001:呼 仕事中ですね出るはずないことと呼び出し音がちいさくうずく
002:急 緊急の連絡なんて無い日々に声を忘れてしまいそうです
003:要 気が向けば返信くださいできるだけ必要事項をご記入のうえ
004:栄 頬ぶくろ言いたいことでふくらんで栄養不足に揺れる秋です
005:中心 絶妙に中心をぼかす返信に煽られている 知りたい知りたい
006:婦 君をほら恋人と言っていいのなら一夫一婦もいいかもしれない
007:度 温度角度湿度頻度すべからくはかりたくなるふたりのあいだ
008:ジャム トーストの上なるジャムの輝きを許せず齧る朝だってある
009:異 異星人めく恋人とことごとくかみ合わなくてきらめく会話
010:玉 誰も手を入れてないはずさわさわと彼のカーデの愛しい毛玉
011:怪 明日の夜の予定を聞けば四時間後怪味ソースを教えてくれた
012:おろか 夢はおろかスケジュールさえも語らない いや教えないスタンスか君は
013:刊 復縁や復刊のうわさ風に乗り届くころにはもうバラけてる
014:込 突然の「髪を切った」のメールには織り込み済みか私の「見たい」
015:衛 電話していいか聞くのは自衛です君のつごうは三の次かも
016:荒 頬すべる涙かちりと結晶し疑いもなく風は荒れ野から
017:画面 延々と画面をゆらす予告編はじまらなくて終わらないふたり
018:救 越えてくるものは悩まし枝に咲く花救いの手若い恋人
019:靴 履きなれた靴と認識されたって履き古したとは言ってくれるな
020:亜 握力は左の方が強いのにもとより右手が亜土ちゃんじゃない
021:小 恋をしているって意識を取り出せばなんか軽くて小首かしげる
022:砕 粉砕じゃなくて玉砕ぶつかって飛び散るときに少し笑えば
023:柱 精神的支柱じゃなくて精神的浴槽くらいの彼氏でいいよ
024:真 おぼえてて誕生石は真珠ですピアスホールはあけていません
025:さらさら 「あいたい」の「あい」はどの字を使おうか口にする気はさらさらないが
026:湿 文字にしたらきっと泣き出すじっとりと飽和に近く湿った言葉は
027:ダウン いつもでもつづくはずない関係のかすかにカウントダウンがきこえる
028:改 さあ地味なわたくしよ悔い改めて派手に恋せよ命のかぎり
029:尺 縮尺をいじって埋める遠距離をグーグルマップは嘲笑っている
030:物 君と手をつなぐ私は囲まれる物珍しいものを見る目に
031:認 謎を持つ魅力と知ってはぐらかす何を確認しても上手に
032:昏 もうずっと昏睡のまま生きている目覚めのキスは逢えない人で
033:逸 簡単なゴロを後逸してしまう夢繰り返し芝生の香り
034:前 新しい彼出現の激動に紀元前とし過去を切り離す
035:液 体液の流れのままに息をしてただ運命と明日を迎える
036:バス コミュニティバス待つ列はうつむいて落ち葉に降られても風を見ず
037:療 この恋に延命治療は要りません死期なら野生が感じ取ります
038:読 お互いの言葉の裏を読みあっているのが甘美 言わぬが花の
039:せっかく その♡いただきましょうせっかくのお心遣いの絵文字ですから
040:清 真夜中に月を観たかと問うメール清く正しく狂おしく来る
041:扇 生き方が(綺麗に言えば)情熱的(まさか扇情的とは言えない)
042:特 もしかして特別な人じゃないもかも冷静な眼は伏せておきます
043:旧 サヨナラを言い出せなくて電話越しかすかに唸る旧式エンジン
044:らくだ なんというていたらくだろう「逢いたい」にとりみだすとはとりみだすとは
045:売 売られたら買いたい喧嘩がありましてキバが触れますキスしていても
046:貨 ちょっとしたご縁が欲しいそう願い小銭入れには五円硬貨が
047:四国 待ち合わせするなら四国駆け寄ってふたりを知らない人にまみれよう
048:負 最後まで負傷者ゼロで終わりたい先に逝く死者1名の恋
049:尼 ボブだとかおかっぱじゃなく「尼削ぎにして」と頼んだ失恋直後
050:答 早押しが苦手な私を遠巻きにくるくるまわる回答権は
