転 覧 記

ほぼ展覧会レポ。たまに読書記録。

平常展(2009年9月)@東京国立博物館 その9

2009年09月16日 23時16分24秒 | 展覧会



宜富当貴図 趙之謙(1829~84)筆

#きれいな絵なので、敢えて大きめの画像で掲載してみました
#画像クリックで拡大します


枝もたわわに咲き誇る牡丹の花・花・花。

描線の有無・濃淡・太さ細さによって、巧みに画面全体の印象を構築している一品。

葉の色合いを見ると左下から右上に向かうほど淡く明るくなり、葉脈の輪郭も細く薄く描かれています。
これにより、葉と花の群が岩場からふわりと上方に浮かびあがるような印象を与えています。

また輪郭を廃し、垂らし込みを用いて描かれた画面上部の3つの花は如何にもやわらかで、
画面に同様の効果を与えています。

一方で画面中央には、唯一輪郭を伴った白牡丹がどっしりと腰を据えています。
試しにこの白牡丹を手で隠してみると、何やら画面全体の締まりが無くなることに気づくでしょう。
先ほどの画面上部の葉と花のやわらかさが画面を支配しすぎてしまうのです。

つまりこの如何にも重く描かれた白牡丹は、絵が浮き上がりすぎないよう
画面全体にくさびを打つ役目を果たしているといえます。


この作者は溌墨やたらしこみ、没骨を駆使し独特の境地を拓いたことで有名なそうですが
逆説的にこの絵に見られるような描線の効果も知り尽くしていたんだろうなあ、と思いました。


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