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転 覧 記

ほぼ展覧会レポ。たまに読書記録。

「テオ・ヤンセン展」 @日本科学未来館

2011年02月07日 00時16分37秒 | 展覧会


 ビーチアニマル(Strand Beest)の作者
 テオヤンセンのトークライブ&デモンストレーションが
 開催される!ということで見て来ました。





ビーチアニマルって何?というかたはこちらの動画↓をご覧あれ。






講演の模様は別エントリでお伝えしたいと思います。
テオさんのStrand Beest に寄せる想いなどをお聴かせ戴きました

デモでは、先ほどの動画と同じ作品が動く様子を
見せていただきました。

12mもの幅をもつ構造体が
無数の足をざわざわと、しかし規則正しく繰り出しながら
ギシギシミシミシ音を立てて迫りくる様子は
いかんとも表現しがたいものがありました。





 正直、展示品の数はアレ?と思うほど少ないのですが
 ひとつひとつのアニマルの構造をじっくり眺めていると飽きません。






一見、こどものころの夏休みの工作を思わせるような
プリミティブな見かけでありながら
あれほど精巧に動くのは驚きです。






 実際に Beest に使われている部品を
 触ることもできます。
 もう少し、動作原理が詳しく解るような
 デモ展示もあるとメカ好きには嬉しかったかも。



エントランスには、手押しで動かせるビーチアニマルもあり
カップルや家族で来ても楽しい展覧会だと思います。


実は未来館にきたのは初めてだったのですが
常設も ASIMOのショーや、インターネット物理モデルなど先端技術を楽しく見せる工夫が満載で、
なかなか意欲的な施設だと思いました。

特に要素技術を組み合わせて新しい製品を考えよう!という掲示板コーナーが素晴らしいと思いました。

「諸国畸人伝」 @板橋区立美術館

2010年10月07日 23時17分49秒 | 展覧会
かなり初期に行ったのですが、気がつけばもう会期末・・・

小規模ですが面白い展覧会でした。
安村館長の個人的な趣味爆発って感じですけど

以下、感想です。


◆菅井梅関
二幅の「虎図」が良かったです。
自分は御物の応挙「群獣図屏風」や北斎の「月見る虎」「雪中虎」が好きなのですが
それらに勝るとも劣らないと思います。

解説にもありましたが、仙台市博物館所蔵の虎図の獰猛さは他では見られないし
瑞厳寺のそれは北斎の「月見る」よりもメランコリックかもしれません。

◆林十江



 この画像は十江の「鰻図」
 どこかで見たことあるなあと思ったのですが
 去年、東博の常設で展示されてた際に写真を撮ってました。
 ナイス俺。
 (画像クリックで拡大します)


画面上方のモヤは、安村さんの解釈だと鰻が巻きあげた泥だそうですけど
自分としては、水面の波紋か、水中に青々と繁茂する藻に見えるなあ。

指の腹で書いたという「龍図」は、
描線一本一本に眼を引っ掻かれているような気分にさせられます。

「白桃図」は桃の木の枝が画面いっぱいに伸びあがる構図が大胆。
床の間に掛けて、座りながら画面の上のほうに見切れている枝の先をずっと見上げていたい、
そんな絵です。

◆佐竹蓬平

何故だか飯田市美の蓬平展の図録だけ持ってますw

なのでちょっと期待していたのですが、見たい絵が来てなかったので少し残念。
「神農図」「黒菊図」「雪中山居図」あたりが見たかったなあ。


◆加藤信清

経文の字句で仏画を描いた人、だそうです。
単眼鏡で見ても読み取れないほど細かな字で書かれており
しかも輪郭だけでなく彩色された面もびっしりと字で埋め尽くされています。

凄いというより、その執念が正直怖い。


◆絵金

とにかくペンキ絵みたいにビビッドで、
今回の会場のなかでも絵金の絵が並ぶ一画だけ雰囲気が違ってました。

去年、画集が出たのですが、陰惨な雰囲気を演出するためか
全画像ともホワイトバランスいじりまくりなのが残念。

アレはアレでいいところもあると思いますが、
今回は実物の色を見れて良かったです。

祭りで灯篭に照らされているところの映像なんかもあると嬉しかった…というのは贅沢でしょうか。
でもやっぱり見たかった。

眼の表現がマンガ的で面白い。
ただ派手なだけでなく、配色もかなり理知的に計算されてると思いました。



眠いので続きは次回にします・・・

「大哺乳類展 海のなかまたち」 @国立科学博物館 その2

2010年07月18日 00時20分53秒 | 展覧会
その1のつづきです。

 こちらはヒゲクジラのヒゲ各種。

 ヒゲクジラは水をがぶ飲みし
 これでプランクトンやオキアミなどをこしとって
 食べます。



なおヒゲに触ることもできます。
割とゴワゴワしてました。

このヒゲはケラチンで出来てるそうです。
(ケラチンは爪やエビ・カニの殻の成分)



 
 今回は体感型の展示が豊富。
 ヒゲだけでなく、シロナガスクジラの骨にも
 触ることができました。




触覚だけでなく、嗅覚で楽しめる展示も。

マッコウクジラの腸内でごくまれに出来る香油、
「龍涎香(りゅうぜんこう)」。

ペルシャ帝国の皇帝にも献じられた
その香りをお楽しみいただけます。




 スナメリの「バブリング」を再現した装置

 スイッチを押すと模型のスナメリの口から
 リング状の輪が出る様子を観察できます。

 こちらのムービーからご覧いただけます。




これはクジラジラミ。
クジラの表皮に「無数に」寄生してるそうです。

…キモい




 クジラのつぎはアシカやアザラシのなかま、
 「脚類」の展示です。

 ところでアシカとアザラシの見わけかたってご存知ですか?

 アシカには耳があり、アザラシには耳がありません。
 アシカは4本足で歩けますが、アザラシは這って進みます。

 で、これはアシカ科のトド。




これはミナミゾウアザラシのメス。
血液中に大量の酸素を蓄えることで
長時間の潜水が可能。

アザラシ科の中では最大、だそうですが
このはく製はそれほどデカくありません。 




 しかし!

