●恋愛と不倫
++++++++++++++++++++
知人の息子が、不倫をしているらしい。知人
から、どうすれば、やめさせることができる
かと、相談というか、そんな話が伝わってき
た。
まだ息子の妻(嫁)は、気づいていないよう
だが、心配でならない、と。
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恋愛をしたからといって、性的関係があるとはかぎらない。不倫、つまり性的関係をもったからといって、恋愛感情があるとは、かぎらない。
その境目は、どこにあるか?、……という議論は、いくらしても、あまり意味がない。不倫関係が恋愛関係になることも、反対に、恋愛関係が不倫関係になることは、いくらである。つまり男と女の関係は、いつも流動的。
ところで、江戸時代から、戦前にかけて、日本には、姦通(かんつう)罪という恐ろしい刑罰があったそうだ。(江戸時代には、「不義密通罪」と呼ばれていた。)
浮気がバレたばあい、男のほうが町人のばあいには、まちがいなく死罪。(死罪だぞ!)また女のほうも、ただではすまない。浮気がバレれば、「吉原に身を売られ、数年間、苦界に身を沈めねばならなかった」そうだ(「日本史おもしろBOOK」PHP)。
そのため、女の夫のほうも、仮に自分の妻が浮気をしても、簡単には、訴え出ることができなかったそうだ。そのため、内々に、相手の男と、示談ですますことが多かったという。
その相場は、「7両2分」。江戸中期で、1両で1石の米を買えたというから、1両を約6万円として計算すると、7両2分というと、約43万円ということになる。
「43万円かあ……」と思ってみたり、「43万円ねえ……」と思ってみたりする。
で、どうして7両2分になったかについてだが、死罪になったとき、寺への回向(えこう)料が、その7両2分だったからだという。つまり死罪になるよりは、相手の男に、同額のお金を払って、許してもらおうというわけである。それで7両2分になった(同書)。
が、浮気にせよ、不倫にせよ、それがバレたとき、夫や妻に与えるショックには、相当なものがある。が、何よりも恐ろしいのは、その時点で、夫婦の信頼関係が、崩壊するということ。たとえば、こんな話がある。あなたは、この話を聞いて、どうその夫婦を判断するだろうか。
++++++++++
ある男性は、妻に内緒で、職場の女性と不倫関係を楽しんでいた。最初の妻を、「妻A」とする。が、そのうち、女性のほうが、本気になってしまった。やがて男性のほうも、本気になってしまった。そこで女性のほうが、男性に、こう言って迫った。
「奥さんと別れて、私と結婚して」と。男性のほうも、「妻と別れるから、結婚しよう」と言った。
こうしてその男性は、妻と離婚。そしてその不倫相手と、再婚。その新しい妻を、ここでは、「妻B」とする。
一見、その男性と女性については、めでたしめでたし……ということになるが、しかし本当にそうだろうか?
その女性は、こうして「妻」の座を自分のものにしたが、実は、今度は、自分がその妻の座から、引きずりおろされるハメになった。
浮気性の男は、どこまでも浮気性。今度は同じ職場の、また別の女性と、不倫関係をもつようになってしまった。
この時点で、妻Bには、夫を責める資格は、あるのか。それともないのか。まさか「どうして職場の女性と、浮気なんかするのよ!」と、夫に怒るわけにもいかない。が、それ以前から、妻Bは、家にいても、不安であならなかった。夫の浮気性というか、そうした性癖を、よく知っていたからである。
で、やがてその男性は、今度は、その女性と、本気になってしまった。そしてここで再び、同じことを繰りかえす。妻Bと離婚して、その不倫相手と結婚した。その女性を、「妻C」としておく。
……というケースは、多い。一般的に、マザコンタイプの男性ほど、浮気をしやすいと言われている。マザコンであるがゆえに、理想の女性(=マドンナ)を求めつづける、イコール、自分の妻では、満足できないためと考えられている。
で、その男性がそうであったかどうかは知らないが、その男性は、妻Aから、妻B、妻Cへと、3人の妻をもったことになる。で、こういうケースのばあい、はたして夫婦の間に、信頼関係を築くことができるのだろうか……というのが、ここでの問題である。
浮気が浮気の範囲で、不倫が不倫の範囲で収まっている間は、まだよい。恋愛関係になっても、その範囲を超えない間は、まだよい。それが原因で、離婚、さらには、再婚となると、しかし、そうはいかない。
夫のほうは、それでよいとしても、妻Cにしてみれば、この先ずっと、「今度は、いつ自分が裏切られるのか」と、ハラハラしなければならない。また裏切られても、文句をいうことすらできない。となると、何のために結婚したのかということにも、なってしまう。
