goo blog サービス終了のお知らせ 

転 覧 記

ほぼ展覧会レポ。たまに読書記録。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その11

2009年09月18日 23時31分11秒 | 展覧会



龍涛螺鈿稜花盆(りゅうとうらでんりょうかぼん)元時代・14世紀

より発色の良い全体画像は公式サイトで見られるので
ここでは一部分を大きめの画像で掲載してみました。

盆の上部、並行線の間を黒と白の矩形が交互に現れる市松模様のような文様が、
空へと昇る龍の背景を埋め尽くしています。

龍の鼻先あたりを見ると、水平線の上に入道雲がムクムクと立ち上っており、
この文様が海面を表していることが見て取れます。

ところが良く見るとその雲の上方にもおなじ市松模様が再び現れます!

つまりこの文様は、海面でありかつ空でもあるのです。
2つは無限に広がり渾然一体となり、その境界は判然としません。

それは、瑠璃色に輝く五爪の龍が、空も海も世界の果てまでも
明々と照らし尽くしているからかも知れません。

まさに大帝国を統べる皇帝の象徴に相応しい霊獣です。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その10

2009年09月17日 23時23分56秒 | 展覧会

# 画像クリックで拡大します



聖母像(親指のマリア)イタリア・17世紀 長崎奉行所旧蔵品

日本に渡ったイタリアの宣教師シドッチが携行したマリア像。
彼は捉えられ、江戸の切支丹屋敷の地下牢で獄死したとのこと。

…にもかかわらず、この絵が焼き捨てられもせずに
後世まで残ったのは何故なんだろう。


全身が青い衣で覆われているマリア像はいかにも近寄りがたく感じられるものですが
この絵の場合、袖口から親指の先が覗き見えていることで、
ほんの少しではあるものの、聖母に無防備な印象を与えています。

聖母と見る者との距離を縮めるための工夫なのかもしれません。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その9

2009年09月16日 23時16分24秒 | 展覧会



宜富当貴図 趙之謙(1829~84)筆

#きれいな絵なので、敢えて大きめの画像で掲載してみました
#画像クリックで拡大します


枝もたわわに咲き誇る牡丹の花・花・花。

描線の有無・濃淡・太さ細さによって、巧みに画面全体の印象を構築している一品。

葉の色合いを見ると左下から右上に向かうほど淡く明るくなり、葉脈の輪郭も細く薄く描かれています。
これにより、葉と花の群が岩場からふわりと上方に浮かびあがるような印象を与えています。

また輪郭を廃し、垂らし込みを用いて描かれた画面上部の3つの花は如何にもやわらかで、
画面に同様の効果を与えています。

一方で画面中央には、唯一輪郭を伴った白牡丹がどっしりと腰を据えています。
試しにこの白牡丹を手で隠してみると、何やら画面全体の締まりが無くなることに気づくでしょう。
先ほどの画面上部の葉と花のやわらかさが画面を支配しすぎてしまうのです。

つまりこの如何にも重く描かれた白牡丹は、絵が浮き上がりすぎないよう
画面全体にくさびを打つ役目を果たしているといえます。


この作者は溌墨やたらしこみ、没骨を駆使し独特の境地を拓いたことで有名なそうですが
逆説的にこの絵に見られるような描線の効果も知り尽くしていたんだろうなあ、と思いました。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その8

2009年09月15日 21時50分35秒 | 展覧会

# 画像クリックで拡大します



十二神将立像 辰神 伝浄瑠璃寺伝来 鎌倉時代・13世紀

前屈みでグッと相手を睨めつけ、まさに切りかからんばかりの態勢の像。

浄瑠璃寺の十二神将の中でも一番カッコいい!と個人的に思うのがこの辰神。
見ようによってはやや芝居がかった印象もあるが
それが却って「役者魂」的なものを感じさせてなおカッコいい(なんだそりゃ)。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その7

