CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 3(12/8)-5

2008年12月09日 | COP14・CMP4
会議場から

 ポーランドは「寒い」と聞いて、覚悟してきたのですが、思ったほどには寒くありません。確かに昼間でも2℃くらいですが、風もないので、それほど寒くは感じません。朝に氷が張ることはなく、霜が降りたのも一日だけでした。ポーランド在住の日本人に聞くと、今年は例年に比べて、本当に暖かいと言っていました。
ポズナニの旧市街のオールドスクエアーに、12月6日の土曜日から氷の彫刻が展示されていましたが、翌日の日曜日の夜には溶け始めていました。
市街はクリスマスモードに入って、何か浮き浮きした雰囲気が漂っていますが、会議場は交渉を進めようとする動きが無く、少しいらいらした雰囲気になってきています。

 

COP14・CMP4 ポズナニ通信 3(12/8)-4

2008年12月09日 | COP14・CMP4
◆CMP決定案についてのAWG-KP議長提案

 一部のメディアで、12月5日付けのCMP決定の AWG-KPの議長提案について報道されていますが、これまでの情報ではこの議長提案では、附属書Ⅰ国全体の削減目標については、「附属書Ⅰ国全体のGHG排出量は、IPCC・AR4の貢献に基づいて策定されるべき(should be informed)」で、具体的には「2020年までに1990年比で25-40%削減」することが求められる(would require)」とされているようです。また、日本政府に配慮したのか、「附属書Ⅰ国全体のGHG排出量を野心的に削減するためには、セクター別ボトムアップ分析(セクター別アプローチ)を含む緩和可能性の分析に基づいて策定されるべきである(should)。」とされているとのことです。
また、附属書Ⅰ国への削減義務は「引き続き数量化された排出抑制・削減約束(QERLOs)を用いる」とされ、その数値目標の達成に「①排出量取引制度、②プロジェクト型メカニズム、③排出抑制・削減対策、④LULUCF活動」の利用を継続するとされています。

 さらに、コペンハーゲンで合意すべきコミットメントの検討課題として、①コミットメント期限、QERLOsのあり方、②排出量取引制度、クリーン開発メカニズム(CDM)や共同実施(JI)などのプロジェクト型メカニズムの改良、③第2約束期間でのLULUCFの定義、様式、規則、ガイドライン、④対象となるGHGの範囲、部門や排出源の分類などがあがっています。

 日本政府はNGOsに対するブリーフィングで、IPCCの数値を書き込むことは絶対反対で、1990年の基準年にも反対すると明言していました。おそらくバリと同じ様に、この点が今回のCOP/CMPでの最大の論点で、最後までもめることになると思います。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 3(12/8)-3

2008年12月09日 | COP14・CMP4
◆AWG-KP 第6回会合

 AWG-KPは、先進国の次期約束期間での削減目標を討議する場です。このAWG-KP 6では、「排出削減目標達成方法」の分析を進めるとともに、今後の交渉の土台となるテキストと、2009年の交渉スケジュールに合意することが最大の課題になっています。また、「削減行動の波及効果(スピルオーバー効果)」の検討をするとともに、「排出削減目標達成方法」として「柔軟性メカニズム」や「土地利用、土地利用変化と森林(LULUCF)」などが議論されることになっています。AWG-KP のもとで、「柔軟性メカニズム」と「LULUCF」に関する非公式協議が行われることになり、また、「削減対策の波及効果」と「途上国の森林減少(REDD)」についてCGが設置されて議論が行われています。また、「緩和ポテンシャルおよび排出削減目標のレンジ」に関するWSが12月3日に開催されました。