 合わせて展示されてるオスの骨格標本は
 ご覧の通り、見上げるようなデカさ。

 




セイウチはアザラシとアシカの特徴を併せ持ちます。
アザラシのように耳がなく、
アシカのように4本脚で歩きます。

牙が怖いですがつぶらな瞳がかわいいです。

首周りの皮膚のたるみはオス同士の闘いや
天敵に襲われた時に体の内部を守るそうです。

その天敵とは・・・




 こいつ!

 「陸のなかまたち」にひき続いての登場、
 ホッキョクグマです。

 あいかわらずのデカさ。

 しかしセイウチもホッキョクグマも、
 凍った北極の海を生活の場にしているので
 ともに最大の天敵は「温暖化」です。





ラッコはヒレがないのに海で生活している
変わり者。

ラッコのお腹の毛は保温のため、
哺乳類のなかでもっとも密度が高いそうです。



 最後は、絶滅が危惧される種の展示。
 画像はガンジスカワイルカ。
 
 視界の悪い環境で生活しているため
 目は退化し明るさを感じる程度。

 同じく淡水に住むイルカだった
 ヨウスコウカワイルカは既に絶滅してしまったそうです・・・



さて、ここまでが展覧会のご紹介ですが、常設展にも「海のなかまたち」はいます。


そのなかで、今回は1階の展示をご紹介。

哺乳類以外のなかまたちとのかかわり、
・・・つまり食ったり食われたりのシビアな世界を
ご覧ください。

ちなみに上方に見えてるのはレストランの窓。
食事しながら展示室の様子を見られます。




 これはダイオウイカのホルマリン漬け。 
 なかなかグロいです。





おもしろいのはこちらの展示。
ヒゲクジラのアゴの骨の動きをシミュレートしたもの。

冒頭でクジラは大口開けて水をガブ飲みして
海水中のプランクトンを食べる、ということを書きましたが
どのように口を開けるのかよく解ります。

作動している様子を撮影してきましたので
よろしければこちらの動画をご覧ください。




このほかにも、地下2階に古代の水棲動物の骨格標本が多数展示されています。
常設も見どころ多数ですので是非時間がありましたらあちこち回ってみてはいかがでしょうか。

最期までお読み頂きましてありがとうございました。

「大哺乳類展 海のなかまたち」 @国立科学博物館 その1

2010年07月16日 00時34分45秒 | 展覧会
先日、大哺乳類展で撮ってきた写真をご紹介します。
目につくものだけ撮ってきたので、あまり体系的な紹介にはなってません。
ごめんなさい。

# 写真はすべてクリックで拡大します。


 会場で最初にお出迎えしてくれるのが
 この「バシロサウルス」
 クジラの祖先だそうです。

 当初、爬虫類と間違われたおかげで「サウルス」という名前なんだとか




これはスジイルカ。

クジラ類は歯のあるなしで
「ハクジラ」と「ヒゲクジラ」に別れ、
イルカはハクジラのなかまです。



そして、イルカとクジラの違いは・・・会場でご確認ください。
きっと「えーマジで!」と思いますよw

さてこのイルカの骨格を見て、意外と頭がとんがってるな、と思われたのではないでしょうか。
イルカってもっとおでこが丸みを帯びてるイメージだと思います。


 これはバンドウイルカの頭部の断面。

 実はあのおでこの丸み、脂肪の塊なのです。
 おでこの透けてるところがそれ。

 この器官は頭頂の噴気孔で発した超音波を集音して
 前方に発する役割があり、「メロン」とよばれてます。





こちらは歯の数が少ないので
たぶんシャチの骨だと思うのですが・・・

なんだったかちゃんと覚えてません
ごめんなさい





 そのシャチのお腹の中からでてきたもの。
 なんと、丸々一頭ぶんのアザラシの骨!

 こんなもん消化できんのかよ・・・



ハクジラにはこんな変わり種も。

ハクジラなのに歯はなくて、
出っ張ってるのは、実は歯じゃなくて軟骨。

しかも軟骨なのに骨化して堅くなるらしく・・・
訳わかんない進化っぷりです。



 訳のわからなさではこちらも負けず劣らず

 有名なイッカクですが、これもハクジラのなかま。
 角のように見えるのは、実は前歯が伸びたもの。
 すげー出っ歯w


なお、このイッカクの角は「ウニコール」と呼ばれており、江戸時代には根付の素材として珍重されていました。
「根付 素材 ウニコール」で画像検索すると、見事な龍の根付が見れますよ。



さて次はヒゲクジラですが、その代表格といえばやはりこいつ!
地球最大の生物、シロナガスクジラです。




 ヒレもでかい!




さて「陸のなかまたち」の復習ですが・・・

キリンも、ブタも、ゾウも、ヒトも、
哺乳類は例外なく首の骨の数が7つ、
という特徴がありました。


はたしてクジラも同じなのか、ぜひ上を見上げて数えてみて下さい



  → その2に続きます

「伊藤若冲アナザーワールド」@静岡県美&千葉市美

2010年06月29日 21時37分04秒 | 展覧会

 もう終わってしまいましたが、
 静岡と千葉の若冲展に行ってきました。

 どちらも見れたのは後期だけだったのですが、
 図録に掲載の170点中、9割がたの作品を見れたので大満足です。





いずれの会場も思ったより空いていて意外でした。

「日曜美術館」や「美の巨人たち」で紹介された展覧会が
異常に混雑するのは周知の事実ですが、
逆に紹介されないとこの規模の展覧会でも人が来ないというのは
ちょっと寂しい気もします。



以下、作品の感想です。


◆烏賊図
水の中でふよふよと漂う足の描写がすごい。
実際に泳いでいる様子を見たんだろうか。

◆花鳥蔬菜図押絵貼図屏風
背中を見せつつ、うつむき加減でこちらをちらりと盗み見るオシドリのしぐさがかわいい。

今回、若冲の押絵貼図屏風って、左よりと右よりの構図の絵が交互に貼られているものが多いのにきがついた。
立てると折り目が「山」の部分に重心が寄り、「谷」の部分が余白となるようになっている。