話は、もう一度脱線するが、恋愛感情にも、寿命があるということが、最近の研究でわかってきた。それについて書いた原稿を、もう一度、ここに掲載する。
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●恋愛の寿命
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心ときめかす、恋心。しかしその恋心
にも、寿命がある。
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その人のことを思うと、心がときめく。すべてが華やいで見える。体まで宙に浮いたようになる……。恋をすると、人は、そうなる。
こうした現象は、脳内で分泌される、フェニルエチルアミンという物質の作用によるものだということが、最近の研究で、わかってきた。恋をしたときに感ずる、あの身を焦がすような甘い陶酔感は、そのフェニルエチルアミンの作用によるもの、というのだ。
その陶酔感は、麻薬を得たときの陶酔感に似ているという人もいる。(私自身は、もちろん、麻薬の作用がどういうものか、知らない。)しかしこのフェニルエチルアミン効果の寿命は、それほど長くはない。短い。
ふつう脳内で何らかの物質が分泌されると、フィードバックといって、しばらくすると今度は、それを打ち消す物質によって、その効果は、打ち消される。この打ち消す物質が分泌されるからこそ、脳の中は、しばらくすると、再び、カラの状態になる。体が、その物質に慣れてしまったら、つぎから、その物質が分泌されても、その効果が、なくなってしまうからである。
しかしフェニルエチルアミンは、それが分泌されても、それを打ち消す物質は、分泌されない。脳内に残ったままの状態になる。こうしてフェニルエチルアミン効果は、比較的長くつづくことになる。が、いつまでも、つづくというわけではない。やがて脳のほうが、それに慣れてしまう。
つまりフェニルエチルアミン効果は、「比較的長くつづく」といっても、限度がある。もって、3年とか4年。あるいはそれ以下。当初の恋愛の度合にもよる。「死んでも悔いはない」というような、猛烈な恋愛であれば、4年くらい(?)。適当に、好きになったというような恋愛であれば、半年くらい(?)。
その3年から4年が、恋愛の寿命ということにもなる。言いかえると、どんな熱烈な恋愛をしても、3年から4年もすると、心のときめきも消え、あれほど華やいで見えた世界も、やがて色あせて見えるようになる。もちろん、ウキウキした気分も消える。
……と考えると、では、結婚生活も、4年程度が限度かというと、それは正しくない。恋愛と、結婚生活は、別。その4年の間に、その2人は、熱烈な恋愛を繰りかえし、つぎのステップへ進むための、心の準備を始める。
それが出産であり、育児ということになる。一連のこうした変化をとおして、今度は、別の新しい人間関係をつくりあげていく。それが結婚生活へとつながっていく。
が、中には、そのフェニルエチルアミン効果による、甘い陶酔感が忘れられず、繰りかえし、恋愛関係を結ぶ人もいる。たとえばそれが原因かどうかは別にして、よく4~5年ごとに、離婚、再婚を繰りかえす人がいる。
そういう人は、相手をかえることによって、そのつど甘い陶酔感を楽しんでいるのかもしれない。
ただここで注意しなければならないのは、このフェニルエチルアミンには、先にも書いたように麻薬性があるということ。繰りかえせば繰りかえすほど、その効果は鈍麻し、ますますはげしい刺激を求めるようになる。
男と女の関係について言うなら、ますますはげしい恋愛をもとめて、さ迷い歩くということにもなりかねない。あるいは、体がそれに慣れるまでの期間が、より短くなる。はじめての恋のときは、フェニルエチルアミン効果が、4年間、つづいたとしても、2度目の恋のときは、1年間。3度目の恋のときは、数か月……というようになる。
まあ、そんなわけで、恋愛は、ふつうは、若いときの一時期だけで、じゅうぶん。しかも、はげしければはげしいほど、よい。二度も、三度も、恋愛を経験する必要はない。回を重ねれ重ねるほど、恋も色あせてくる。
が、中には、「死ぬまで恋を繰りかえしたい」と言う人もいるが、そういう人は、このフェニルエチルアミン中毒にかかっている人とも考えられる。あるいはフェニルエチルアミンという麻薬様の物質の虜(とりこ)になっているだけ。
このことを私のワイフに説明すると、ワイフは、こう言った。
「私なんか、半年くらいで、フェニルエチルアミン効果は消えたわ」と。私はそれを横で聞きながら、「フ~ン、そんなものか」と思った。さて、みなさんは、どうか?