 12月4日には、総会が開催され、いくつかの締約国から附属書I締約国による更なる約束の交渉を開始する必要性が指摘されました。EUは、先進国が国内措置と国際的な措置とを組み合わせ25-40%の削減を図ることを主張し、ノルウェーは2020年までに1990年比で30%削減という国家目標を明示しました。一方、ブラジルはメカニズムを利用する削減は、先進国の削減に追加的なものであるべきだと主張しました。確かに、IPCCの提示する先進国の25-40%削減の2020年目標には、京都メカニズムなどでの削減は想定されておらず、京都メカニズムなどでの削減は、25-40%にプラスされる必要があります。ロシアは、LULUCFの規則を簡素化する必要があると指摘しました。

 2009年の作業計画については、先進国は、AWG-LCAとAWG-KPの作業がコペンハーゲンでの総合パッケージの土台になるとして、このプロセスを統合することを主張しています。しかし、途上国側は、将来の削減義務を議論しているAWG-KPと統合すると、途上国に新たな義務を課す議論につながることを警戒し、これに反対する構図になっています。また、京都議定書の20条2項は、議定書の改正案は、少なくとも6ヶ月前に事務局からCMPに通報することが求められていることから、2013年以降の削減義務や枠組みの改訂を、議定書の改正で対応する場合は、2009年6月までに改正案をまとめることが必要になります。

波及効果についてのCG
 12月4日に開催された「削減行動の波及効果」についてのCGでは、何に焦点を当てるかが議論され、G-77/中国は、波及効果の範囲、さらなる分析研究、可能な解決策に焦点を当てることを提案しました。日本、カナダ、オーストラリア、ロシア連邦などの先進国は、これらの問題が全ての締約国に関連すると指摘、プラスとマイナスの両面について検討するよう求め、共通の利益に注目しました。中国は、AWG-KPでの議論は附属書I締約国に焦点を当てるべきであり、ここでの議論は悪影響に注目するべきだと主張しています。

 12月5日もCGが開催され、「波及効果には、プラス、マイナスの両面があり、最貧国や最も脆弱な途上国への影響が最優先事項ではあるものの、(これは)すべての締約国に影響しうるものである」との記載が入れられた草案文が配布され、これには締約国が提起した課題リストが入り、2009年のワークショップ開催が提起されています。課題リストについては、オーストラリアがリストの削除を求め、日本は、いくつかのプラスの波及効果の追記を求めました。引き続き非公式協議が行われています。

「AWG-KP議題項目3、4、6、7」についてのCG
 AWG-KP議題項目3、4、6、7は、議題項目3が「排出削減目標の達成方法分析ならびにその効果促進方法の特定と持続可能な開発に対する貢献((a)排出量取引とプロジェクトベースのメカニズム、(b) 土地利用、土地利用変化、森林(LULUCF)、(c) 温室効果ガス、部門、排出源の分類、(d) セクター別排出量を対象とする手法の可能性)」、議題項目4が「関連手法問題の審議」、議題項目6が「附属書I締約国の緩和ポテンシャルの分析ならびに排出削減目的範囲の決定」、議題項目7が「附属書I締約国による更なる約束の検討」です。
12月6日(土)は一日中、こうした課題についての非公式協議が開催されたようです。

 非公式協議だけでなく、議長の友人グループの協議も開催され、特にIPCC/AR4での第3作業部会に関する表現や排出削減の範囲に関する表現が議論されているようです。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 3(12/8)-2

2008年12月09日 | COP14・CMP4
◆AWG-LCA 4

 AWG-LCAでは、「共通のビジョン」と「リスク管理とリスク軽減戦略」についてのワークショップ(WS)が、この会期中に開催されることになっており、「共通のビジョン」についてのWSは12月2日、3日に、「リスク管理とリスク軽減戦略」についてのWSが12月4日に開催されました。また、「共通のビジョン」と4つの討議テーマ(ビルディングブッロク)の「緩和」、「適応」、「技術/資金」についてのコンタクトグループ(CG)が設置されました。「共通のビジョン」のCGについて初日に揉めたことは通信1に報告したとおりです。