051:緯 「なし崩し」それがもっとも端的な経緯残りは「ふたりの秘密」(経緯=いきさつ)
052:サイト いつだって必殺技が出せるようおつまみレシピサイトを巡る
053:腐 刺されたら傷が腐ってゆく様を観察したがる探求心が
054:踵 癖のあるすり減り方が微笑まし君の踵と歩き続ける
055:夫 「大丈夫」いちばん頼りになる言葉嘘でも滝のように浴びせて
056:リボン 初恋の人あやふやな記憶には結わえたリボンが風をはらんで
057:析 分析は無粋解析なら許す恋はすこぶる繊細なもの
058:士 脈拍が助けてと叫ぶ局面に来て凄腕の救命救急士
059:税 君とならもっと納税してみたい乾杯に乾杯を重ねて
060:孔雀 入ってはいけない夜の応接間孔雀の羽根の目が見つめくる
061:宗 まっすぐに見つめ返せない宗教の勧誘の人のまっすぐな眼よ
062:万年 書き進むうちに手紙に雨が降る万年筆のインクの色の
063:丁 お互いに丁度いい間を知っていてまさか虎児には触れたりしない (間=ま)
064:裕 お財布に少し余裕がある時の私をわたしは覚えていたい
065:スロー ああ転ぶああ倒れてくあああああ(映画だったらスローモーション)
066:缶 さよならの代わり二人の真ん中のビールの缶を潰すぺこりと
067:府 唯一の府を京都府に譲ったらあかんあかんって威張るんやから
068:煌 「煌めく」と読めた私を褒めましょう口から出まかせだって実力
069:銅 誰にでも言うんじゃないの「あたためて」君のセリフが銅鑼を連打する
070:本 ふたりには小さな傘がもどかしい雨が本気を出してきました
071:粉 最後には焼かれて恋も粉々に今燃え上がれない二人でも
072:諸 ふわふわとあちらこちらに振りまいた私の愛が諸悪の根源
073:会場 (愛情の)売りつくしセール会場の抒情うずまく熱気の異常
074:唾 脚本は天に唾してもくじけない設定でしたが今泣いています
075:短 淡々と燃える要素のない恋は思いのほかに短命でした
076:舎 舎弟ならうんと良かった一身に可愛がっても憚られない
077:等 愛情の等高線の幅狭く駆け上がれない息が続かない
078:ソース 勢いで大阪においで勢いでソースは二度漬け禁止ですけど
079:筆 筆圧が情熱的で煽られる手紙 親愛なるって書かれて
080:標 心配と興味を座標軸にして一部いびつな愛を見つけよう
081:付 すれ違う淡いあこがれ付属小へバスに乗る子の揺れる定期入れ
082:佳 どうしても佳作止まりの人生で名前の「佳」の字のせいかと恨む
083:憎 連絡はもう知らんってタイミング憎めないけど切れていい恋
084:錦 なにごとにおいてもサービス精神にあふれて錦糸卵がぶ厚い
085:化石 もうちょっと生ける化石として置いてときどきごろんと転げますけど
086:珠 月光にかざして私のものにする祖母が残した水晶の念珠
087:当 ほどきたい当時の彼がまだ持っているらし初めて編んだマフラー
088:炭 地球には愚痴と一緒に吐き出した二酸化炭素が一番危険
089:マーク 一年を経ても危なっかしい恋初心者マークをつけ続けたい
090:山 くちびるを痺れさせたのはわたしよりさっきの麻婆豆腐の山椒
091:略 前略は要らない逢いたいとだけ書くそして破いて破いて捨てる
092:徴 似顔絵に誇張されちゃう特徴が微妙カワイイから遠ざかる
093:わざわざ 人類の進化わざわざさかのぼりムーンウォークするパラパラ漫画
094:腹 腹心の友よ決して相談も恋バナもしないけどそこにいて
095:申 元カノの申し送りの冬の項「マフラー新調すると怪しい」
096:賢 賢明な対処ができる私たち険悪を避ける音は「しゅるり」だ
097:騙 腕を差し出せばするりとかわされて騙し絵の中ハグはまぎれる
098:独 偉そうなことは言えない名曲を噛みしめただけ恋は独学
099:聴 聴き耳を立てるするする忍び寄る嘘とは距離を置いて仲良く
100:願 願わくは人魚にならん望月の夜の波の間のきみに釣られる (夜=よ 間=ま)
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