Catch of the day

food planner cacoの日々もぎたてスピリッツ・・・

mandarin

2011-11-14 20:05:19 | 
路地裏に入り込んでくる冷えきった風のなかに

八角、シナモン・・・

チャイニーズスパイスの官能的な香りが温かく漂っています。


アスファルトのようにカチカチと乾燥した土の上を歩くと

足下でかすかに砂埃みたいなものがあって

ハイヒールなどの型をつけて歩くことが

せっかくの文化を傷つけるようで申し訳なく思ってしまうのです。


陽射しが低くなり始める頃

この国の路地裏はうす灯りとともにいっそうレトロになります。


通りのあちこちで

大きなセイロ(蒸籠)が何段にも積み上げられていて

蓋を開けようとすると

周囲の冷たい空気を追い払うように猛烈な勢いで

白く熱い蒸気が飛び出してくる。


葉野菜の敷かれた上に整列しているのは

白くネジっと半回転したようなピジョン君みたいなあの子だ。


湯気の向こうから

シャオチェ! 

ヤオプーヤオ シャオロンパオ! 

ちょいと、小龍包は如何?


ああ、私は今とっても素敵な場所にいるんだと。

聴き惚れるこの美しい言葉が最高のチャイニーズスパイスなのです。


よし、小龍包だ。

この子は少しやっかいです。

一見、ヘタッているようだけど

すっとぼけているのは知ってる。

持ち上げると縦長に姿を変えるのも実に強かだ。

なかはゼラチン質を含んだ地獄谷のように熱いスープが待っている。


ふっ。

猫舌の私が何度これに泣かされたことか。


針生姜とともにタレに浸けてからレンゲの上にのせ

香菜もあるでよ。

一気にいくのが美味しい食べ方です。


位置について・・・

ふぅー。

もういっちょ、ふぅって。

あッ・・つ。

冷え切っていた身体の中へ「熱い」が入ると

只今食道通過中、只今食道通過中、みたいな。

GPSついてんか・・・


ハオツィー!

周りの人がずっと見ていたのか、

いっせいになんやかんや・・笑いながら食べ方を指導してくれる。


寒ければ寒いほど温かいものを囲む人達の笑顔が素敵になる。

こういう路地裏には優しい魂に触れるような安らぎがあるのです。

人の笑顔に涙ぐんでしまうようであれば

魂が少し疲れていたのかもしれませんね。

そんな自分を見つけたら

良く頑張ってるねとたまには褒めてあげるんです。


街の中では少し難しい繋がりでも、

こんな温かい食を囲む知らない人だらけの小さな集まりに辿りつけば

優しい魂で癒されることもあるのです。


たぶん日本の昭和初期の学校でも使われていたであろう小さな木の椅子だったり

少し変形してしまったアルミのレンゲや

クリーム色をしたプラスチックの長い菜箸みたいなお箸だったり、

テイクアウトしているお菓子を包んでいるピンクの藁半紙だったり、

おもちゃ箱をひっくり返したようにごちゃごちゃに

何でも優しく受け入れてくれそうです。





長時間煮込んでチャーシューを作っていたら

キッチンに八角の香りが立ち込めて、

心はふとなつかしいそんな通りへ行ってしまったわけです。





時代とともに変わりゆくことも大切だけれど

変わらずそこにずっと在るものには魂に触れるような安心感があります。

本当に美しい魂の言葉はそんな路地裏にあったりするものです。



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