2009年09月11日 23時15分25秒 | 展覧会
褐釉薬蟹貼付台付鉢

ザ・蟹!!! なインパクトの強さから、ウェブでも画像をよく見かける一品。

自分も何枚か撮っててきたのですが、
口元が写ってるものはあまり見かけないので、この写真を選びました。

カニのリアルさもさることながら、
しがみつく器も青緑にてらてらと光る秞が水辺を思わせ
見ているだけで磯の香りがしてくるよう。

内国勧業博覧会の工芸品はどれも見ていると、
日本独自の産業を盛り立てていこう!という当時の熱気と強い思いが伝わってきて、
なんだか身が引き締まる思いがする。



# 関係ないけど今日の未来創造堂、AIの "ひとり We are the World" おもろかった。
# DVD シングルにしてくれたら買う

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その6

2009年09月11日 00時02分05秒 | 展覧会

木葉天目のお碗。

見る人見る人、首をのばしてガラス越しに器の中の木葉を覗き込み、
「へ~」みたいな顔つきをしてたのが印象的な一品。

自分は子供のころ、科学教室か何かで葉っぱを薬品に漬けて葉肉を溶かし、
葉脈のしおりを作ったのを思い出しました。

撮った写真がややピンボケだったのが残念。

木葉天目できれいに葉脈を出すには、押し葉をして十分に水分を抜いた上で
焼成する必要があるそうな

いろいろな種類の木葉天目を集めて、
さらに実物の押し葉を並べて展示するような企画があると楽しいだろうなあ。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その5

2009年09月10日 23時28分20秒 | 展覧会

熊川(こもがい)茶碗  銘 田子月

16~17世紀の朝鮮のものだそうです。

解説では
“高台近くに白く梅花皮(かいらぎ)状のちぢれがみられるなど
豊かな有景色が見どころとなっている”
…とのことですので、ガラスケース下から見上げて撮影してみました。


平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その4

2009年09月06日 23時55分22秒 | 展覧会
作者不詳の花鳥図

獲物をを狙い澄ますかのように、ぐうっと首をのばして一点を見つめ
今まさに飛びかからんばかりの小鳥の緊張感がひしひしと伝わってくる。

これは構図によるところが大きいと思う。

まず、画面上部の赤ツツジの花を結ぶ右上がりの線と
小鳥(セキレイ?)のピンと伸びた尾が並行に走る。

更にその右上がりの線に対し、2本の右下がりの線が直行する。
ひとつは、百合の花の白と小鳥の白を結ぶ線。
ひとつは、右端中央から延びる古木の輪郭線。

この都合4本の線で構成されるカッチリした格子状の構図が、
画面全体に緊張感を与えてるんだと思う。

特に右上がり(左下がり)の線は、左下へ向かうセキレイの視線に
見る者を同調させる効果がある。



…なーんてそれらしく書いてみたけど、セキレイって虫食だったっけ?

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その3

2009年09月06日 10時02分00秒 | 展覧会
本館1F彫刻部屋より、浄瑠璃寺寄託の広目天。

いま東博で仏像といえば、真如苑が14億で落札した大日如来!
…なんだろうけど、どっちかというと個人的にはこちらの広目天に圧倒された。

展示室内でもこの1体だけ存在感がハンパない。
これまで見てきた四天王像と比べても別格の迫力。

でも何故かは良くわからない。

色がきれいに残っているのが理由の一つかもしれない。
燃え立つ光背は、やっぱり赤くなきゃいけないんだなあと改めて実感した次第。

あとは表情かなあ。何が違うの?といわれると困るんだけど。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その2

2009年09月05日 23時23分19秒 | 展覧会
今日は高村光雲の「老猿」。
思っていたよりデカくて驚いた。

これまで写真で見ていた限りでは、
今にも獲物に飛びかかりそうな動きを秘めた像を想像していたのだけれど
実物をみたら、これは「静」の像だなあと思った。

岩山にどっしりと坐す全身に漲るのは絶対の自信。
虚勢を張る必要も、自分の力を誇示する必要もない。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その1

2009年09月05日 23時15分51秒 | 展覧会
1か月ぶりに行ってきた
前庭の池が掃除されてきれいになってた。

今回はカメラ持参でいろいろ撮ってきた。
写真アップしようと思ったら、goo ブログは1枚ずつしか掲載できないんですね…
不便だなあ。すこしずつアップするしかないか…

「美しきアジアの玉手箱」展@サントリー美術館

2009年08月30日 02時23分45秒 | 展覧会
シアトル美術館所蔵の日本・東洋美術の名品展。
印象に残った作品の感想。

「竹に芥子図」 狩野重信
琳派と見紛うような作品で驚いた。狩野派もこんなデザイン的な絵描く人いたんだ、と。
白いケシの花群のなかに、ぽつぽつと赤い花がリズミカルに配されており
画面全体を引き締めている。