若冲がどういう意図でそんな風にに描いたかは判らないけれど、
ぼんやり眺めていたら、まるで絵と絵の間から生命があふれ出てくるような錯覚に陥りました。面白い。

◆寒山拾得図
ニッコリと満面の笑みの寒山も可愛いけど、愛想悪そうに背を向けている拾得もかわいい。
寒山が「ごめんね、彼、人見知りなんだ」とフォローしているようにも見える。

◆百合図
背の高い百合の花が、寄り添うように咲く背の低い百合の上にしなだれかかっている。
まるで、上手の花が「どうだ、お前はここまで伸びてこられるか」と挑発し
下手の花が「何をこしゃくな」と睨み返しているかのよう。
そばで見ている小鳥は「しょうもない張り合いしとんな」と呆れ顔。

◆菜蟲譜
去年、佐野市立吉沢記念美術館まで見に行ったけど、そのときは後半しか見れず。
今回は前半が見れるといいなと思っていたのですが、残念ながらやはり後半でした・・・

まあでも、佐野市美の学芸員さんが「いじけ虫」と呼んでいたアブに再開できたのは良かった。
若冲は虫を描くとき、同じ粉本のデザインを何度も流用しているそうで、
この「いじけ虫」も会場のあちこちで見かけた。ほかの虫たちも。なんとなく嬉しくなった。

ただやっぱり、蟲達の表情が一番いいのはこの菜蟲譜だと思う。
足元の小さなジャングルの中を旅するようなこの作品は本当に楽しい。

◆象と鯨図屏風
写真では何度も観ていたのですが、やはり実物を見ると印象が違います。
「屏風」はやはり折り立てられた状態で観ないと駄目だと改めて思いました。

まず右隻の象ですが、ちょうど2扇から3扇にかけて「山」になる位置に身体が描かれてます。
これによって象の身体のボリュームが強調されて見えます。
また鼻は第4扇に描かれ、扇面の「谷」から「山」へ向けて
手前へぐうんと伸びてくるような印象を与えています。

また左隻の鯨の身体は、第4扇から第6扇にかけて描かれているのですが
斜め右前方から観ると、まるで長い胴体をくねらせながら岸へ迫りくるように感じられます。

これは実物見ないとわかりません。すごい。

また、この絵、個人的には何となく不安な感じを覚えるところがあります。
よく見ると背景の山と海とは曖昧につながっており、境界がよくわかりません。
正体不明の「うねり」が空間を埋めるように果てしなく続いています。
その茫漠と広がる世界に対して、あてどない不安感を覚えるのかもしれません。

しかしそれゆえに、その世界の中にそびえる
陸の王者と海の王者の姿をより頼もしく感じることができます。
この辺の表現もすごい。見に行ってよかった。


ショップで「玄圃瑤華」のポストカードをたくさん買って帰りました。
見覚えある絵がいくつかありデジャブ?とか思ったのですが、
家に帰って調べてみたら、酒井抱一がそっくりの図案の絵を描いていてビックリしました。

同じ粉本を写したのか、はたまた若冲の絵を真似たのか。

「国宝燕子花図屏風」展 @根津美術館

2010年05月19日 00時50分19秒 | 展覧会
先週末の日曜に行って来ました。




今回の展覧会は大混雑と言うウワサを聞いており
スルーしようと思っていたのですが・・・

こちらのブログを拝見して庭園のカキツバタをどーしても見たくなり
行ってしまいました。

結果としては、行ってよかったのですが、ウワサどおりの大盛況。
なんと入場制限で10分待ち!
根津でこんなこと初めてです。

以下作品の感想。

◆四季草花図 喜多川相説

今回、一番いいなと思った作品。
紙本着色の屏風なんですが、よく見ると墨が多用されていて面白い。

特に左隻の右側。
遠目に見ると葉むらが斑描のように描かれているのですが
墨の葉と緑の葉を交ぜて描くことで、「色つぶれ」することなく
葉の一枚一枚が見て取れるように工夫されているところが凄い。

また全体的にトーンが抑えられることにより、花や雪の色彩を引き立たせる効果も。

ひと続きの垣根が、霞で上下に分断されている構図もチャレンジングです。
垣根(=境界)が延々と続く様子を見せることで、空間がぐんと広く感じられます。


◆七夕図 酒井抱一

角だらいの上方に、五色の糸を掛けたシンプルな絵
前者が牽牛で、後者が織姫を表すのでしょうか。

七夕というテーマは口実で、たぶん抱一が描きたかったのは、
糸が織り成す、波打ち絡み合う色の流れだったんじゃないかなあと思います。


◆夏秋山水図 鈴木其一

何度か見ているのですが、何度見ても奥から手前へと迫りくるように流れる早瀬に圧倒されます
なんといっても鮮烈なブルーが印象的

先日見たばかりということもあり、等伯の「花鳥図屏風」を思い出しました。
あれも図録や画集でみるより、ずっと青が鮮やかでびっくりでした。

ところで右隻の紅葉した葉ですが、枝に付いた状態で描かれているのですが
引いてみると風に吹かれてひらひらと舞い落ちているようにも見えるのです。

気のせいと言われればそれまでなんですけど、
もし見る場所によって違う印象を与えるように描いていたのだとしたら、凄い!と思います。




ところで今回、庭を散策していてふと思ったのですが。




 「たらしこみ」が葉に使われてる場合、
 こんな感じに葉が陽に透けている様子を表現してるのかも、
 と思いました。


 でもよく考えたら、蓮の葉とかにも使われるから違うか。




ミュージアムマップ作成中

2010年04月24日 11時41分18秒 | 展覧会
Google map で博物館・美術館マップを作成中。
http://maps.google.co.jp/maps/user?uid=116316422432066147919&hl=ja&gl=jp

展覧会のはしごをするのに、近隣の美術館・博物館を探しやすくするため
個人用に作ったのですが、折角なので公開しました。

いまは都区内・美術系の施設を中心に登録していますが、すこしずつ拡充していく予定です。

「エミール・ガレの生きた時代」展 @目黒区美術館

2010年04月18日 00時05分32秒 | 展覧会


ガレ展内覧会へのブロガー招待イベントに参加してきました。
目黒区美術館では初の試みだそうです。
今後も継続して行われるかは我々の記事の反響次第ということで責任重大w

