天邊一朶雲

2006-01-30 12:35:10 | 映画@ベルギー
もう土曜日の話なのですが、ひっさしぶりに、映画を観てきました。

この映画が観たい! というよりは、映画館に映画を観に行きたい! というのがまずあって、この映画なら面白いかな、と思って観に行った、という感じ。リエージュはブリュッセルより映画の値段が安いのですが、今回は40ユーロで10回観られる回数券を購入。1回4ユーロだから、かなりお安いです。

さて、肝心の映画は台湾の蔡明亮(Tsai Ming-Liang)の「天邊一朶雲」(英題「The Wayward Cloud」/邦題「浮気雲」)。台湾映画って、なんだかクセのある作品が多いように思うのですが、この作品も大いにクセありまくりの1本。そもそも、台湾が極度の水不足に襲われ、人々が水よりも安く生産されるようになったスイカで水分を補給するようになった、という設定自体が飛んでいます。映画には、ミュージカル映画と言うほどではないけど、ところどころミュージカル・シーンが登場するのですが、その歌も踊りも衣装もまた飛びまくり。

物語はというと、そんな水不足の台湾で、職場の美術館の洗面所から水を盗んで暮らしている若い女の子と、ビルの水槽タンクをお風呂代わりにして水不足対策をしているようなAV男優(!)のラブストーリー。女の子は街で出会ったAV男優に少しずつ惹かれていくのですが、彼が自分の住むマンションの別の部屋で撮影をしているAV男優だということに気づくラストシーンがこれまた衝撃的です。

実を言うと、私はラストシーンを見るまで何がなんだかさっぱりわからず、単なるおバカ映画としてこの映画を観ればいいのか、もっと深い何かを私がまったく読み取れずにいるのか、大いに悩みながら観ていたのでした。というのも、AV男優のお仕事風景のシーンはとってもリアルだし(16歳以下鑑賞不可)、スイカ大好きな女の子が妊婦さんのようにスイカをお腹に抱えてマンションの階段を上る途中、陣痛が始まったかのように苦しみだし、無事スイカを出産したりするし、こんなに広い公衆トイレ見たことない、というくらい広いトイレでミュージカルシーンが繰り広げられるし、女の子が暗証番号を忘れてしまったため開かなくなってしまったスーツケースの存在意義もよくわからないし・・・。そもそも水不足のためスイカで渇きを凌いでいる、という設定からしてナンセンス。

結局、衝撃のラストにたどり着いて始めて、よくわからなかったシーンもこの映画の妙に乾いた雰囲気を作り出すのに必要不可欠だったことがわかるのですが、そこまでたどり着くのが長くちょっと苦痛でした。(^_^;)

そんなこの映画のモチーフは一言で言うと「渇き」。水への渇きは甘~いスイカが、他者への渇きは肉体への欲望が癒してくれます。あまりにも過激なお色気シーンのため、ベルリンでは途中退席者が後を絶たなかったそうですが、お色気シーンでさえなんとも乾いているその妙な雰囲気と、水のようにつかみどころのない数々のシーンが、なんとも言えない後味となって見終わった後も残ります。それこそ、地面からじわじわと水が染み出してくる劇中の1シーンのように、この映画の毒のような魅力がじわじわと体の中を回っていくような。(^_^;)

そんなわけで、決して万人受けする映画ではありません。映画館の紹介文にも、「要注意」と書いてあるくらいだし。でも、何かが琴線に引っかかれば、気づかぬうちにこの映画の魅力に溺れてしまうかもしれません。

ちなみに・・・ミュージカルシーンに出てくるスイカの傘、可愛いです。


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