CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

COP14・CMP4 ポズナニ通信1(12/2)-4

2008年12月02日 | COP14・CMP4
◆会議場から  
 
 ボズナニはポーランドの首都のワルシャワとドイツのベルリンの中間にあり、古くから東西交易の中継地として栄えた都市で、968年にポーランド王国が興されたところだそうです。国内最大のメッセ(国際産業見本市)が毎年開催される商業都市で、今回の会議はこの国際産業見本市の会場「ポズナニ国際フェアー」で開催されています。国際産業見本市の会場だけあってやたらと広く、会議が行われている場所を探すのに苦労します。いつもは順番待ちのコンピュ-ターセンターも、広いスペースが確保されており、快適な作業環境となっています。



COP14・CMP4 ポズナニ通信1(12/2)-3

2008年12月02日 | COP14・CMP4
◆初日からAWG-LCAで一波乱

 初日の12月1日は、午前中にCOP14とCMP4の総会(プレナリー)が開催され、午後からAWG-LCAとAWG-KP 、SBSTA とSBIの会議が並行して開催されました。

 今回、最も注目されているのはAWG-LCAです。その最初の会合で、テーマごとのコンタクトグループを設置する討議になって一波乱が起こりました。

 AWG-LCAの議長が、「共通のビジョン」と「緩和」、「適応」、「技術/資金」の4つのコンタクトグループの設置を提案したのに対し、アルジェリア、サウジアラビア、ボリビア、中国、マレーシア、エジプトなどが「共通のビジョン」のコンタクトグループの設置に反対したのです。これに対し、日本、コスタリカ、パナマ、コロンビア、バルバドス、EU、ガーナ、オーストラリアなどが、「共通のビジョン」のコンタクトグループの設置に賛成しました。最終的に、議長提案どおり4つのコンタクトグループが設置されることになりましたが、「共通のビジョン」のコンタクトグループの議論は1回、1時間半になってしまいました。
 
 そもそも、AWG-LCAはCOP13/CMP3で合意された「バリ・アクションプラン」で、「条約の究極の目的を達成するには世界の排出量を大幅に削減する必要がある」として、そのために「現在、2012年まで、そして2013年以降において長期的な協力行動により、条約の効果的かつ持続的な実施を可能にする包括的なプロセス」として設置されたもので、その主な要素は「共通のビジョン」と、「緩和」、「適応」、「技術」、「資金」とされています。

 なかでも「共通のビジョン」はAWG-LCAで議論されるべき最も重要なテーマで、「共通のビジョン」との関連で、中長期の削減目標が議論されることが期待されています。

 石油資源に頼り、地球温暖化対策に後ろ向きなアルジェリアやサウジアラビアなどの産油国が、中長期の削減目標の議論が進むことに危機感を抱き、これに反対するのは理解できますが、中国が反対するのは、中国も含む世界全体の削減目標である2050年目標が設定されることを嫌がっているように思われます。アメリカと並ぶ世界最大の温室効果ガスの排出国となった中国は、これまでも「共通のビジョン」について、「必ずしも具体的な数値目標を意味するものではなく、長期的な目標、ゴール、手段などに関するステートメント」(2008年6月、AWG-LCA2での発言)としており、拘束力のある具体的な長期目標に消極的でした。コンタクトグループは、各国の意見が異なる議題について、更にポイントを絞って議論し、なんらかの合意を得るために作られるため、これを避けるために反対したと考えられます

 この2週間で、こうした交渉の進展に後ろ向きな国を説得して、コペンハーゲンに向け、交渉の土台となるテキストと交渉スケジュールを策定できるかどうかが課題となっています。

COP14・CMP4 ポズナニ通信1(12/2)-2

2008年12月02日 | COP14・CMP4
◆並行する6つの会議

 今回の会議は、COP14や CMP4に加えて、以下の4つの会議が並行して開催されています。

①「第29回科学的・技術的助言に関する補助機関会合(SBSTA 29)」
②「第29回実施に関する補助機関会合(SBI 29)」
③「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業グループ(AWG-LCA 4)」
④ 「京都議定書の下での附属書Ⅰ国の更なる約束に関する第6回特別作業グループ(AWG-KP 6)」