というわけで、いつもより気合を入れてお届けします。

 # 画像は全てクリックで拡大します


◆イントロ

これまでもガレの展覧会はあちこちで頻繁に行われてきましたが、今回の展覧会の特徴は、
ガレの「アール・ヌーボー以前」にも焦点を当ているところ、だそうです。

ガレが何から影響を受け、どのようにそのスタイルを成長させてきたか、それを辿ることが出来るよう
彼の若いころの作品とともに、同時代のガラス作品、家具などの調度品、彫像、タペストリーなどを
あわせて展示しています。


このため、ただ作品を横並びに並べるだけでなく
こちらの写真のように、家具・調度品を組み合わせて
当時の部屋の様子を再現して見せるようなコーナーも
ありました。



会場では是非、作品を通じて「ガレの生きた時代」を感じてみてください。


◆ロココとガレ

ガレの作風を語る上で、外せないものが2つあります。
ひとつは西洋の伝統、もうひとつはジャポニスム。

まずは「西洋の伝統」から。


 会場でまず目に飛び込んでくるのが
 ロココ調の陶器・ガラス器の数々。
 これは置時計の部分ですが、
 まるでフラゴナールの絵から飛び出してきたようなデザイン。




こちらは19世紀の食器棚の部分です。
ザ・ロココ!な装飾画ですが、枠のデザインにも注目。

このような有機的な曲線美の感覚が、
アール・ヌーボーにも受け継がれていったのです。




 そうそう、家具といえば、足元も見てみましょう。
 ケモノやネコみたいな足を持つ家具が幾つかあるはずです。

 これはガレが若いころに流行った、ロココ調の家具の特徴で
 「カブリオール・レッグ」というそうです。
 カブリオールとはダンスなどで
 ジャンプのとき足を開く様子を表す言葉です。

 ・・・学芸員のかたは「ガニマタ」と表現されてましたがw




目を転じて、ガレのデザインした家具も見てみましょう。
足回りに装飾はなくシンプルになっているものの、
ガニマタで踏ん張ってるようなカタチは同じです。

これもロココからの影響のひとつだそうです。
調べてみたら、18世紀にチッペンデールという人が
始めた様式なのだとか。




◆ジャポニスムとガレ


 続いて、ジャポニスムの影響について。
 ガレの家具にあしらわれたデザインを見てみましょう。
 これなど、まるで日本の花鳥画のようです。




ジャポニスム(日本趣味)ブームが吹き荒れた
19世紀末のヨーロッパ。
でも当初は表面的にそのデザインを真似るだけでした。

ガレもそれは同じで、たとえばこのカエルは
北斎漫画の絵柄を書き写したものです。

(「北斎漫画」は葛飾北斎による絵のお手本帖です)




 しかし彼は後に、
 足元の草むらにつつましくも強く生きる小さな生き物を敬い慈しむ、
 そんな日本の自然観そのものを理解し
 独自の世界を作り上げていくことになるのです。

 たとえばこの作品。

 巣を張り息を潜めて獲物を待ち構えるクモ。
 そうとは知らず巣の上で葉を食む虫たち。
 しかしその両者の命に区別は無く、
 葉むらの薄闇のなか、平等に色とりどりの光を放っています。



ちなみにこの作品、正面から見るだけだと気づかないのですが
そこかしこに虫がいるので、左から右から眺めて探してみてください。
個人的には、今回、一番楽しい作品でした。


◆家具x陶器xガラス


ガラスで有名なガレですが、
彼の工房ではガラス器以外の調度品も製作していたそうです。
先ほどは家具をご紹介しましたが、このような陶器も作っていました。



このため、彼は家具や陶器の技法をガラスに転用することにより、独自の表現を切り開くことに成功しました。
今も昔も、ブレイクスルーは既存技術にあり、です。

たとえば、「ジャポニスムとガレ」のところでご覧いただいた花鳥画風の装飾。
アレは、いろいろな木肌の木材のカケラを地の板にはめ込んで作られています。
この技法を「象眼(ぞうがん)」と呼ぶのですが・・・



 その「象眼」をガラスに転用したのがこちら。
 板状のガラスのカケラを、まだ軟らかいうちに
 地のガラスに貼り付けて模様をつくってます。

 「マルケトリー」と呼ばれる技法で、
 ガレはこれで特許をとりました。





一方こちらは、従来は陶器に用いられていた
「エナメル装飾」をガラスに施したものです。




 そして、そんなガレの技術の粋を極めた一品がこれ!

 チラシにも載っている、今回の展覧会の目玉作品です。
 会場では鏡で裏側も鑑賞できるようになってますので
 彫りの多彩さなどもじっくりご覧ください。




◆ガレのライバル

ドーム兄弟、ティファニー、レッツ・ヴィトヴェ工房・・・
ガレと同時代を生きたライバルたちの作品も多数展示されています。


こちらはレッツ・ヴィトヴェ工房のテーブルランプ。
マーブル模様を切り裂く亀裂が
日本の茶器の金継ぎを連想させて面白いです。





 ドーム兄弟は森や木立をデザインした作品が多いのですが
 少ししゃがんで下から見上げて鑑賞するのがお勧めです。
 こちらは上から見たところ。




で、こちらが下から見上げたところ。

なんていうか、上から見るよりも
より「大地と空の広がり」を感じられませんか?

しゃがんで見るのは、ちょっと恥ずかしいですが
よろしければ、ほかの作品でもお試しください。




◆おまけ: 黒壁美術館 & 黒壁スクエア

今回は、滋賀県・長浜の黒壁美術館から作品を多数お借りしたそうです。
同館では普段倉庫に眠っているものも、多く出展されているそうです(特に家具類)。

黒壁美の館長さんがオープニングで「黒壁スクエア」の宣伝を熱心にされてましたが
東京ではあまり知られていないんでしょうか。
中部・東海・近畿あたりだと認知度高いと思うのですが・・・

「黒壁スクエア」は、古い土蔵の町並みが売りの観光地で、
倉敷・函館・尾道なんかが好きな人はハマると思います。
まあ基本、買い物や食べ歩きが楽しいところなので、女性向けの観光地かも知れません。

黒壁スクエアの近くには「成田美術館」というラリック専門の美術館もあります。
昨年、新美でやってたラリック展にも沢山出展していました。
入館者が少ないときは、学芸員のかたが熱心に説明してくださいます。

というわけで、黒壁はガラス好きなら一度は訪れるべき「聖地」のひとつですw
会場に観光案内コーナーもありましたので、気になる方はぜひご覧ください。





以上、学芸員さんによるツアー・ガイドの内容をベースにお届けしました。

より詳しくお知りになりたい方は、黒壁美の鈴木潔館長による講演が4月24日(土)に開催されるそうですので
そちらにご参加されてはいかがでしょうか(予約制です)。

最後になりましたが、目黒美術館の関係者のみなさま、
この度はこのような楽しいイベントにお誘い頂きまして、ありがとうございました!

