雑木帖

 ─ メディアウオッチ他 ─

読者をバカにするサギシ、安倍晋三氏

2006-08-28 21:46:05 | 政治/社会
『週刊ダイヤモンド』の今週号(09/02号)に次のようなコラムが載っている。安倍晋三氏が出版した『美しい国へ』(文春新書)のデタラメさを批判するものだ。

 不勉強か曲解か

 次期首相にほぼ確定した安倍晋三官房長官は、政権公約の柱に教育改革を掲げた。近著『美しい国へ』(文春新書)でも一章を割き、英国サッチャー政権のラディカルな改革をモデルとして讃えている。彼は、「サッチャーは、植民地政策が生んだ自虐史観の偏向教育を是正し、また、現場の自主性尊重を転換、国定カリキュラムを作り、全国共通学力テストを実施、さらに女王直結の学校査察機関を設立、学校別の評価を公表した。この改革をブレアが引き継ぎ、自らの成果とまで自負している」と書く。
 愛国教育に加え、中央集権と競争原理の改革を志向する安倍氏らしい。だが、間違っている。サッチャー改革では基礎学力は向上せず、教育機会格差は拡大し、放校、退学処分者が続出、彼らによる犯罪も増加した。教育の荒廃を止めたのはブレアで、教育機会の地域間格差、階層間格差の是正、いわば「落ちこぼれを出さない施策」に注力し、社会保障費を削ってまで教育予算を三割増やした。その成果は失業率の劇的改善に表れた。じつは、世界最高の教育先進国のフィンランドも同様の政策を先んじて徹底した。カネをかけた全国的教育水準向上が、最高の国力強化、社会保障政策なのだ。翻って、日本は社会保障費の手当てに追われ、義務教育の国庫負担を削減、教育機会格差は拡大に向かう。
 これらの事実を安倍氏は書かない。不勉強か曲解か。その底の浅さが悲しい。(辻広雅文)
 安倍晋三氏がハッタリをよく使うというのは既に周知のものであり、今更驚くことはないのだが、不思議というか不甲斐ないというか、新聞・テレビはこういう真っ当な、また必要である批判をおこなわない。
 たとえば、26日付の朝日新聞朝刊は、安倍晋三氏と小沢一郎氏の対比をそれぞれの著作でおこなっている。


朝日新聞 2006/08/26 朝刊より
(クリックすると画像が大きくなります)


 なぜこういうところで「週刊ダイヤモンド」が書いたようなことが書けないのだろうか。これでは読者に資料や情報を提供しているというより、読者を騙していることになりはしないか。まるで両氏のCMを請け負っているだけの機関だ。
 朝日新聞はこの日に限れば他に良い記事が2、3あるだけに残念なことだ。

 話は変わるが、この「週刊ダイヤモンド」の今週号は他に“リストラ父さん フリーター息子 悲惨世代”という「格差:正社員 vs. 非正社員」の特集をやっており、政府や新聞が報じないびっくりするようなデータを列挙している。また、“規制緩和の「功」と「罪」”という特集もやっており、今の日本を知る資料の一つとして是非一読をおすすめしたい。

参考:
 ・日本でもテレビや冷蔵庫を持てない「年収180万円」社員が激増する (森永卓郎)

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3 コメント

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目を覆う朝日新聞の劣化 (kojitaken)
2006-08-29 04:22:40
朝日新聞は、昔は個性的な記者たちによるニュース解説に見るべきところの多い新聞でした。

毎日新聞の「記者の目」ほど野放図ではないけど、よく読むといろんな角度から情報を分析できたものです。

でも、今の朝日は全然ダメですね。現状だったら、asahi.comを見ているだけで十分です。来年の3月まで契約しているから仕方なくとっているけど、そのあとは他紙に変えようと思っています。

朝日新聞の劣化ぶりは、目を覆うばかりだと思います。
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新自由主義の尖兵「朝日グループ」 (どーも)
2006-08-29 17:07:22
kojitakenさんのブログでお世話になってる「どーも」と申します。

どうも初めまして。



息子の薬物事件を抱える朝日新聞社長とテレ朝社長は私の記憶では共に自民党森派の番記者あがりです。

この2人が不自然な形で経営トップに就任したのが小泉政権発足後でした。

何らかの「見えない力」が働いたのは想像に難くないです。



朝日新聞は購読者数を激減させてまでも小泉政権をヨイショしまくり、テレ朝は久米氏を切って朝から晩まで小泉マンセー報道を繰り返し、大谷を転向させ、鳥越氏を黙らせた。



はっきり言います。

今の新聞である程度信用できるのは一部の地方紙と赤旗と日刊ゲンダイだけでしょう。



テレビは地上波全てが信用できない。



NHKニュースも全く信用できない。(政治経済絡みは全て。但し、Nスペなど政治部経済部報道部が関与しないものは結構信用できますが)
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Unknown (雑木帖@管理人)
2006-08-30 00:06:08
kojitaken さん



朝日も次期日本の総理になる人物に対し、あまりに甘いですね。

これでは「権力の監視」なんてとてもいえないでしょう。



最近僕は、ニュースなどではなく、身近な事象から世の中を見ていくことが大事なのかな、と思い始めています。





どうも さん



はじめまして。コメントをありがとうございます。



> 自民党森派の番記者あがりです。



そういう経緯もあるんですね。何だかNHKの政治部を彷彿とさせるような…(笑)



地方紙や赤旗、日刊ゲンダイなどのほうが概ね全国紙より信用できるというのは僕も思っています。

全国紙の今の編集部の内情などを書いたものを読むと、「これが新聞社?そのへんにある企業と同じような…ひどい上司だ」と驚きを禁じえません。

新聞社もたしかに一私企業には違いありませんが…。

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