完走を危ぶまれていた今年……私がどうしても完走したかったのは
例年のように、中村成志さんが催してくださる五首選会に参加したい!
西中眞二郎さんの百人一首の一首に選ばれたい!
麦太朗さんに七首選してもらいたい!
そんな思いがあったからだと思います。
(普段、自分の歌について鑑賞してもらったり、選を受けたりする機会がないからでしょうね)
で、今年も参加させていただきます。
中村さんの五首選会
参加の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
今年のワンコの100首はこちら
自選五首 『何かが隠れてるってほんと?』
010:賞 君のこと特記事項か賞罰かどちらかに記す思い出として
014:更 日中はほとんど隙を眠らせて夜更けを待って泳がせている
022:梨 お祭りの夜配られて梨の実は滴る波だ駆け足の秋
072:産 出産はもう無理ですが美しきチャレンジャーにはなりたい肢体
083:霞 過冷却されて優しい霞にはなれずに雹(ひょう)として牙をむく
例年のごとく「かっこつけた歌」を選ぼうかと思ったのですが
今年は少し趣向を変えて、「おや?こんなところに、こんな言葉が」みたいな歌を
5首並べてみました。
五首選会に参加しております千束と申します。
まずは選歌を。
「ある晴れた日に」
005:叫 本当は叫んでたんだ(連れてって)空は黙って吸い込んでった
020:嘆 ちっぽけな嘆き突き上げ作り出す落ちてけ私の位置エネルギー
029:逃 逃げ出していいよ自由に君は風 境界に捲く有刺鉄線
033:夏 夏らしいことしたいよね八月の口癖で廻す白いパラソル
079:悪 死ぬことはそんなに悪くはないみたいどこまでも透き通ってゆく
どことなく晴れた青空を思わせる五首を選ばせて頂きました。ひろがっていくような情景が目に浮かんで、読んでいてこちらまで大きく深呼吸してしまいそうなそんな歌たちばかりで素敵です。
長々と失礼しました、それでは。
012:わずか
今日何が食べたいかって延長のわずかに君と食べたいがある
044:日本
残酷な仕打ちを人に向けぬようチーズが縦に裂ける日本
060:何
居酒屋はトマトに何もかけないでスライスされるだけで傷つく
070:柿
飲ませても扱いにくい女です焼酎で飛ぶ柿渋は素直
071:得意
火の番をしつつ口にはせぬことを考えて煮る料理が得意
好きな歌、気になる歌を拾っていったら、なぜか飲食に関する五首が集まりました。
美味しそう、というより何やら情念の漂う歌です。
「君と食べたい」は「君を」とも読める。
「裂ける」「傷つく」のは、本当は何か。
「渋」は飛ぶだけなのか。
「煮る」という行為の深さ。
飲食は人間の根幹を成す営みですから、当然その人自身の芯に直結します。
そこはかとない怖さと、それ故の人間らしさ。
今晩の調理で、食材をじっと見つめてしましそうです。
004:やがて
三叉路では流れる水についてゆきやがてみごとに今日のわたくし
~自然体であること。静かな力が溢れる。
007:別
いつか別ルートで滲みオアシスになる約束のふた粒の水
~壮大なロマン。すべてのことは叶うのだと思う。
020:嘆
ちっぽけな嘆き突き上げ作り出す落ちてけ私の位置エネルギー
~負であることを恐れなくていい。力はひとえに平等である
026:期
構成が違う元素で仕方なく二人のずれて来る半減期
~あまりに切ないズレは、あらかじめ刻印されている。
088:弱
強弱の波で溺れる体内に愛されたいがつのる演奏
~3分間の永遠。ムーサに愛された刹那。幻でもいい。
ワンコ山田さん、お久しぶりです。
今回の選歌は「移り行けども消えることなし」といえるものになりました。
3分間と書きましたが、マーラーなら60分ですね。
「位置エネルギー」「半減期」、いいですね。美しいです。ワンコ山田さん健在ですね。
藻上旅人
今年もこうして(質はどうあれ)100首詠めて、五首選会に参加できてよかった……
ここへ遊びにきてくださった皆さんにお礼を申し上げます。
☆千束さん
はじめましてでしたね、ありがとうございます。
空を見上げる歌、気づかないうちにたくさんつくっているような気がします。
今年の歌の中から見つけてくださってありがとうございます。
千束さんのブログを少し読ませていただきました。
もしかしたら、今……ママさんになりたてほやほやでしょうか?
手作りのお品など見せてもらって、そんな時期のことを考えていました。
私、出産後の自分のことに関する記憶が飛んでしまっている時期が多くて
「28歳の私は何を考えて、何をしてたんだろう」
「30歳の私はどんな音楽を聴いてた?」
……
でも、千束さんなら短歌やいろんなことでちゃんと自分の毎日を刻んでいけそうな気がします。
自分の思い通りにならないことばかりで大変ですが、振り返ればあっという間です。
楽しんでくださいね。
☆藻上旅人さん
お久しぶりです。
またご一緒できて、とっても嬉しかったです。
旅人さんには「地軸の傾きのせいだったことが、どれほど僕を勇気づけてくれたことか・・・」
って2009年に書いていただいたのが本当にうれしかったのを覚えています。
「理系、でも優しい」っても。
なのに、この何年かどっぷり恋愛路線に走ってしまって
その頃の似非理系少女(おいおい!)の心を忘れていたかもしれません。
美しいと言っていただいたのを忘れないようにして来年も走りますね。
またご一緒できるのを楽しみにしています。
選歌、コメント、ありがとうございました。
☆中村成志さん
意識せずに選んで、食べもの関係の歌がチョイスされていたってびっくりです。
私の食べ物の歌……ちょっと怖いですか?
そうですね、食べること=生きることなので、いろんなことが繋がってくるのだと思います。
何年か前「犬猫会(犬という名の猫な歌会)」で
果てるまで「食べる仕置き」を科せられて光合成を夢見る身体
って、歌を出したことがありました。
死ぬまで食べることを科せられる……という変な考えなのですが、
食べないと維持できない身体は「つらい、でも幸せ」という考えになってきました。
美味しいもの、もりもり食べましょうね。
今年も五首選会を催してくださってありがとうございました。
そして、5首でうずくまってしまっていた私にあたたかい声援をありがとうございました。
完走できたのはゴールから声をかけて、待っててくださった中村さんのお陰です。
どうぞ、来年もよろしくお願いいたします。
題詠でお友達になった方がどんどん卒業してしまってさびしいですが
また新しいランナーと出会える、そんな場所がいつまでも存続しますように祈ります。
冬が来る・ころぶ・もたれる・好きになる「ええい、地軸の傾きのせい」
ですね。
このお歌も、カッコつけてますねぇ。