アートフェア東京2010 @東京国際フォーラム

2010年04月04日 00時58分30秒 | 展覧会
国芳のつづき・・・の前にこちら。




行ってきました、東京でも最大規模のアートフェア!

実は自分は現代アートはあまり好きじゃないので
アートフェアはいったことがなかったのですが・・・

こちらは古美術のギャラリーも沢山出展するそうなので、今回はじめて行って見ました。
ところが現代アートも思いのほか面白、午後6時~閉場8時ごろまでフルに楽しめました。
もすこし早めに行けばよかった・・・

以下、印象的だった作品の感想です。

#()はタイトルをメモし忘れた作品、リンクは関連サイトです。


◆「龍虎図」 長沢芦雪 @加藤美術ブース

今回一番おどろいたのがこのブース。
芦雪の掛幅1対が露出展示されてるんですよ。信じられん。
動揺してじっくり見られなかったのを激しく後悔・・・

ただ龍の周囲にただよう空気のモイスチャー感がはんぱないのだけは、印象に残りました。


◆(竜と鯉の絵) 柳田征一郎 @一番星画廊ブース
http://www.1banboshi.co.jp/exhibition/Exhibition.html

今回、一番好きだ!と思った作品。これが載ってたらカタログ買ってたのに・・・

狭い画面いっぱいに、ちょっと窮屈そうにうずくまる龍。
墨絵調の絵ですが、龍の視線の先に一点だけ色がぽつんと燈ってます。
よく見ると、ひらひらと気ままに泳ぐ小さな鯉。
龍はそれを、うらやましそうに見ています。

鯉を見つけた瞬間、ああこれは水中なんだ、と気づき
たちまち画面に満ちる水を想像させられてしまう面白い絵です。


◆「二律背反都市」など 天野裕天 @椿近代画廊ブース
http://www.tsubaki-kindaig.co.jp/exhibit.html

今回、一番ほしい!と思った作品目白押しのブース

廃墟と化した街を背負う、青銅器のような面持ちの動物たち。
どっかの遺跡で発掘されたオーパーツです、と言われたら納得してしまいそう。

たとえ人が滅び去っても、人の作ったモノは残る。そして再び人に出会うのを待ち続けている。
古代に永遠を夢見た(元)男の子であれば、誰でもワクワクする作品ばかりです。


◆「海岸の水たまり」 神戸智行 @広田美術ブース
http://tomoyukikambe.web.fc2.com/
http://kgs-tokyo.jp/interview/2010/0402/index.htm

神戸さんはパステル調の花鳥画を描かれる方みたいですが、
今回はその世界観をブース内に再現する?展示。
ブースの壁際をエメラルドグリーンの磯に見立て、州浜が作られてました。

そして壁にはキャンバスに描かれたしだれ柳やトンボ。
切り取られた風景から、却ってその背後に空間のひろがりを感じられます。

謎なのは、州浜の石の上に立ち、漫画でいうところの「滝涙 T_T」を流すハニワみたいな像。
おかげで溜まってる水が、すべてこいつの涙に見えてくるw


◆(松の掛幅) 与謝蕪村@思文閣ブース
http://shibunkaku.blog15.fc2.com/blog-entry-28.html

こちらもビッグネーム目白押しで、ビビッてろくに見られませんでした (←チキン
この蕪村の掛幅は松の絵・・・だったと思います。(うろ覚え)
どんな太い筆使っとんねん、ぐらい豪快に描かれた幹が印象的でした。


◆(黒人の女の子の写真) ルード・ヴァン・ピエール @GALLERY TERRA TOKYO ブース
http://pictureyear.blogspot.com/2009/02/ruud-van-empel.html
http://www.galleryterratokyo.jp/
google 画像検索

折り重なるように繁茂した、色とりどりの蓮の葉。
そこに埋もれるように寝転んだ、黒人の女の子の写真。
(上記の一番上のリンクから実物が見れます。ページの中の一番下の写真)

最初はその原色のコントラストに目を奪われたのですが、じーっと見てると何か違和感が。
構図、特に蓮の葉のレイアウトにどこか人為的なデザインを感じるのです。
琳派の絵みたいと言えば良いでしょうか。

と思ったら、なんとこれ、コラージュ写真なんだとか。

後でgoogleで画像検索したら、更にデザイン的な作品も。琳派というより、ルソーに似てるかも。
緑をデザイン的に配置する発想は、西洋のガーデニングを連想させるところもあります。


◆「最初の気持ち」ほか 池永康晟 @秋華堂ブース
>http://www.syukado.jp/jp/gallery/2010artfairtokyo.html

美人画。涙袋フェチ必見!

