしますが、考えてみれば、日常とは「第二部」の連続なのかもしれません。
「その惑星は『タイネフリツム星』と呼ばれています。われわれの住む銀河から遠く離れた場所にある五等星。グロブイエイダ座を構成する百個の星のひとつです。グロブイエイダ座は冬の………」
この町に越してきて半月。駅の向こう側にプラネタリウムがあることを知った。
（…わあ、こんなところに）
「ねえ、今度の休みにプラネタリウム行かない？」
わたしが声をかけたのは友達のＫ君。何度か二人きりで食事にいったりはするけれど、デートっぽいことはなし。彼はわたしのことを飲み友達ぐらいにしか思っていないだろう。
「プラネタリウム！？」
「うん、ひとりで行くのもアレかなあ、と思って。映画とかだったら別に独りでもいいんだけど…」
そのあと飲みに行くってことで、約束を取り付けた。
（何、着てこっかなあ。）
さりげなく、いつもどおりに、ふだんとは違う感じに。
当日、わたしは自分の迂闊さを呪った。下見をするべきだった。この日の星空特集は「グロブイエイダ座の発見part99」だった。
（何だ！？発見て。星座って発見するものなの？）
「 新星を発見した！」とかだったら分かるけど…しかも百個もつなげてどうしようっていうの…。
「……すごいね。99回目だよ、今日」
そう、part99ってことはこれまでにグロブイエイダ座を構成する百個の星々についてのガイドが行なわれてきたのだ。一回の上映時間45分間中の約半分を使って。
（なんなんだ、ここは）
プラネタリウムっていうのはねえ、カップル未満をカップルに、彼氏彼女をいい雰囲気にさせるためにあると思ってましたよ、わたしは。
「おしゃべりな空だ」(両腕さし伸ばす)プラネタリウムがある町に来て
プラネタリウムに行って肩が凝ったのははじめてだ。
「雑踏は隠してくれる？」指先が触れない距離で歩いたとして
結局いつもどおりに飲み食ってサヨナラ。
今のままこの状態を何年もくすぐりあって触れない予感
「解なし」にふと眼を逸らす(運命の)公式集には雨のらくがき
しばらく星は見たくない。
『ワンコ山田先輩こんばんは。はじめまして。題詠小学校３年奇面組の珠弾と申します。いきなりこんな長文コメントを書いてしまい失礼致しました。これから反省室に入ります。』
ワンコさん・・・ 相変わらず完成度高いわ。
各鑑賞サイトの常連様だけのことはありますね。
相聞なんだけど、それで押し通している割には爽やかですよね。
やっぱ好きだな。あなたのお歌。
別に意識はしていなかったのですが、水や液体が主題のお歌を選んでいました。
【水もしくは】
001:初
ぷっくりとふくらみ水は流れ落ち胸いちめんにしむ初期消火
初期消火 って！どっから持ってくるよ！巻頭お歌では屈指の名歌かと感じますね。
あまり意図していないけど、官能さえ実力で手繰り寄せてしまう言葉の妙。
022:でたらめ
「何処からの人なの」空よ(でたらめに眼に映り込む)空から来たの
ライノベ風ですが、ありきたりなライノベ一冊よりよほど内容が濃い。これだけ括弧を多用し、
かつ空を重ねているのにうるさくない。むしろ、お手本になり得る名歌。
029:公式
「解なし」にふと眼を逸らす(運命の)公式集には雨のらくがき
ちょっと呆然と見つめてしまったお歌。あえて歌意を探せば予定調和的な運命や人生に
対するアンチテーゼと言えますが・・・ 雨のらくがき よくぞ持って来ました！
051:漕
一瞬に割れても凪いだ水面は漕いでも漕いでもとろとろと凪ぐ
一見、写実で地味かも知れませんが深い。この凪の下、一万メートル。
078:卵
あといくつ卵を抱いているだろう生まれた時に持たされてきて
女性と言う性への呪い いや 祝い。うーん、生理的には男性も似たようなモノですが
詩にはならないです。肉体的事実を淡々と詠んだのかもしれませんが、大地母神的な大
きな愛が読めます。なんだろう？？ この創り。
051:漕
一瞬に割れても凪いだ水面は漕いでも漕いでもとろとろと凪ぐ
057:ライバル
ライバルは想定外の「最近の」長さの幅の深さの違い
071:謡 題名の思い出せない童謡の同じあたりをユニゾンしても
087:閉
鍵をかけ閉め切った部屋この箱のどこか電波がすり抜けてくる
096:取
バランスの悪さにシーソー微笑んで「お取り扱いしかねる案件」
☆恋歌は皆さんにお任せしまして・・・＾＾；
ものすごくかわいいお名前に萌えてます。
好きな歌を選ばせていただきました。
037:ポーズ
「腕ずくで奪う」ポーズを何回か見せてくれたらもうそれでいい
038:抱
「放課後に待ち合わせしよ」異次元を腕いっぱいに抱き寄せた夏
046:奏
私って鳴らない楽器試奏さえケースの中で拒む雨降り
078:卵
あといくつ卵を抱いているだろう生まれた時に持たされてきて
085:フルーツ