(はやし浩司 恋愛 恋愛の寿命 フェニルエチルアミン ドーパミン効果 麻薬性)
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つまり、恋愛にも寿命があるということ。今風に言えば、賞味期限があるということ。しかもそれを繰りかえせば繰りかえすほど、賞味期間は、短くなる。
だから……というわけでもないが、不倫は不倫として、あるいは浮気は浮気として、さらにそれから恋愛感情が生まれたとしても、決して、急いで結論を出してはいけない。どうせ、冷める。時間がくれば、冷める。人間の脳ミソというのは、もともと、そうできている。
知人のケースでいうなら、こうした不倫は、静かに見守るしかない。へたに反対すれば、恋心というのは、かえって燃えあがってしまう。しかし時間がくれば、冷める。長くても、それは4年以内。だから私は、こう言った。「放っておけばいい。そのうち、熱も冷める。バレたときは、奥さんにぶん殴られればいい。それですむ」と。
しかし不倫や浮気ができる人は、それなりに幸福な人かもしれない。いや、不幸な人なのかもしれない。よくわからないが、私の知らない世界を、そういう人たちは、知っている。ただこういうことは言える。
「真剣にその人を愛してしまい、命がけということになったら、それは、もう、不倫でも、浮気でもない」と。夫や妻の間で、それこそ死ぬほどの苦しみを味わうことになるかもしれないが、そのときは、そうした恋愛を、だれも責めることはできない。人間が人間であるがゆえの、恋愛ということになる。
どうせ不倫や浮気をするなら、そういう不倫や浮気をすればよい。そうでないなら、夫婦の信頼関係を守るためにも、不倫や浮気など、しないほうがよい。いわんやセックスだけの関係ほど、味気なく、つまらないものはない。(……と思う。)それで得るものより、失うもののほうが、はるかに多い。(……と思う。)
いらぬお節介だが……。
昔、今東光という作家は、私が、東京の築地にある、がんセンターを見舞うと、こう話してくれた。
「所詮、性(セックス)なんて、無だよ」と。私も、そう思う。しかしその「無」にどうして人は、こうまで振り回されるのだろう。
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知人の息子が、不倫をしているらしい。知人
から、どうすれば、やめさせることができる
かと、相談というか、そんな話が伝わってき
た。
まだ息子の妻(嫁)は、気づいていないよう
だが、心配でならない、と。
++++++++++++++++++++
恋愛をしたからといって、性的関係があるとはかぎらない。不倫、つまり性的関係をもったからといって、恋愛感情があるとは、かぎらない。
その境目は、どこにあるか?、……という議論は、いくらしても、あまり意味がない。不倫関係が恋愛関係になることも、反対に、恋愛関係が不倫関係になることは、いくらである。つまり男と女の関係は、いつも流動的。
ところで、江戸時代から、戦前にかけて、日本には、姦通(かんつう)罪という恐ろしい刑罰があったそうだ。(江戸時代には、「不義密通罪」と呼ばれていた。)
浮気がバレたばあい、男のほうが町人のばあいには、まちがいなく死罪。(死罪だぞ!)また女のほうも、ただではすまない。浮気がバレれば、「吉原に身を売られ、数年間、苦界に身を沈めねばならなかった」そうだ(「日本史おもしろBOOK」PHP)。
そのため、女の夫のほうも、仮に自分の妻が浮気をしても、簡単には、訴え出ることができなかったそうだ。そのため、内々に、相手の男と、示談ですますことが多かったという。
その相場は、「7両2分」。江戸中期で、1両で1石の米を買えたというから、1両を約6万円として計算すると、7両2分というと、約43万円ということになる。
「43万円かあ……」と思ってみたり、「43万円ねえ……」と思ってみたりする。
で、どうして7両2分になったかについてだが、死罪になったとき、寺への回向(えこう)料が、その7両2分だったからだという。つまり死罪になるよりは、相手の男に、同額のお金を払って、許してもらおうというわけである。それで7両2分になった(同書)。
が、浮気にせよ、不倫にせよ、それがバレたとき、夫や妻に与えるショックには、相当なものがある。が、何よりも恐ろしいのは、その時点で、夫婦の信頼関係が、崩壊するということ。たとえば、こんな話がある。あなたは、この話を聞いて、どうその夫婦を判断するだろうか。
++++++++++
ある男性は、妻に内緒で、職場の女性と不倫関係を楽しんでいた。最初の妻を、「妻A」とする。が、そのうち、女性のほうが、本気になってしまった。やがて男性のほうも、本気になってしまった。そこで女性のほうが、男性に、こう言って迫った。
「奥さんと別れて、私と結婚して」と。男性のほうも、「妻と別れるから、結婚しよう」と言った。
こうしてその男性は、妻と離婚。そしてその不倫相手と、再婚。その新しい妻を、ここでは、「妻B」とする。
一見、その男性と女性については、めでたしめでたし……ということになるが、しかし本当にそうだろうか?