どっかで見たことある絵だなと思ったら、
今店頭に並んでる「アートコレクター」4月号の表紙のかたでした。
浮世絵や新版画も、比較的お安く売ってます。


◆「生命のかたち」ほか 松尾太一@画廊くにまつブース
http://www16.plala.or.jp/kunimatu/

ドライフラワー?を透明な樹脂のなかに封入した作品がいくつか。
ヴァニタスの新しい形。

黒い円盤状の気持ち悪いものが入っていて、何だコレ?とよくよく見たら
ひまわりのドライフラワー?でした。

こどものころ、夏休みの終わりの夕暮れ、
太陽を思わせるはなびらが散り、うなだれたヒマワリのみすぼらしさを寂しく思う一方
満々に種をたたえたその「顔」が力強くも不気味だと感じたのを思い出しました。


◆(月夜の桜の絵) 吉田博 @三田アート画廊ブース

こちらは浮世絵&版画専門の画廊のようで、
先日、府中市美で見たばかりの国芳の「相馬の古内裏」や巴水のレア版画が多数。
欲しいなー、でも摺りも良いから高いなー、などと思いながらブースの外に出ると、
吉田博の大型の版画が飾られてました。

いやあ兎に角デカい! 一体どうやって摺ったんだコレ?と思いつつも
絵自体はあまり面白みが無かったので、特に気にせず通り過ぎました。

しかし!家に帰って「吉田博全版木画集」を見てみると、なんとこの作品が載ってない!!
他のブログでも見たという人がいるから、見間違いでもなさそう。

一体あの作品、どういうものなんだろう・・・

「大観と栖鳳」展 @山種美術館

2010年03月22日 20時02分20秒 | 展覧会
メインタイトル「大観と栖鳳」ですが、サブタイは「東西の日本画」。

ですので大観・栖鳳以外にも、当時の東京・京都の画壇で活躍した日本画家の作品が多数展示されてます。
近代日本画は一部を除いてあまりしっかり見たことが無いため、この展覧会は良い機会でした。

特に栖鳳が良かった。
「斑猫」しか知らなかったので、西洋画的な描写を日本画に取り入れた人、
・・・くらいの認識しかなかったのですが、どれもこれも激ウマい。
山水南画も、琳派風の花鳥画も。

今回の展覧会は図録がなくて、大観と栖鳳の館蔵品を掲載した小さな小冊子しかなかったのがとても残念。


◆月四題 より 春  菱田春草

月光の下、ふっくらと咲き誇る、桜の花・花・花
それをかろうじて支えているのは、震える筆線で描かれたか細い枝。
桜なのに、今にも首ごと落ちてしまいそうな危うさがあります。


◆緑池 竹内栖鳳

ひょこひょこと足を曲げ伸ばしして、一心不乱に泳いでいるカエルを描いた絵。

水面の上に出ている顔の部分は細密に描写されているのに対し
水面下に霞む体や四肢はさらさらっと淡彩の略筆で描かれています。

太ももやふくらはぎを、それぞれ一筆で描いてしまう省略っぷり。
でもそれが全く違和感ないのがすごい。


◆蛙と蜻蛉 竹内栖鳳

カエル描きたいから描きました、どうです? 的な絵。
あのカエルのプリプリ感を、あんな略筆で描き切ってしまうつーのがなんともはや。

当時71歳だった栖鳳は、蛙を庭に飼い込んで、
10日ばかりずーっと地面にしゃがんで蛙の営みを観察してたそうで、
おかげで腰を痛めたんだとか。なにやっとんじゃ。

「蛙の雌雄がよくわかった」とは本人の言ですが、
腰をさすりさすり、得意満面な姿が目に浮かぶよう。



◆斑猫 竹内栖鳳

みんな口々に可愛いと言ってたけれど、これよく見ると怖い。
値踏みされているような、見透かされているようなエメラルドグリーンの眼。



◆生 山口華楊

ぼんやり眺めていたら、そばに親子連れがやってきました。

母 「かわいいねえ」
息子「かわいーね」
母 「生まれたばかりだから立てないのかな?」
息子「早く立てるといいね」
母 「もう名前付けてもらったかな?」

・・・不覚にも、ちょっとウルっときた。



おまけ

美術館前に咲いていた梅




「浮世絵の死角」展 @板橋区立美術館

2010年03月14日 23時20分47秒 | 展覧会
この土曜日に行ってきました。
美術館前の公園では、梅が満開でした。



画像クリックで拡大します。

展示作品201点のうち、国芳25点、国貞(三代目豊国)36点。
幕末の作品に偏ってはいますが、奥村政信、鈴木春信から月岡芳年、小林清親、川瀬巴水まで
浮世絵史&近代版画史を俯瞰できる展覧会です。

◆「牧童図」 喜多川歌麿
猛々しい牛に対して、それを引く子どもの飄々とした感じが対照的。
半笑いの表情とか、スキップしてるようなポーズとか、悪ふざけしてるようにしか見えない。
「牧童寒笛倚牛吹」という漢詩がモチーフらしいのですが、どんな話なんだろう・・・

◆「紫陽花にひわ」歌川広重
右上と左下にふわりと咲く、二朶の紫陽花。
その間を、真っ逆さまに落下するかの如く疾駆する2羽のマヒワ。
そして、その飛跡に沿うようにすらりと伸びる紫陽花の茎。

画面の上から下へ、2羽が駆け抜ける一瞬を捉えた一枚なわけですが
彼らが何処から飛来して何処へ行こうとしているのか、
絵の外側に広がる空間を想像せずにはいられません。


◆「百物語 さらやしき」
有名な怪談「皿屋敷」のお菊を描いた一枚ですが、その姿が異様極まりない。

無表情で上目遣いにこちらを見つめる真っ白い横顔。
その下に蛇のように連なるのは、青い染付けの皿、皿、皿。
長い髪は皿の連なりをつなぎとめるように、ねっとり纏わりついている。
口からは、なにやら得体の知れない桃色のか細い気を吐く。

写真では見たことがあったのですが、実物を見るとまた迫力があります。
何よりこちらをねめつける目が怖い。


◆「二代目中村富十郎の長吉姉お関」 ほか2点 3枚一組 三代目歌川豊国
背景の右上から左下へ走る青と白のストライプがサイケデリック。
役者もストライプの流れに沿うようにポージングした格好で描かれており
非常に躍動感のある構図です。


◆「柘榴に鸚鵡」 小林祥邨
真っ黒な背景に、真っ白なオウムが映える一枚。
平木浮世絵美術館にある、若冲の花鳥版画みたい。

違うのは、オウムが止まる柘榴の実や花の艶かしさ。
手を伸ばして撫でてみたくなるような赤。

◆「霞む夕べ-不忍池畔」 笠松紫浪
どっかでみたなー、と思ったら、現版木がまだ残ってるようで
渡辺木版美術画廊が後刷り版を売ってました

・・・欲しい。

前景の柳の茶以外は、ほぼ全面薄い青紫一色。
立ち込める霞の水の匂いが漂ってきそう。


ほかに、おもちゃ絵を集めて展示している一角があり面白かったです。
トレーディングカード?あり、着せ替え人形あり、鳥類・魚類図鑑あり。

特に着せ替え人形は、反物のような縦長の柄付の紙を折り
人形に「着付け」するらしく、いまとは全く違う発想で面白い。
でも、実際どうやって着付けるのか判らなかったので、解説が欲しかったです。


