Cafe SLOWHAND

珈琲と紅茶の小さなカフェのお話

タイフウイッカ

2016年09月05日 | 日記

9月5日、晴れ。

台風は過ぎ去り、何事もなかったかのよ
うに青い空が広がっている。

きのうは日曜日で、うちのお店はたくさ
んのお客さまで賑わったけど、台風は真
夜中にこの辺りを通過するって予報だっ
たから、昼間からみんな心配顔でソワソ
ワしていた。

いつもだったら車が数珠つなぎになる店
の前の道路も、昨日ばかりは閑散として
道の向こうとこっちとでキャッチボール
ができそうなくらいだった。
きっとみんな、用事を済ませて早々と自
宅に戻って行ったに違いない。

うちのお店、最後のお客さまが帰ったの
は日暮れ前だったっけ。
喫茶店ってのは、みんなの憩いの場、ひ
と時の安らぎを求めて集う場所ってのは
わかってはいるけれど、やっぱみんな、
結局は帰るべきところへ帰ってしまうん
だと思うと、ちょっぴり寂しい気分にな
るんだな。

用事を済ませて早々と帰った人たち。

取引先との接待ゴルフが途中で中止にな
ったパパ、
ラッキーにもシフトからはず
してもらって帰宅を許されたママ、
塾が
臨時休講になった子供たち・・・

それぞれが帰るべきところに帰り、雨戸
を閉じ、カーテンを閉め、一つの部屋に
集まって夕飯を共にしたことだろう。
いつもだったら、一人か二人が欠けて無
言で進行する食卓も、昨日ばかりは会話
に花が咲いたに違いない。みんな揃って
いるからね。

幸い台風は、大雨を降らせることも、大
風を吹かせることもなく、過ぎ去ってく
れた。
一夜明けて、パパは雨戸を開け、ママは
玄関のドアを大きく開いて、子供たちに
「行ってらっしゃい!」と言って学校へ
送り出している。
その声は、いつもよりも大きくて明るい
ような気がするんだな。

久しぶりに同じ時間を一緒に過ごした家
族は、充電率が100%になった携帯電
話のように元気ハツラツ。

そうかぁ、
レイラのパパは、左の手のひらを右のこ
ぶしの小指でひと叩きしてうなずいた。
このことを「台風一家」っていうんだ。 

行ってらっしゃい!の言葉に送られて通
学路を歩く子供たちの上には、秋の気配
を感じさせる青い空。
その中にぽつんと浮かぶ一つの白い雲が
そのとき「クスッ」と笑った・・・ 


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