3次元紀行

手ぶらで地球にやって来ました。生きていくのはたいへん。そんな日々を標本にしてみました。

WBC初代チャンピオン日本!

2006-03-25 10:20:34 | スポーツ
WBC、ワールド・ベースボール・クラシック
終わってみれば日本が初代チャンピオンとなった。
夢のようである。ベースボール発祥の地、全員が大リーガーのアメリカ合衆国が初代チャンピオンとなるというのが順当な予想だった。
オリンピック最多優勝国のキューバがなるという予想もかなり可能性が高かった。数多の大リーガーを輩出しているプエルトリコ、ドミニカ共和国も優勝候補だった。ベネズエラもしかり。
かてて加えて、開催国アメリカは、有力な優勝候補たちを一つのブロックに押し込め、みずからはそこそこと思われた日本、韓国、メキシコのブロックに収まった。シナリオでは予選ブロックは楽勝。優勝決定戦で、優勝候補がひしめくブロックから、互いをつぶし合ってへとへとになって這い上がってきた一つのチームをたたけばいいはずであった。
ところが、精神面ではイマイチの日本に、疑惑の判定でかろうじて勝ったアメリカは、次の韓国戦で大敗。日本と韓国に負けたメキシコとの対戦では、疑惑の判定を再発動させたにもかかわらず、まさかの敗退をきっした。

一方、日本はといえば、韓国に負けて地区予選を2位で通過した。本戦の予選ではアメリカに負け、韓国にも負けた。いずれも1点差。ヒット数は多く、たくさんチャンスはあったが、得点に結びつけることができなくて、涙をのんだ。ただ、メキシコ戦では大量得点で1勝をあげた。
日本中、暗いムードが漂っていた。なんでも日本では落胆したファンが、生卵を用意して、帰ってくる選手団を待ち伏せしているといううわさがたっていた。イチローは帰ってこなくていいんだな、あいつズッケー、なんてことも囁かれていた。
とりあえず、選手達はメキシコーアメリカ戦が終わるまで、サンディエゴで待機。その夜、イチロー選手は最悪の酒、やけ酒を飲んだという。翌日メキシコーアメリカ戦の真っ最中、王監督は知人と中華料理店の片隅で食事をしていたそうだ。
日本では誰もが野球のことはもう忘れよう、仕事にもどろうと、日常に帰っていった。少し前のオリンピックで、荒川静香選手が取った金メダルのことを思い浮かべて自分達を慰めながら。
ところがその日、2対1でメキシコが勝った、日本は準決勝に行けるそうだというニュースが電撃のように日本中を駆け巡った。

準決勝は19日(雨で中止にならないかとずいぶん心配した)、日曜日。そこで日本は韓国を6対0で下し、21日、春分の日、決勝の対っキューバ戦では10対6で圧勝した。圧勝といったが、キューバ戦は実に油断ができなかった。先制点を取って5対0で進行していたが、キューバが相手では何点先制していても不安だった。不安は的中し、2本のホームランを打たれ、途中、6対5の1点差まで詰め寄られていた。
が、勝利の女神は日本に微笑んだ。後半、あまり得点しない日本が9回で4点の追加点。裏では1点を返されたものの、10対6で、日本が勝利した。

夢のようだった。決勝戦のテレビ平均視聴率43%、最高視聴率は優勝の瞬間で56%。時は春分の日。ご先祖様のお墓参りの日だった。桜もちらほら咲き始める。選手にぶつけるつもりだった生卵を茹でてつまみにし、ビールで祝杯をあげたファンもいたろう。catmouseも実はビールを買い、梟おじさんからパクった金箔入り越の誉と裂き烏賊で乾杯をした。
飲みながらテレビで何度も放映される勝利のセレモニーや選手達の様子を、何度も見た。勝利の瞬間の、監督胴上げ。マウンドに飾られた日章旗。ティファニーの優勝トロフィーを掲げる選手達、大きな日の丸を全員で持ってグラウンドを一周する勝利の行進。王監督の談話、イチローの談話、シャンパンかけ。上原がイチローの襟首にシャンパンを流し込み、イチローが「お前ら!もっと先輩を敬え!」と怒鳴る場面。

翌日も余韻が残った。日本選手団は日本に帰る。大リーガーのイチローと大塚はアメリカに残るので、空港まで見送りだ。
あー、イチロー、一緒に日本に帰りたかったろうなー、と今度は誰もが思う。
「いい仲間にめぐり合えて」と、記者会見の時、イチローは絶句し、「ほんと、ヤバイっすね」と続けた。ヤバイほど、別れがたい仲間達。「このメンバーで大リーグを戦いたい」と、イチローをして言わしめた、王ジャパンのチーム。
空港で、イチローはその仲間達と別れた。日本選手団を見送ったイチローはきびすをかえして自分の所属するマリナーズのキャンプ地に向かう。その白いジージャンの後姿がまるで映画のラストシーンのようだった。

本当に、まるでドラマのようだった。ドラマよりドラマテックだった。作者が人間なら、あまり嘘くさくて、こんなシナリオにはしなかったろう。だが、神様は、こんなシナリオをいけしゃあしゃあと書いた。

ところで、このシナリオには後日談がある。日本の優勝を韓国が納得いかなくて「本当の実力は韓国が上。どっちが強いかもう一回勝負しようぜ」と挑戦状たたきつけてきたのだ。
気持ちは分かる。確か、オリンピックで、こうした韓国の立場を日本も経験したことがある。無敗で決勝にあがって、決勝戦で敗れたということがあった。残念だった。
しかし、それはそうしたルール。「どっちが実力が上が勝負しようぜ」なんて、そんなこと相手に申し出たりはしなかった。スポーツマンだから。
今回のWBCでも、実力という点では、ドミニカのほうがあったかもしれないし、ベネズエラだったかもしれないし、もう一回やればキューバが勝ったかもしれない。100歩ゆずって韓国にも可能性があったといってもいい。でも、リーグ戦の後、トーナメントというルールで戦って、その上で優勝したのだ。優勝は優勝、初代チャンピオンは日本なのだ。
ライバルの友達が勝利を手にし、世界各国から祝福と賞賛をあびる姿を見るのは、多分辛いだろう。日本の笑顔や歓喜の声を聞くたびに心にチクチク嫉妬の針が突き刺さるに違いない。
しかし、悔しかったら、3年後を目指して臥薪嘗胆するがいい。終わった直後に「もう一回勝負しようぜ」なんて見苦しいにもほどがある。
勝敗は時の運。勝利の女神が頬笑んだのはエゴイステックな大国でもなく、ドーピング疑惑の上、デッドボールを食わせてハイタッチするような正邪の区別がつかないような国でもなかった。
彼女が選んだのは、少年の心になって純粋な気持ちで野球をたのしんだチームだった。韓国は嫉妬の黒煙で自分自身を汚すより、スポーツマン精神を一から勉強しなおしたほうがよい。