実は、個人的には新版画を見るのが目的だったのですが
ほかにも色々と楽しめた展覧会でした。

「洛中洛外図屏風(舟木本)」 徹底ガイド

2010年01月09日 19時54分39秒 | 展覧会
1月13日(水)から東京国立博物館で「洛中洛外図屏風(舟木本)」の公開が始まります。
保存の都合上、1年に1回、2週間限定の展示。

それに伴い関連イベントや新グッズの販売が行われています。
あわせてお楽しみいただければ、てことでご紹介します。


◆ミュージアムシアターで予習しよう!


 まずはシアターの高精細・大画面の映像で予習するのがお勧め!
 くわしくはこちらの公式ページをどうぞ。

 なお、土偶展を開催している関係で、受付場所がいつもと違います。
 本件エントランス左手の部屋入ってすぐのところにあります。
 



なお今回のシアター上映は新たな試みとして
シナリオリクエストを取り入れています。
6つのシナリオの中から、
来場者リクエストの多かったもの2つを上映するしくみ。

受付時に右のようなラインナップリストをもらえますので
見たいものを来場までに選んでおいてください。



◆タッチパネルで見所をおさえよう!

 残念ながらシアターで見たいシナリオが見れなかった!
 という場合はこちらをどうぞ。
 本館2階、エントランスの階段を上ってすぐのところに
 このようなタッチパネルディスプレイが設置されてます。
 洛外洛中図屏風の「見所」を解説するとともに、
 自由に拡大・スクロールして鑑賞できるシステムです。




◆本物を見に行こう!

予習をしたら、いよいよ本物を見に行きましょう!
場所は本館2階7室です

まだ公開前なので写真はありません。ごめんなさい。
代わりに公式ページの画像をどうぞ。


◆ギャラリートークで知識を深めよう!

次の日程で、東京芸大の学生ボランティアによるギャラリートークが開催されます。
 2010年2月7日(日)
 2010年2月13日(土)
 2010年2月14日(日)
 2010年2月20日(土)
 2010年2月21日(日)

各回とも15:30~15:50。詳しくはこちら

このギャラリートークは年に2クール開催される、東博と芸大のコラボイベント。
芸術学や工芸史専攻の院生のかたがたの詳い解説を聴くことが出来ます。

普段は平日開催が多く、週末にこれだけの回数開催されるのは異例で、またとない機会。
舟木本について少し深く知りたいというかたには是非お勧めのイベントです。


◆洛中洛外図屏風を持ち帰ろう!

 本館地下のショップには
 1/4サイズの洛中洛外図屏風リーフレットが登場!

 これはマジ凄い。
 ミュージアムグッズマニアな自分としては
 これを紹介したくて今回の記事を書いたと言っても
 過言ではありませんw



ペットボトルと比べてみました。デカイです。
しかもこれは右隻だけで、同じ大きさの左隻も付いてます。
裏面には詳しい解説も。

一般家庭で飾って見るのはなかなか難しい思いますが、
畳の上に広げて町の人々の様子を眺めるのはほんと楽しい。



 細部の拡大映像。
 人物の表情がギリギリわかる大きさということで
 1/4サイズにしたのではないかと思います。



 驚くことに、これでお値段たったの840円!

 シアターの方のお話では、このリーフレットを製作された凸版印刷の方に
 「これ安すぎないですか?」と訊ねてみたところ
 「皆さんに見ていただきたいんです!」と答えられたそうです。
 凸版印刷、太っ腹! そして男前!

 ショップで併売してる小学館の解説本と合わせて買えば
 あなたも舟木本マスター!



◆おまけ:もうひとつの洛中洛外図屏風を見よう!

1月11日(月・祝)までですが、本館2階第10室
別の洛中洛外図屏風(作者不詳・17世紀)が展示されています。
時間に余裕があるかたは事前に見ておいて、
舟木本との違いを見くらべるのも楽しいと思います。





「柴田是真の漆x絵」展 @三井記念美術館

2010年01月07日 00時12分22秒 | 展覧会
江戸~明治の時代を生きた、漆工職人・柴田是真の展覧会。

漆でいろんなイミテーション・フェイクを作るのに情熱を注いだ人。
紫檀という高級木材や、鉄・青銅・砂張などの金属、古墨、陶器などなんでもござれ。

また当時の漆工は分業制で、職人が自分で下絵を描くことはなかったのだけど
是真は自分で絵も描きたい!と思って、四条派の絵師・岡本豊彦に弟子入りしたんだとか。
最終的には、絵の分野で帝室技芸員(今の人間国宝)になっちゃっというんだから凄い。

展覧会では照明が暗いこともあり、残念ながら漆器はあまりよく見えず・・・残念。
モノによっては図録のほうが肌の様子がよくわかる、というものも(逆に言えば、図録の写真が良い)。
絵のほうは問題なく楽しめました。

なお、入り口に漆工用語の解説のリーフレットが置かれてます。
キャプションとあわせて読めば、かなり勉強になりますので是非もらって下さい。


以下、作品の感想です。

◆ 面相描図漆絵

画面右側、洋梨形の「白いもの」が幾つもごろごろと転がっている。
何コレ?・・・あれ、目鼻がついてる! 人の首?!
・・・いや、横に硯と筆がある。なるほど、これは作りかけの人形の首か。

初めて目にしたとき、誰もが一瞬ギョッとする作品。

でも落ち着いてよく見ると描かれた顔は優しそうに微笑んでる。
この首ひとつひとつが丹精こめて作られているんだろうなあ、
完成したらどんな人形になるんだろう?作っている職人さんはどんな人なんだろう?
いろいろと想像が膨らむ作品です。

