最前線の育児論byはやし浩司

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●自己分析(トラウマ)

2006-07-29 06:50:40 | Weblog

●トラウマ(精神的外傷)

 心にフタ(lid)をしてはいけない。フタをすれば、その心は行き場をなくし、やがて心そのものをゆがめる。

ジークムント・フロイト(Sigmund Freud、1856―1939、オーストリアの心理学者)は、それをネズミの穴にたとえて言った。「カワネズミの入り口をふさげば、そのカワネズミは、また別の穴から出てくる。(抑圧された)潜在意識は、別の形となって、その人の心を裏から操(あやつ)る」と。

 そこでフロイトは、そのフタを取り除くために、まず患者自身に、思いつくままを話させた。これがよく知られている、「自由連想法」(free association)という手法である。

これは患者をリラックスした状態におき、患者に自由にしゃべらせることにより、その話の内容から、患者の心理状態をさぐるという方法である。フロイトは、ささいなことも、不愉快なことも、さらには恥ずかしいようなことも、すべてしゃべらせた。そして患者の心をふさいでいる「フタ」が何であるかを知ろうとした。

たとえばノイローゼ患者がいる。このタイプの患者は、自分の心をふさぐ「不愉快なこと」(unpleasant thing)を、取り去ろうともがくことによって、ノイローゼ状態になることが知られている。問題は不愉快なことがあることではなく、どうしてそれを不愉快に思うか、である。その思いを封じ込めてしまっているのが、ここでいう「フタ」である。

人間の心は一見複雑のようで、単純。単純のようで、複雑。私は幼児を教えるようになって、いつしか、幼児には、大声で話させる訓練をするようにした。レッスンが始まると、最初の5~10分は、とにかく大声を出させるようにしている。

つまりこうすることで、まず子どもの心を解放させる。フロイトの言葉を借りるなら、「フタを取る」ということになる。この方法を用いると、簡単な情緒障害なら、その場でなおってしまう。「治る」という言葉は使えないので、あえて、「なおる」とするが、それに近い状態になる。そして子どもの心は一度、解放させてあげると、あとは自らの力で、前に伸びていく。

 さて、その「自由連想法」だが、実のところ、これを自分でするのは、むずかしい。何人かの高校生に試してもらったが、なれないうちは、「何を思うの?」「どうすればいいの?」という質問が出てくる。私も自分でしてみたが、「思い」というのは、なかなか形になって出てこない。

そこで私なりに方法を変えてみた。何かマイナスの思い出がトラウマ(trauma、精神的外傷)の原因になることが多いので、それについて、簡単な作文を書かせてみた。読者の方も、一度、自分を試してみるとよい。これはいわば、私が考えた「作文連想法」ということになる。

(質問1) 今までで一番、つらかったことを、三つ書きなさい。
(質問2) 今までで一番。悲しかったことを、三つ書きなさい。
(質問3) 今、一番、嫌いなものを、三つ書きなさい。
(質問4) どんなタイプの人間が一番嫌いか、その特徴を三つ書きなさい。
(質問5) 今、一番したくないことを、三つ書きなさい。
(質問6) 今、一番心をふさいでいる問題を、三つ書きなさい。
(質問7) 自分のことで、一番いやだと思っているところを三つ書きなさい。
(質問8) 今までで一番、こわかったことを三つ書きなさい。
(質問9) 将来、自分のことで、そうであってほしくないことを三つ書きなさい。
(質問10)今、一番、苦手と思い、避けたいと思っていることを三つ書きなさい。

 この質問、正直に答えてみてほしい。そして、答の中に、ある共通点を見出したら、今度はその理由を考えてみる。「なぜ、そうなのか」「なぜ、そうなったのか」と。そのときその原因を、できるだけ自分の過去に求めてみるとよい。それがあなたのトラウマということになる。

 ただここで注意しなければならないのは、ほとんど、どの人も、トラウマの一つや二つはもっているということ。あるいはもっと、もっている。トラウマのない人はいない。だからトラウマがあることが問題ではない。問題は、そういうトラウマがあることに気づかず、それに振りまわされること。そして同じパターンで、同じ失敗を繰り返すこと。

言いかえると、もしあなたが子育てをしていて、いつも同じパターンで、同じような失敗を繰りかえすというのであれば、このトラウマを疑ってみる。虐待にしても、暴力にしても、あるいは育児拒否にしても、だ。さらに夫婦不仲、夫婦げんか、近隣との騒動などなど。そしてそれを知るための一つの方法が、ここでいう、「作文連想法」である。

 そしてこのトラウマというのは、おもしろい性質をもっている。つまりそれが何であるかわからない間は、いつまでもあなたを裏から操る。が、ひとたびわかってしまうと、消えることはないにしても、心のスミに、なりを潜めてしまう。そしてそのあと多少時間はかかるが、やがて問題は解決する。そういう意味で、自分のトラウマが何であるかを知るのは、とても大切なことである。

ちなみに、私もこの質問に答えてみた。

(質問1) 今までで一番、つらかったことを、三つ書きなさい。
         父が酒を飲んで暴れたこと。
XXXXX(Secret)。
若いとき恋人と別れたこと。

(質問2) 今までで一番、悲しかったことを、三つ書きなさい。
         信じていたXXに裏切られ、だまされたこと。
         親友を、私の不用意な言葉で失ったこと。
         XXXXXX(Secret)

(質問3) 今、一番、嫌いなものを、三つ書きなさい。
         ウソ
         世間体
         酒
 
(質問4) どんなタイプの人間が一番嫌いか、その特徴を三つ書きなさい。
         XXXタイプの人間。
         だらしなく、XXXXの人間。
         ギャーギャーと騒ぐ軽薄な人間。

(質問5) 今、一番したくないことを、三つ書きなさい。
         XXXへ、行くこと。
         人にへつらうこと。
         飛行機に乗ること。

(質問6) 今、一番心をふさいでいる問題を、三つ書きなさい。
         XXの問題。
         環境問題。
         将来への不安。

(質問7) 自分のことで、一番いやだと思っているところを三つ書きなさい。
         XXがあること。
         自分をごまかすこと。
         XXXXX(Secret)。
        
(質問8) 今までで一番、こわかったことを三つ書きなさい。
         父が酒を飲んで暴れたときの夜。
飛行機事故。
         アメリカへ、02年10月に行ったときのこと。
         
(質問9) 将来、自分のことで、そうであってほしくないことを三つ書きなさい。
         孤独死。
         絶望。
         ムダ死。
 
(質問10)今、一番、苦手と思い、避けたいと思っていることを三つ書きなさい。
         飛行機に乗ること。
         XXXXX(Secret)
         無一文になること。

 自分の回答を読んでも、何となくどこにトラウマがあるか、わかるような気がする。そしてそれが今まで、私の心を裏から操ってきた。それが何となくわかるような気がする。正確なものではないかもしれないが、自己分析のためには、役立つかもしれない。
(02-10-25)
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