「遊女立姿図」 作者不詳
北斎の「六美人図」と並べて展示されていたが、個人的にはこちらの方が好き。
美人だから。

「蜻蛉・蝶図」 
まるで昆虫図鑑のような掛け軸。なんと70人の絵師の競作。
蜻蛉図の画面上部、署名の上にちょこんとトンボが止まっているのがかわいかった。

「波千鳥」都築華香
茫漠と広がる海原。水平線の上を駆けていく3羽の海鳥。
波は静かにうねっているが、左隻の水面にたゆたう不穏な影。
海鳥たちの飛跡はまるでそこに吸い込まれていくようにも見える。
静かだけどドラマチックで、今回一番気に入った作品。

「紅釉瓶」
鮮烈な赤が陶磁のコーナーでもひときわ目を引いた。
全体に貫入の入った透明な赤釉がかかっており、見れば見るほどリンゴ飴のよう。
おいしそう。

「玳玻天目茶碗」
天目茶碗は実物を初めて見た。
表面ににじむ文様がガレのガラス作品みたいで面白い。

「梅図」李公愚
八曲一双の掛け軸。これは単純に華やかで良かった。

「インドラ坐象」
エロかった。

あと、うかつにも何の絵か忘れたけど、白梅の墨絵(「墨梅図」だったような違うような…)。
輪郭を一部省くことで、薄くやわらかな花びらが浮かび上がって見える幻想的な絵でした。


西洋美術館 ファンデー

2009年07月14日 23時05分01秒 | 展覧会




# 画像クリックで拡大します


7月12日(日)、国立西洋美術館のファンデー(無料開放日)に行ってきた。
ここ数年行っていなかったので、久しぶりの訪問。
最近新館がオープンしたそうで、展示品が大幅に多くなっていた。

ボランティアによる展示品解説、建物ツアー、版画実演、フォトサービスなどイベント盛りだくさんだったが、
開催時刻が被っており、参加を諦めなければいけない企画が多かったのが残念。

また展示品解説は1時間置きに行われていたため
開始時刻を気にしながらの鑑賞となり、やや落ち着かなかった。

特に建物ツアーに参加できなかったのが悔やまれたのだが
家に帰って調べてみたところ、ボランティア解説や建物ツアーは毎週日曜にやっているらしい。
今年の6月から始まったそうなのだけど、全然知らなかった。
また今度、行ってみよう。

今回目を引いたのは、「新収蔵品」の札がかかっていた写真の作品。セガンティーニの「羊の剃毛」
カップルが「(小屋の外の羊が)柵から覗き込んでるのが可愛いね」と話していたのが印象的だった。
気持ち良さそうに毛を刈られる羊、それをうらやましそうに眺める羊たち。とてもほほえましい一枚。

西美はセガンティーニの作品をもうひとつ持っている↓
http://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_7_detail.do;jsessionid=86090D18F6212BF1D5DA456B9D904D44

鶏の親鳥が、画面奥からわらわらと駆けてくるヒヨコの一団を引き連れて、
画面手前に向かって突進してくるダイナミックな構図が印象的な作品。
壁際で男がバグパイプ吹き、農婦たちがその音色に耳を傾け楽しんでいる、という絵なのだけど
この鶏とヒヨコたちのドタバタが、画面をさらに賑やかに、楽しげにしている。

セガンティーニの作品はあまり知らないのだけど、もっと見てみたくなった。


さて今回も単眼鏡を持参したのだが、あまり活躍せず。
保存の都合でガラスケースの奥に展示されることの多い日本画や工芸品に比べ、
洋画の場合は間近で鑑賞できることがほとんどなので、そもそもあまり使用場面がなかった。

ただ、前庭の地獄の門の上のほうを鑑賞するのには役立った。
…扉の上部の枠にゆがんだ顔・顔・顔がひしめくように並んでいたのにはビビった。

ギャラリースコープを選ぶ その2

2009年07月12日 01時03分38秒 | 展覧会
その1のつづき。

【ギャラリースコープ 比較表】


# 画像クリックで拡大します



前回の観点をベースにして、実際にどれを買うか検討することに

◆スペックでの絞り込み

数社の製品を比較し、まず次の観点で絞り込んだ
・倍率     5倍以上
・明るさ    7以上
・アイレリーフ 10mm以上

本当は明るさ9以上、アイレリーフ15以上が望ましい。
しかし選択肢の幅を最初から狭めないために、まずは緩めの条件で絞り込みをしてみた。

結果、候補に挙がったのが画像の表の6機種。赤はメリット、青はデメリットを示す。


◆実機検証

数字だけでは選びきれなかったので、ここで店頭へ出て実機検証をした。

【第1ラウンド】 明るさ検証
まず明るさ 7.3 と 9 ではどれくらい違うか、ビクセン6x16 と ニコン 5x15D を比較してみた。
すると、白や黄色など明るめの色を見ると確かに明度が明らかに違うことがわかった。
というわけで、明るさ9未満の次の2機種はここで脱落。
・「エッシェンバッハ clubM 6x16」
・「ビクセン 6x16」