◆漆絵画帖 のなかの猫の絵

後ろ足で耳元を掻くミケ猫。
なかなか痒いところに手が届かないのか、口をへの字に曲げてなんだかもどかしそうな表情。
手を伸ばして掻いてあげたくなるような一枚。

◆松に藤小禽図
松の枝から川面に向かって藤が垂れ下がっている。
延びた蔓の先は一度水をくぐって、くるりとまいた先っぽがまた水面から顔を出している。
川面には、蔦にかき乱されたあとがうねっている。

画面には動きがまったく感じられないのに、
蔓に咲いた藤の花房が、川の流れでゆらゆらと揺れている様子が想像される面白い一枚。


◆漆絵画帖「墨林筆哥」 のなかのカエルの絵

木の葉を琵琶に見立て、あぐらをかいて大音声で弾き語りを聞かせるカエル
まわりのカエルはみな静かに聞き入っている。
ひとりだけとなりの観客に向かって口をひらいている。
欠伸をしているのか、となりのカエルに感想を伝えているのか。

この絵の中では長い長い物語とともに、ゆっくり時が過ぎています。


【おまけ】
以前、東京国立博物館で取ってきた是真の漆絵画帖の写真です↓




画像クリックで拡大します

平常展(2009年12月)@東京国立博物館

2009年12月28日 00時31分46秒 | 展覧会
ひさしぶりに東博の平常展の感想。
ほんとは月に2回くらい行ってるんだけど・・・なかなか書けず。

今回は本館の近代美術コーナーに
川瀬巴水の「東京十二景」から10点が展示されてたので、また写真とってきました。
展示されていないのは「春の愛宕山」「井の頭の残雪」の2点。
東博は所蔵してないのかなあ。残念です。

ただの展示は、版画としては珍しく額装ではなくガラスケースでの展示なので
絵肌の質感までよく見えていい感じです。


このエントリでは10点から3点だけご紹介。いずれも画像クリックで拡大します。

◆深川上の橋


新版画は夕焼けが美しいのがひとつの特徴だと思います。

水面の色は遠景と近景では色相が間逆、
しかも反転してるエリアはすごく狭いのにも関わらず
グラデーションが自然でまったく違和感がないのが凄い。

どうやって重ね刷りしてるのか素人には想像つきません。


◆駒形河岸


こちらはこの秋の江戸博の新版画展でも展示されてました。
構図の面白さで有名な作品。

視界全面をみっちりと埋めるようにそそり立つ竹垣。
圧迫感さえ感じますが、それによって隙間から覗く青い川面と空の広さが際立ちます。

近景に柱や樹木などを置いて、背景に空間的な広がりを与える構図は
日本の浮世絵に特有のものでしたが、
本作はそれを更に進めたものと言えるかもしれません。


◆雪の白髭


小屋の屋根の部分をよく見ると分かりますが、
地の白と彩色による白を使い分けています。

また写真だと分かりませんが、
空刷りによって積もった雪の輪郭に沿って紙に凹凸を付け、
ふわりとした様子を表現しています。

新版画の雪の質感の凄さは、実物をみないと分からないと思いますので
もし機会ががあればぜひ見に行ってみてください。



※画像掲載に問題がある場合はご指摘ください。削除します。

「国宝土偶展」 @東京国立博物館

2009年12月20日 12時10分13秒 | 展覧会
しばらく大英博物館に出張していた土偶オールスターズの
凱旋記念公演?に行ってきました。



画像はガシャポンで当てた国宝ビーナス土偶です(クリックで拡大)。
グッズについては暇があればまた別エントリで。


2007年から約2年間、
「仏像の道」の特集陳列をやっていた本館入り口正面の部屋で開催。
東博の企画展としてはこじんまりとした規模。

でもお客さんは結構入ってましたので、
ゆっくりじっくり見たい方は早めに行ったほうがいいと思います。

会場のそこかしこで聞こえたのは、「意外と面白いね」という声。
科博のシカン展のときと似た反応だと思いました。

自分はあまり平成館の考古展示には行かないので
恥ずかしながら、ほぼ全ての土偶が所見。

正直、土偶にこんなにバリエーションがあると思いませんでした。
何千年も日本各地で作られ続けたのだから、考えてみればあたりまえですけど。

以下、展示品の感想。


◆遮光器土偶
よく宇宙人みたいと言われる有名なアレ。「ザ・土偶」。
会場でも“これこれ、土偶といえばこういうのだと思ってたよ”という
声が聴かれました。

顔のゴーグルみたいなものは、シベリアの極北民族の防寒具に酷似してるのだとか。
もし関連があるとしたら大陸とどのような繋がりがあったのか、想像が膨らみます。


◆十字型土偶、
ムンクの叫びみたい。もし魔よけだとしたら効果テキメンぽい。
初期の土偶は、板状で自立できないというのは知りませんでした。


◆国宝ビーナス
エロい。あとうずまき帽子がかわいい。
釣り目なのは何故なんだろう。
ガシャポンで当てたフィギュアは、細部まで本当に良く出来てる。


◆国宝 中空土偶
堂々と胸を張る様子が印象的な土偶。
今、勝手に名付けるとしたら「オードリー春日土偶」。
・・・おへその周りの模様はギャランドゥなのでしょうか

◆しゃがむ土偶
ひざを抱えてしゃがみこむ土偶。
祈りをささげるポーズ、という説が有力みたいですが
そのまま見ると「あーしんど…」といってるみたいに見えます。


◆土偶把手(とって)付き深鉢型土器
口縁部に中を覗き込むような人形が取り付けられた器。
夏の「染付展」の「古染付一閑人火入れ」を思い出しました。

豊穣を願う意図があったのではないか、という解説がありましたが
ただ単純に「器の縁に人形つけたら面白いだろうなー。じゃあつけよ。」という
遊び心が人類共通なだけなのじゃないかと思ったり。


◆イノシシ型土製品
すこしリアルに作った蚊取りブタみたいでかわいい。
つい先日、ヤフオクで似たものを見かけました。
贋物なんだろな・・・



友達・カップルや家族で行くと楽しい展覧会だと思います。

「オレ、もう2週しちゃったよ」という男の子に対し
「えーお父さんまだ半周だよ。ちょっと待ってよ」と会話してた親子が
微笑ましかった。