任天堂のファミコン開発話は有名で面白い。
一方、ライバル機だったセガのSC-3000やSG-1000の開発話、なんつーのは聞かない。
まぁ、ハッキリ言うと、技術的に特に面白いエピソードは無いから、に尽きる。
セガのSC-3000/SG-1000の企画は、元任天堂の取締役だった駒井徳三が1982年にセガに入社した時に遡るらしい。
セガはその時、家庭用コンシューマビジネスに目を向け、駒井徳造を筆頭にプロジェクトをスタートさせる。
駒井徳造氏は任天堂出身者の為、任天堂イズムの一つ、「初めに価格ありき」を徹底しようとした。要は「安いコンピュータを作れば結果は後から付いてくる」と。
当時、おもちゃ業界でもビデオゲームが注目されてたが、ゲーム&ウォッチやLSIゲーム(今では単に電子ゲーム等と呼ぶが)ブームの後、「テレビに繋げるゲーム機」が主流になるか、あるいは「子供用のパソコン」になるかイマイチ読みきれなかった。
そんなワケで、セガもまずは「パソコンで行こうか」と言う辺りで企画をスタートさせるわけだ。
セガ SC-3000。SCとはSEGA COMPUTERの略(※1)。
「初めに価格ありき」の戦略で、部品の低コスト化を目論んだ、のがSC-3000と言うマシンだ。具体的にはペーパーフェノールと言う特殊な紙を徹底活用したらしい。
しかしながら、「コンピュータとしての」特徴は実はあまりなく、1982年発売のタカラ・ゲームパソコン/SORD M5やSC-3000/SG-1000と同じ年(1983年)に発売されたMSXとスペック的にはほぼ変わらないモノ、となっている。
それらはすべて
- ザイログのZ80、あるいはその互換CPU搭載
- VDP(Video Display Processor)にテキサス・インストゥルメント製のTMS9918、あるいはその互換チップ搭載
と似たりよったり、になってる、んだ。
任天堂のファミコンみたいに「ゲームに特化したカスタムチップ」を製作するワケでもない、って辺りがセガの「そこまでじゃない本気度」を感じる事が出来る(笑)。
いや、ファミコンの場合は、1983年の発売にこぎつけるまで、ぶっちゃけ、ドンキーコングがリリースされた直後の1981年から開発を始めたらしいんで、2年くらいかかってるわけだが、セガは「とりあえず市販部品を調達しました」辺りで、やっぱり「本気度の違い」ってのが分かろうモノだ。
実際、前にも書いたが、セガのマシンは基本的にはどれも「市販の汎用部品を使って組み立ててる」だけだ。任天堂が「ゲームを追求する」のとは大違いなんだよな。
結果、当たり前なんだけど、ゲームの「出来」が任天堂とその他では大きく違い、任天堂は独走状態に入るわけだ。
対するセガは、1983年発売のSG-1000を毎年モデルチェンジしていく事となる。しかし、ファミコンと違ってサードパーティも集まらなかったんで、既存のソフトを捨てるわけにはいかない。
と言うわけで、一応後方互換性を保ったまま、モデルチェンジを行っていくんだが・・・・・・。
前回も見たが、セガは画像出力用チップに、最初は市販品のテキサス・インストゥルメント製のTMS9918を使っていた。解像度は256x192と、ファミコンに比べると明らかに低く、また、16色しか使えない。どう見てもファミコンより性能が落ちるわけだ。
要は基本的には、SC-3000/SG-1000は「安いだけ」のマシンだったんだ。
しかし、「このままじゃアカン」と思っただろうセガは、2回目のモデルチェンジ、つまりMark IIIを出す際に、VDPをヤマハ製の315-5124と言うチップへと切り替える。これはTMS-9918の上位互換品なんだけど、全部で16色しかないTMS-9918と違って、64色中16色表示となる。
Mark IIIが出た一年後、今度はマスターシステムへとモデルチェンジするが、今度は解像度が256x224とファミコン並になり、発色数も64色中32色同時出力が可能となる。この時のVDPもどうやらヤマハ製らしく、同じくTMS-9918の上位互換チップだ。