【第2ラウンド】 アイレリーフ検証
自分は常時眼鏡なのでアイレリーフは最重要項目。
前回店頭で試した際は気付かなかったが、たしかにアイレリーフが小さい機種は視野がケラレてしまう。
ただ、「ビクセン H5~15x17」は、まあ許容範囲と思われた。
結果、ここでの脱落はなし。

【第3ラウンド】 視野検証
視野の最も狭い「ビクセン H5~15x17」を検証。
5倍にセットした状態で、同倍率の「ニコン HG 5x15D」と見え方を比較した。
スペックで視野が1.6倍違う(面積比では2.5倍違う)わけだが、体感的にもその差は大きく感じられた。
「ビクセン H5~15x17」は残念ながらここで脱落。価格が低い理由はどうやらここにありそうだ。

なお「ツァイス Mono 6x18T」「ケンコー リアルスコープ 8x32」も
「ニコン HG 5x15D」と比べると視野が狭いが、倍率の差を考えれば妥当な性能と思われた。

【最終ラウンド】
結果、残った候補は次の3機種

・「ツァイス Mono 6x18T」
  ○ 焦点距離が非常に短く至近距離での鑑賞に強い。
  × ピントリングでないため合焦の操作がしづらい。また値段が高い。

・「ケンコー リアルスコープ 8x32」  
  ○ 最も明るく倍率も高い。大きさを活かして視野も倍率のわりには広い。
  × この中では焦点距離が最も長い。大きくて重い。

・「ニコン HG 5x15D」
  ○ 視野が広く、手のひらに収まる小ささで操作もしやすい。
  × 焦点距離が長め。倍率がやや低い。

つまり、焦点距離 vs 倍率・明るさ vs 視野・操作性・携帯性。

ここまで来ると、優劣というよりは個性が違うだけなので、
なかなか決め手に欠け最後まで悩んだ。

結果としては、カメラや筆記具を一緒に持ち歩くことも考えて
操作性・携帯性で優れる ニコン HG 5x15D を購入した。


◆現場で使用

その足で出光美術館→東博をハシゴして試しに使ってみましたが、おおむね満足です。
やはり片手で取り扱えるのがとても便利。

やまと絵に小さく書き込まれた人物の表情や、
蒔絵・剣鍔・根付などの工芸の細かい細工、
これまで遠くてよく見えなかった観音像の頭上の化仏など
従来、見たくても見えなかった部分や、見えないのでスルーしていた部分に目が向くようになり
博物館めぐりの楽しみが増えました。

ただミュージアムスコープを手にして気づいたのは
ややもすると作品そのものを楽しむのではなく
「スコープで細部を観察すること」のほうに気が行ってしまいがちで、
本末転倒になってしまうということ。

気をつけねばと思った次第です。


【追記 2009.11.15】
追加情報をこちらの記事にまとめました。


◆参考にしたページ
今回の単眼鏡の購入にあたっては、以下のサイトの情報を参考にさせて頂きました。

Party in Preparation
http://partyinmylibrary.cocolog-nifty.com/party_in_preparation/2009/05/2-1d58.html

日本望遠工業会
http://www1.ocn.ne.jp/~bouen/
http://www1.ocn.ne.jp/~bouen/knowledge/knowledge3.htm

アストロフォトクラブ
http://www.astrophotoclub.com/
http://www.astrophotoclub.com/hakubokouka.htm

ケンコー光学ショップ(楽天市場内)
http://www.rakuten.co.jp/kenko-k/720434/

教えて!goo : 美術作品を鑑賞するための単眼鏡
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa795142.html