「サイテー」がまだくちんなか蠢いてフルーツ牛乳噛んで飲み干す
題詠100首、一貫したテーマを詠まれるということ、素晴らしいです。
毎年毎年、密かに試みてみるものの、
あっという間に玉砕しております私ですので…(^^ゞ
恋とは甘いものでしょうけれど、
甘いというよりは、
むしろちょっとビターな、クールミントな、
お歌に惹かれました。
ものがたりを読んでいるような、
そんな感覚になってしまう100首でした。
評というような立派なものはムリですので、
下手くそな感想で、どうぞご容赦くださいませm(__)m
ありがとうございました！
「揺れないで」(揺さぶらないで遠い声)活断層が潜んだ胸を
026:震
「震源はここ」(いつまでもどこまでも)眼には見えない波形が続く
037:ポーズ
「腕ずくで奪う」ポーズを何回か見せてくれたらもうそれでいい
094:裂
約束の決裂がまだ傷浅く逢わないことで癒える三日月
099:惑
呑みたいね食事したいね逢いたいね(たいね)が降り積む惑星に住む
毎年いろんな表情を見せてくれるワンコさんのお歌。
でもそこにはしっかりとワンコさんの世界がある。
ビクっとするような言葉選びに毎回ドキドキしてしまいます。
そんな中でも思わずぎゅーっとしたくなるような
誰をっていうんじゃなくてその言葉をぎゅっとしたくなるような
そんなお歌を選んでみました。
特に「裂」のお歌が大好きです。
逢わないことで癒える三日月。くー。切ない。
人間のいちばん厄介な感情。
人間のいちばん大切な感情。
お話は終わらない。ずっとずっと。
あたしとあなたがいるかぎり。
ワンコさんの100首を読ませていただき、恋する気持ちのギザギザというか、右往左往というか、当たり前のことですが、恋にはいろんな感情がぎゅうううっと詰まっているのだなあ、ということを改めて感じました。
1首としてきちんと鑑賞できているかとなると、はなはだ心もとない歌もありますが（難しい言葉は使われていないし、文法的に疑問があるわけでもないですが、味わうための感性が近ごろ乏しくなっておりまして…）、ともかくは、以下の5首を選ばせていただきました。
022:でたらめ
「何処からの人なの」空よ(でたらめに眼に映り込む)空から来たの
023:蜂
(蜂の巣をつついたでしょう)誰の眼も気づかぬ騒ぎ体内に持つ
030:遅
「出会うのが少し遅くて」(眼を伏せる)着信履歴がかさぶたになる
029:公式
「解なし」にふと眼を逸らす(運命の)公式集には雨のらくがき
060:直
指先がふれても流さない電子直列つなぎになれないふたり
「でたらめに眼に映り込む」「着信履歴がかさぶたになる」「直列つなぎになれないふたり」といった表現に心惹かれました。特に「着信履歴がかさぶたになる」が好きです。
「 」と（ ）の意図（両者の区別も含めて）は、わかる（ような気のする）歌もあり、わからない歌もあり。ただ、わからない歌にしても、それが鑑賞の妨げになるということはありませんでした。
五首選会、開催して下さって本当にありがとうございました。
何度でもお礼を言いたい～です。
安定感があるのにわかりにくい…
はい、本人も多分そんな感じです。
落ち着いているように見えて、何を考えてるか…
もっとみなさんに「うんうん」って感じていただける歌が
詠めるようにならなきゃですが、どうなりますか…
「私って鳴らない楽器」が「一度鳴り始めちゃったら、どうなるんだろう？」
って思って下さってありがたい～～
弾く人次第だよね…なんて他力本願なこと言ってないで、
自分で歌いださないダメですよね。
さあて～何時になったら鳴り始めるか…自分でもたのしみです。
第二部も…恋愛モード全開でガンガン…の予定です。乞うご期待！
☆珠弾さん
微妙な乙女心を織り込んだ物語に仕上げてくださって、本当に感謝です。
「グロブイエイダ座を構成する百個の星々」なんて素敵な言葉が出てきて
なんだかもっともっと読みたいって思ってしまいました。
どうでしょう、このコラボ…もっと発展させません？
もし、そんなお暇があれば…お付き合いよろしくです！
☆久哲さん
いつも私が詠んだものより数倍膨らませて読んでくださってありがとうございます。
そんな「甘やかしてくれる」存在があってのワンコです。
これからも…じゃんじゃん甘やかしてください～～
よろしくお願いします。
☆冥亭さん
「ライバル」「閉」の歌を選んでくださってありがとうございます。
恋歌…ばっかなのですよ～～そちらのほうもよろしくです。
ああ‥‥それとも…恋愛モードで前進はダメ？
☆藤田美香さん
いさなさん！
「ものすごくかわいいお名前に萌えてます」
ありがとうございます～変な名前で頑張ってきた甲斐があります～～
ビターなところを読んでくださってありがとうございます。