しかし、ちとこれらのヤマハ製チップに問題があった。色の表示命令、っつーかその番号が、オリジナルのTMS9918が「想定した」ブツじゃなかったんだな。従って、プログラムとしては確かに後方互換性を考慮して「動く」事は動くんだけど、発色がまるで変わってしまう、と言う事になっちまったんだ。
例えば、SC-3000/SG-1000/SG-1000 IIだとこういうゲーム画面が、
Mark III/マスターシステムだとこうなってしまうわけだ。
オリジナルのSG-3000/SC-1000だとパステルカラー調だった画像出力がMark III/マスターシステムだとウンコ感が増す(笑)。
ぶっちゃけ、何故にヤマハがこうしたのか、あるいはセガがGoサインを出したのかよう分からん。
さて、前回書いた通り、通常、エミュレータはセガ・マスターシステムをベースとしている。実機と同じく、マスターシステムさえあれば既存のセガの8bitのゲームはすべて遊べるから、だ。
ただし、色味の問題はマスターシステム同様残ったまま、となる。
んで、今回、ちとエミュレータを調べてみたんだよな。どこかにSC-3000/SG-1000/SG1000 IIのオリジナルの発色のモノは存在しないのか、と。
結論から言うと、Kega Fusionと言うエミュレータなら、SC-3000/SG-1000/SG-1000 IIのオリジナルの発色が再現される事が分かった。
ただし、Linuxで試した限り、「ゲームプレイと言う観点では」Kega FusionによるSG-3000/SC-1000/SC-1000IIのエミュレーションはあまり良くない。入力がおかしくなる、と言う現象が見れる。ただ、Windows版もそうなのか、ってのは分からない。Linux特有の現象である可能性があるから、だ。
ここでは、今まで紹介したSG-1000のゲームがKega Fusionだとどういう発色になるのか、ギャラリー的に紹介しよう。
SC-3000/SG-1000/SG-1000 IIのカラーリングとMark III/マスターシステムのカラーリングを交互に置いていこう。
・ブラックオニキス
・サファリハンティング
・ロードランナー
・スターフォース
・スペースインベーダー
・ゴルゴ13
・超時空世紀オーガス
・モナコGP
・岡本綾子のマッチプレーゴルフ
・倉庫番
さて、如何だったろう。
SC-3000/SG-1000の選色は明らかにパステルカラーがベースだ。一方、回路の特性か(と言うか、当時のテレビ・・・ブラウン管に合わせた)、微妙に画面が滲んでるような状態になっている。
一方、Mark III/マスターシステムの発色はソリッドで、滲みがない。しかしながら、SC-3000/SG-1000用に作ったゲームは明らかに「作成者が意図した」カラーになっていない。と言うか明らかにどう見ても「間違った」色選択になってる。
結論から言うと、本当の意味では、Mark III/マスターシステムとSC-3000/SG-1000/SG-1000 IIの間には互換性なんざないんだ。ゲームはプレイできても発色が違う。発色が違う、って事は互換性はない。
っつーかだな。ヤマハがこのチップを持ってきた時点で「改良してくれ」って言わなアカンのだよ。良くこれでO.K.出した、っつーかGoサイン出したな、と思う。明らかに既存ユーザーがモデルチェンジ後のマシンを買って、既存のカートリッジ挿した時ビックリすんだろ。
「これでイイ」って思える辺りが、やっぱりいつもの通り、「ユーザー不在の」セガだよな、って思うんだわ。フツーはこれで良し、としないだろ。
一年毎にモデルチェンジしてはユーザーに負担をかけ、負担をかけてる割には満足出来るデキになってない、とかアホか、って思うんだよな。
こういうトコが「セガはユーザーを舐めている」と思うんだ。だからそういう体質なんだっての。
昔から変わらんよな、セガ。
※1: このSC-3000からキーボードを取って、ゲーム用ジョイパッドを付けた製品がSG-1000だ。SGはSEGA GAMEを表すんだが、そもそもSEGAはSERVICE GAMESから来た名前で、結果じゃあ、SG-1000はSERVECE GAMES GAMEになるんじゃねーの、と言うワケの分からなさ、だ。
根本的にSEGAってアタマの悪い会社じゃないか。