ありがとうございました。

ギャラリースコープを選ぶ その1

2009年07月12日 00時30分23秒 | 展覧会
最近、また美術館や博物館に足を延ばすことが多くなったので
前々から単眼鏡が欲しいと思っていました。

で、海のエジプト展で単眼鏡がなくて痛い目にあったので思い切って買うことに。

手近なところで家電量販店のカメラコーナーに行ってみたのですが、価格もスペックもピンキリ。
うーん、、、
展示品を試し見したり、店頭のカタログ読んだりしても、何が違うのかサッパリわからない。
すぐにでも買いたかったのだけど、早まるとロクなことにならない。安い買い物でもないし。
ここはグッと我慢して、1週間くらいかけて調べてみることにしました。

結果、やはり単眼鏡にも用途によっていろいろ種類があるらしく、踏みとどまって良かった。
ちなみに博物館や美術館で使う単眼鏡は、「ギャラリースコープ」「ミュージアムスコープ」と呼ぶそうです

以下、ギャラリースコープを選ぶ際のチェックポイントをいくつか挙げてみます。

-----------------------------
【1】 最短焦点距離(焦点至近距離)

単眼鏡には近距離用のものと、中~遠距離用のものがあります。
前者がミュージアムスコープ、ギャラリースコープとして使えるもの。
後者はオペラなど観劇や野外での自然観察に使うもので、美術館ではまず使い物になりません。

近距離用か否は、カタログの「最短焦点距離」の数値を見ると解かります。
文字通り、ピントが合う最短の距離を示すスペック。
たとえば「最短焦点距離」が1m以上の単眼鏡で1mより近い場所にあるものを見た場合、
像のピントが合わずピンボケになってしまうのです。

どれくらいの焦点距離のものを選べばよいかは、鑑賞する対象と用途によります。
大型の展覧会で人ごみの後方から覗き込むように作品を見たい、と言う用途なら1m程度で十分でしょう。
一方で工芸品の細部を至近距離から鑑賞したい、という場合は20~30cmのものを選ぶべき。


【2】 「倍率」と「明るさ」「視野」

倍率が高ければ高いほど良いだろうと思いがちですが、実はそうでもありません。
倍率の高さと両立しない性能が主に2つあります。

 (1)「倍率」が高いと「明るさ」が低くなる。
  まず、超ざっくり言うと、倍率が高いものほど見え方が暗くなってしまいます。
  (ただし、レンズが同じサイズの単眼鏡同士を比較した場合)

  像の明るさ・暗さの度合いは、そのまま「明るさ」というスペックで表されます。
  博物館は照明も抑え気味なので、作品の色合いを肉眼に近い明度で楽しむためには
  「明るさ」がある程度高いもの(9以上のもの)を選ぶと良いらしいです。
  
  で、話を戻すと、この「明るさ」と「倍率」は両立せず、
  例えば倍率が8倍で明るさ9以上という製品はほとんどありません。

 (2)「倍率」が高いと「視野」が狭くなる。
  倍率が高いと視野が狭くなります。
  (これも同じレンズの大きさの単眼鏡で比較した場合)

  視野が狭いと、文字通り限られた狭い範囲しか見ることができません。
  また、離れた距離から鑑賞する場合は像が手ブレしやすくなるという欠点があります。

  中には8倍の単眼鏡だと手ブレしすぎて酔うという方もいるので要注意です。
 
 
・・・というわけで、倍率が高けりゃ良いというわけでもないのです。
好みにもよるので断言はできませんが、
個人的にはギャラリースコープは4~6倍程度が丁度良い倍率ではないかと思います。


【3】 アイレリーフ

これは眼鏡をかけている人は特に気にすべき数値です。
「接眼レンズからどれだけ目を離してよいか」を示します。
アイレリーフ距離以上にレンズから目を離すと、見える範囲が狭くなってしまうのです。
(これを視野がケラレると言います)

眼鏡をかけている方は、アイレリーフ15mm以上のものを選ぶべきです。
ちなみに15mm以上のものを、「ハイアイポイント」「ハイアイ」と呼びます。


【4】 ピント調整方式

ピントの調整はレンズ間の距離(=筒の長さ)を変えて行います。
これには「スライドレバー」「ピントリング」「手動」の3種類の方式があります。

「スライドレバー」「ピントリング」は、片手で操作しやすい方式です。
「手動」方式は両手を添えて筒を伸縮させる必要があり、手がふさがってしまうのが難点です。

-----------------------------

個人的に重要なポイントだと思ったところは以上です。

長くなったので、続きはその2