 SBSTAとSBIは条約の下におかれた補助機関で、毎年6月頃に1回、COPや CMPと同じ時に1回の、年2回開催されています。

 AWG-LCAは、昨年12月にバリで開催されたCOP13で設置されたプロセスで、条約の長期にわたる効果的で持続的な協力行動の構築することを責務としており、2009年のコペンハーゲンのCOP15までに責務を完了させることになっています。このAWG-LCAでは、「長期的協力行動のための共通のビジョン(Shared Vision)」と、「緩和」、「適応」、「技術」、「資金」の4つのテーマ(ビルディングブロック)について議論されることになっています。AWG-LCAは、これまで3回の会合が開催され、今回が第4回目の会合です。

 AWG-KPは、2013年以降の附属書Ⅰ国の約束(削減義務)を検討するために、2005年にカナダのモントリオールで開催されたCOP/MOP1(第1回京都議定書締約国会合)で設置された作業グループです。これまで再開会合を含めると8回の会合が開催され、今回が9回目の会合です。

 *当初は京都議定書締約国会合を「COP/MOP」と表記していましたが、最近は「CMP」と表記しています。

COP14・CMP4 ポズナニ通信1(12/2)-1

2008年12月02日 | COP14・CMP4
◆COP14/ CMP4開会

 12月1日、ポーランドのポズナニ(Poznan)で、「第14回気候変動枠組条約締約国会議(COP14)」、「第4回京都議定書締約国会議(CMP4)」が、12月13日までの予定で始まりました。

 今回のCOP14/CMP4の最大の課題は、来年のコペンハーゲンでの合意に向けて、議論を整理し、交渉の土台となるテキストと交渉スケジュールを策定し、着実に交渉を前進させることです。そのためには、2013年以降の削減目標に直結する中期目標について、日本などの先進国が2020年までに、90年比で25~40%削減を目指す意思を示すことが必要です。

 また、世界を覆う金融危機に抗して、交渉を前進させることができるかどうかも、隠れた大きな課題になっています。
CASAではCOP14/CMP4に向け、ポジションペーパー「COP14/CMP4の任務と課題-コペンハーゲンに向け交渉の前進を!」を発表しました。



COP14ポジションペーパー

2008年12月02日 | COP14・CMP4
CASAでは、COP14開催にあたり、CASAポジションペーパー『COP14/COPMOP4の任務と課題 コペンハーゲンに向け交渉の前進を!』を発表しています。

本編はこちら http://www.bnet.jp/casa/cop/COP14/COP14PP.pdf


概要

①日本政府は中期目標を早急に表明すべき
 2007年のCOP13/CMP3で、2009年12月にコペンハーゲンで開催されるCOP15/CMP5において、2013年以降の削減目標と制度枠組みに合意をすることが決まった。 COP14/CMP4は、コペンハーゲンでの合意に向けて、着実に交渉を前進させることが任務であり、そのためには2013年以降の削減目標に直結する中期目標について、先進工業国が2020年までに90年比で25~40%削減を目指すことを表明することが必要である。日本政府は、長期目標については2050年までに60~80%削減を目指すことを表明したが、中期目標については具体的目標を表明すべきである。

②大規模排出源への対策強化と再生可能エネルギー普及促進が不可欠
 2007年の日本の温室効果ガス排出量(速報値)は90年比で8.7%も増加し、京都議定書の6%削減義務の達成ためには、海外から莫大な資金を使って排出枠を購入するしかない。このような温室効果ガスの増加は、発電所や工場等の大規模排出源への排出削減規制や、国内排出量取引や炭素税の導入、再生可能エネルギーの買取保証制度などの対策を先送りしてきた当然の帰結である。

 日本政府は、セクター別アプローチに見られる自国の削減義務を軽減する提案を声高に主張するよりも、確実に排出削減につながる抜本的な国内対策の導入・実施と、2020年に90年比で25~40%削減を目指す強い意思を中期目標として表明すべきである。