「共通のビジョン」のCG
 12月5日にこの「共通のビジョン」のCGが開催されました。このCGでは、「共有ビジョンのWS報告書」に関する議長のペーパーのなかの「基本理念」、「範囲(スコープ)」、「目的」に焦点をあてた議論がなされました。G-77/中国は、現在の金融危機に気候変動への取組みが阻害されることに懸念を示し、先進国は大幅な排出削減をすべきで、途上国は国ごとに適切な緩和行動を持続可能な開発との関連において検討すべきであると意見を述べました。日本は「革新的技術の中心的な役割」を、小島しょ国連合(AOSIS)は「脆弱な国々の保護が共有ビジョンの中心的な役割である」と強調しました。「基本理念」に関しては、WSで中国が提起した「人口1人あたりの累積排出量(per capita“accumulative emission convergence”)」や「共有大気資源に対する等しい権利(equal rights to common atmospheric resources)」の意味を明確にすべきだとの意見が出ていました。アメリカの代表は、現在の金融危機が各国の排出削減能力に及ぼす影響に懸念を表明しました。他人事のような言い方に、「金融危機はあなたの国が起こした問題だろう」と失笑が起きていました。

「緩和(削減策)」についてのCG
 「緩和」についてのCGは、12月4日 に開催されました。ここでは、日本政府が提案している「途上国の差異化」が問題になっています。G-77/中国は「途上国間での差異化の提案を拒否し、AOSISは「先進国が率先して削減するべきで、途上国はクリーンな開発経路をたどるべきだ」と主張しました。12月6日には第2回のコンタクトグループ会合が開催され、「計測・報告・検証可能性」(MRV)に焦点を当てた議論がなされました。このMRVは、バリで深夜にわたる交渉の末に、AWG-LCAを設置することに合意した「条約の下の対話(ダイアログの継続)」の決定に記載された文言で、京都議定書を批准していない先進国(アメリカ)は、「数値化された排出抑制・削減目標を含む、計測可能で、報告可能で、検証可能な削減目標ないし対策」をとるとされ、途上国についても「計測可能で、報告可能で、検証可能な削減対策」をとるとされたものです。同じ文言がアメリカ条項と途上国条項に記載されたのは、アメリカが途上国条項と同じ表現にすべきだと主張したからだと伝えられています。MRVに関する議論では、オーストラリアは、先進国、途上国とも標準化した報告書を作成するよう求め、日本は、途上国の目録の質を向上させる必要があるとし、EUは途上国からの報告をもっと頻繁にするべきである主張しました。一方、途上国は、MRVを適用するべきものとして、先進国による法的な拘束力のある緩和約束、途上国による技術援助と資金援助に基づく緩和行動、先進国の資金、技術、能力向上に関する約束の実施を挙げています。

「適応」についてのCG
 12月5日に開催された「適応」のCGでは、途上国が、適応活動を実践的な実施段階へと移行するよう求め、早期警戒システム、脆弱性マップ、情報交換の必要性を強調していました。アフリカグループ、インド、ノルウェーなどの国々が、地域別適応センターの設立を支持し、中国は、適応基金と条約の下での適応委員会の設立を提案しました。

「技術/資金」に関するCG
 同じ12月5日に開催された「技術/資金」に関するCGでは、議長が、収斂する部分と相違ある部分を調べるため、参加者の意見を求め、EUは「実効性や効率性、衡平性という原則に基づくべきである」とし、日本は「資金・技術支援の供与のための国家間の差異化」を提案し、オーストラリアとともに、新たな資金制度を創るのではなく「既存の資金制度」に集中させることを主張しました。ブラジルなどは「必要とされる莫大な資金を提供するには新たな方策が必要だ」と主張しています。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 3(12/8)-1

2008年12月09日 | COP14・CMP4
◆議論はコンタクトグループに

 今回のCOP14/CMP4の最大の課題は、来年のコペンハーゲンに向けて、交渉の土台となるテキストと交渉スケジュールを決めることです。その舞台は、AWG-LCA 4とAWG-KP 6となっています。