その女性は、こうして「妻」の座を自分のものにしたが、実は、今度は、自分がその妻の座から、引きずりおろされるハメになった。
浮気性の男は、どこまでも浮気性。今度は同じ職場の、また別の女性と、不倫関係をもつようになってしまった。
この時点で、妻Bには、夫を責める資格は、あるのか。それともないのか。まさか「どうして職場の女性と、浮気なんかするのよ!」と、夫に怒るわけにもいかない。が、それ以前から、妻Bは、家にいても、不安であならなかった。夫の浮気性というか、そうした性癖を、よく知っていたからである。
で、やがてその男性は、今度は、その女性と、本気になってしまった。そしてここで再び、同じことを繰りかえす。妻Bと離婚して、その不倫相手と結婚した。その女性を、「妻C」としておく。
……というケースは、多い。一般的に、マザコンタイプの男性ほど、浮気をしやすいと言われている。マザコンであるがゆえに、理想の女性(=マドンナ)を求めつづける、イコール、自分の妻では、満足できないためと考えられている。
で、その男性がそうであったかどうかは知らないが、その男性は、妻Aから、妻B、妻Cへと、3人の妻をもったことになる。で、こういうケースのばあい、はたして夫婦の間に、信頼関係を築くことができるのだろうか……というのが、ここでの問題である。
浮気が浮気の範囲で、不倫が不倫の範囲で収まっている間は、まだよい。恋愛関係になっても、その範囲を超えない間は、まだよい。それが原因で、離婚、さらには、再婚となると、しかし、そうはいかない。
夫のほうは、それでよいとしても、妻Cにしてみれば、この先ずっと、「今度は、いつ自分が裏切られるのか」と、ハラハラしなければならない。また裏切られても、文句をいうことすらできない。となると、何のために結婚したのかということにも、なってしまう。
話は、もう一度脱線するが、恋愛感情にも、寿命があるということが、最近の研究でわかってきた。それについて書いた原稿を、もう一度、ここに掲載する。
+++++++++++++++++++++
●恋愛の寿命
+++++++++++++++++
心ときめかす、恋心。しかしその恋心
にも、寿命がある。
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その人のことを思うと、心がときめく。すべてが華やいで見える。体まで宙に浮いたようになる……。恋をすると、人は、そうなる。
こうした現象は、脳内で分泌される、フェニルエチルアミンという物質の作用によるものだということが、最近の研究で、わかってきた。恋をしたときに感ずる、あの身を焦がすような甘い陶酔感は、そのフェニルエチルアミンの作用によるもの、というのだ。
その陶酔感は、麻薬を得たときの陶酔感に似ているという人もいる。(私自身は、もちろん、麻薬の作用がどういうものか、知らない。)しかしこのフェニルエチルアミン効果の寿命は、それほど長くはない。短い。
ふつう脳内で何らかの物質が分泌されると、フィードバックといって、しばらくすると今度は、それを打ち消す物質によって、その効果は、打ち消される。この打ち消す物質が分泌されるからこそ、脳の中は、しばらくすると、再び、カラの状態になる。体が、その物質に慣れてしまったら、つぎから、その物質が分泌されても、その効果が、なくなってしまうからである。
しかしフェニルエチルアミンは、それが分泌されても、それを打ち消す物質は、分泌されない。脳内に残ったままの状態になる。こうしてフェニルエチルアミン効果は、比較的長くつづくことになる。が、いつまでも、つづくというわけではない。やがて脳のほうが、それに慣れてしまう。
つまりフェニルエチルアミン効果は、「比較的長くつづく」といっても、限度がある。もって、3年とか4年。あるいはそれ以下。当初の恋愛の度合にもよる。「死んでも悔いはない」というような、猛烈な恋愛であれば、4年くらい(?)。適当に、好きになったというような恋愛であれば、半年くらい(?)。
その3年から4年が、恋愛の寿命ということにもなる。言いかえると、どんな熱烈な恋愛をしても、3年から4年もすると、心のときめきも消え、あれほど華やいで見えた世界も、やがて色あせて見えるようになる。もちろん、ウキウキした気分も消える。