例年「ワンコさんって乙女～路線」だったのですが、今年はちょっとドロドロ…
そのドロドロの中にダメダメを混ぜこんでみました。
「奏」の歌を選んでくださってありがとうございました。
☆みち。さん
「ぎゅーっと」していただけて、本当にうれしい～～
ありがとうございます。
「人間のいちばん厄介な大切な感情」そうですよね。
もうちょっと続く予定です。
みち。さんにぎゅっとしてもらえるような歌に紡いでいけるように…
ものすごくすてきな目標になります、来年もどうぞよろしく。
☆五十嵐きよみさん
いつもお世話になっております。本当に何度でもお礼を、何度でも…
一年でこの１００首しか詠まない私にとって
五十嵐さんの題詠は短歌との繋がりそのものと感じています。
これからもよろしくおねがいいたします。
今年の１００首にはどうしようもない「恋する気持ちのギザギザ、右往左往」を
詰め込むことに専念したつもりだったので
「ぎゅうううっと詰まっている」と読んでいただけてうれしく思います。
「 」と（ ）の多用に関してはちょっと冒険しすぎたかな？って感じています。
メールの文面だけ「 」に入れるっていう形にすっきりさせたらいいなって思っています。
☆五首選会に参加の皆さんへ
１００首を読んでいただいて…本当にありがとうございました。
中村さんのところにも書かせていただきましたが
こうして読んでいただいて、選歌していただくことによって
今年の１００首に息が吹き込まれたように思えるのです。
来年も皆さんに読んでいただけるように完走を目指します。
どうぞ、来年もお付き合いの程よろしくお願いいたします。
（あと二年早く生まれていたなら同級生だったのに…。）
陸上部の山田伊知子先輩（通称ワンコ先輩）に恋するスプリンター葉桜五郎は決意する。
『夏の大会が終わったら告白する』
入部したての新入生が「好きです。僕とつきあってください！」と言ったところで。ましてやワンコ先輩。
ストイックな姿勢。切れ長の目。己の走りを高めることだけにコンセントレーション。人一倍の練習量。都大会記録保持者。放たれるオーラ。下手に口説こうものなら回し蹴り一閃で瞬殺されるだろう確実。
男・葉桜五郎一思案。
力量を示した上で対等の関係を構築する。
自慢じゃないが俺は速い。中学の校内マラソン大会では三年連続三位という実績もある。
ん！？三位で威張った風な口を聞くなって？
だから言ってるでしょ。俺はスプリンターだって。そしてワンコ先輩もスプリンター。ああ、これは運命だなあ。運命の二人が出会ったんだと思っているのは俺の方だけ今のところは。
きっとある海溝ほどの隔たりの縁に二人は腰かけていて
生まれつき足は速かった。短い距離を走って負けたことはない。その俺が………
スタートをミスった。半歩の立ち遅れが命取りになった。まさかの、予選敗退。たしかに甘く見ていたところはあった。
が、よもやここで終わるとは夢にも。
あまりのしょげっぷりが滑稽に見えたのだろう口々に仲間や二、三年生が「来年があるだろうが。がんばれよ、ゴロー」の言葉むなしく。
水飲み場に行ってひとり
頭から水をかぶってこんちくしょう
ふっと誰かがうしろに立った気配一瞬、肩先にふれた刹那の「ドンマイ、ゴロー」の声とスポーツタオル。
（先輩？！）
かたまった。ふりむくことが出来なかった。先輩が俺に、ワンコ先輩が俺に！！！
ながれおちるしずくをタオルでうけとめた。夏。どこまでも青く青い空の陸上競技場。
浅はかをいさめてくれたのだ先輩は。
「君はスタートラインに立ったばかりだろう」
本格的に陸上をやり始めたばかりの俺が初回高得点を取った勢いで告白しても、
万雷の拍手それから満場の一致で却下されちゃう恋だ
君の私に対する気持ちはそんなもん？
女って総じて愛されていると気づいたことで恋をする性
知ってるよ。君の気持ち。本当に私のことが好きだったら……
俺は、俺は…
振り向いた時にはもうワンコ先輩の姿はどこにもなかった。
タオルをぎゅっと握りしめる。
「先輩！ 俺、走ります。ぜったい追いつきますから！待っててください！」
胸駆ける加速のついた血液が「いつ会える」って聞きそうになる
『おはようございます。ワンコ山田さんの百首をいま一度拝読。あらためて五首選出。「恋するスプリンター編」を御届けいたします。
メリークリスマスワンコ先輩。
』
うわうわぁ～～ありがとうございます！！！
感激しちゃった！！！
また読んでくださって、選んでくださって、そして…
今度もドッキドキのときめき☆ストーリーをありがとうございます。
元歌がまさかのＷ○倫とは…思えないような爽やかさです～
素敵すぎるクリスマスプレゼントです。
しあわせです。
こちらからは…お返しする物語がまだ用意できていませんので
「ぎゅう～～っとハグ」でお許しを(^_-)-☆
メリークリスマス☆