……と考えると、では、結婚生活も、4年程度が限度かというと、それは正しくない。恋愛と、結婚生活は、別。その4年の間に、その2人は、熱烈な恋愛を繰りかえし、つぎのステップへ進むための、心の準備を始める。
それが出産であり、育児ということになる。一連のこうした変化をとおして、今度は、別の新しい人間関係をつくりあげていく。それが結婚生活へとつながっていく。
が、中には、そのフェニルエチルアミン効果による、甘い陶酔感が忘れられず、繰りかえし、恋愛関係を結ぶ人もいる。たとえばそれが原因かどうかは別にして、よく4~5年ごとに、離婚、再婚を繰りかえす人がいる。
そういう人は、相手をかえることによって、そのつど甘い陶酔感を楽しんでいるのかもしれない。
ただここで注意しなければならないのは、このフェニルエチルアミンには、先にも書いたように麻薬性があるということ。繰りかえせば繰りかえすほど、その効果は鈍麻し、ますますはげしい刺激を求めるようになる。
男と女の関係について言うなら、ますますはげしい恋愛をもとめて、さ迷い歩くということにもなりかねない。あるいは、体がそれに慣れるまでの期間が、より短くなる。はじめての恋のときは、フェニルエチルアミン効果が、4年間、つづいたとしても、2度目の恋のときは、1年間。3度目の恋のときは、数か月……というようになる。
まあ、そんなわけで、恋愛は、ふつうは、若いときの一時期だけで、じゅうぶん。しかも、はげしければはげしいほど、よい。二度も、三度も、恋愛を経験する必要はない。回を重ねれ重ねるほど、恋も色あせてくる。
が、中には、「死ぬまで恋を繰りかえしたい」と言う人もいるが、そういう人は、このフェニルエチルアミン中毒にかかっている人とも考えられる。あるいはフェニルエチルアミンという麻薬様の物質の虜(とりこ)になっているだけ。
このことを私のワイフに説明すると、ワイフは、こう言った。
「私なんか、半年くらいで、フェニルエチルアミン効果は消えたわ」と。私はそれを横で聞きながら、「フ~ン、そんなものか」と思った。さて、みなさんは、どうか?
(はやし浩司 恋愛 恋愛の寿命 フェニルエチルアミン ドーパミン効果 麻薬性)
+++++++++++++++++++
つまり、恋愛にも寿命があるということ。今風に言えば、賞味期限があるということ。しかもそれを繰りかえせば繰りかえすほど、賞味期間は、短くなる。
だから……というわけでもないが、不倫は不倫として、あるいは浮気は浮気として、さらにそれから恋愛感情が生まれたとしても、決して、急いで結論を出してはいけない。どうせ、冷める。時間がくれば、冷める。人間の脳ミソというのは、もともと、そうできている。
知人のケースでいうなら、こうした不倫は、静かに見守るしかない。へたに反対すれば、恋心というのは、かえって燃えあがってしまう。しかし時間がくれば、冷める。長くても、それは4年以内。だから私は、こう言った。「放っておけばいい。そのうち、熱も冷める。バレたときは、奥さんにぶん殴られればいい。それですむ」と。
しかし不倫や浮気ができる人は、それなりに幸福な人かもしれない。いや、不幸な人なのかもしれない。よくわからないが、私の知らない世界を、そういう人たちは、知っている。ただこういうことは言える。
「真剣にその人を愛してしまい、命がけということになったら、それは、もう、不倫でも、浮気でもない」と。夫や妻の間で、それこそ死ぬほどの苦しみを味わうことになるかもしれないが、そのときは、そうした恋愛を、だれも責めることはできない。人間が人間であるがゆえの、恋愛ということになる。
どうせ不倫や浮気をするなら、そういう不倫や浮気をすればよい。そうでないなら、夫婦の信頼関係を守るためにも、不倫や浮気など、しないほうがよい。いわんやセックスだけの関係ほど、味気なく、つまらないものはない。(……と思う。)それで得るものより、失うもののほうが、はるかに多い。(……と思う。)
いらぬお節介だが……。
昔、今東光という作家は、私が、東京の築地にある、がんセンターを見舞うと、こう話してくれた。
「所詮、性(セックス)なんて、無だよ」と。私も、そう思う。しかしその「無」にどうして人は、こうまで振り回されるのだろう。