第2章(14)(No.25)
「ママさん、おおきに。首が薄皮一枚でつながったわ。みんなのおかげや。」
「何言うてるんや。水臭いこと言わんとき。あんたがこつこつ積み上げた信頼が一気に集まりサポートしただけや。うちこそあんたに感謝や。
ええオトコ見せてみせてもろたわ。そや、あの若いもんとこ行って、みんなで京美人と乾杯しておいで。あのオトコ労ったらな、浦瀬はんのオトコがすたるで。
はよ行き。由布子ちゃんとこ電話しといたるから。」
浦瀬と岡崎が『oui』に着くと、顔をくしゃくしゃにした山下とおなじくらいにくしゃくしゃにした由布子がシャンパーニュと共に待っていた。
「浦瀬はん、堪忍どっせ。うち知らんこととは言え。山下はんからみんな聞きました。うち、どないしたらええんか分からんようになってたら、
山下はんが、浦瀬はんは諦めへんと言うてはったんを信じましょ、言うて二人でお祈りしてましてん。ほんなら、GINKOのママさん電話くれはって、
薄皮一枚つながった、言うて、ほんで、浦瀬はんともうお一方向かわれるから、シャンパーニュ用意しといたらええやといわれましたんどす。
うち、山下はんと思わず万歳してしもた。お店のお客はん笑ろてはったけど、かまへんのどす。山下はん、お若いのにええお人どすな?おなごはこんな人好きにならなあきまへんな。」
「由布子はん、おれにもしゃべらしてーな。まず、山下、岡崎、おおきにや。今宵のことは忘れへん。二人になんかあったら、飛んでいくさかい、
今後ともよろしゅうや。由布子はん、今夜のことはいつか起きることやってん。しやから、あんたはなんにも責任感じたらあかんで。これはきっちり、頼んます。そやそや、由布子はんが持たせてくれたシャンパーニュが決め手になったんや。あれなしにはどないもしようがなく、今頃返り討ちや。あれなんちゅうの?」
「はい、ここにご用意させてもろてますえ。クルグ85年ものビンテージ。乾杯どすな?こちらのお方は?」
「はい、岡崎といいます。浦瀬の同僚で、いつもこいつの尻拭いしてます。それでもいいやつなんで、こんなやつを飛ばす会社の気持ちが分かりません。
京人形だとママさんに言われてましたが、本当ですね。すみません。見とれていてご挨拶遅れてしまいましたが、それじゃ、みんなで、浦瀬奪還を祝して、乾杯。」
みんな一気で飲んでしまった。
勝利の美酒ではなかったが、苦くもなく、信頼の糸がつながった喜びの味だった。
初めてのシャンパーニュに酔ってきた山下が、美人と話すことができただけでも役得だったといい始めた頃、淳之介は東京の騒ぎを知らずに、シンガポールチャンギ国際空港に着いた。
第2章完
2015年1月10日
「ママさん、おおきに。首が薄皮一枚でつながったわ。みんなのおかげや。」
「何言うてるんや。水臭いこと言わんとき。あんたがこつこつ積み上げた信頼が一気に集まりサポートしただけや。うちこそあんたに感謝や。
ええオトコ見せてみせてもろたわ。そや、あの若いもんとこ行って、みんなで京美人と乾杯しておいで。あのオトコ労ったらな、浦瀬はんのオトコがすたるで。
はよ行き。由布子ちゃんとこ電話しといたるから。」
浦瀬と岡崎が『oui』に着くと、顔をくしゃくしゃにした山下とおなじくらいにくしゃくしゃにした由布子がシャンパーニュと共に待っていた。
「浦瀬はん、堪忍どっせ。うち知らんこととは言え。山下はんからみんな聞きました。うち、どないしたらええんか分からんようになってたら、
山下はんが、浦瀬はんは諦めへんと言うてはったんを信じましょ、言うて二人でお祈りしてましてん。ほんなら、GINKOのママさん電話くれはって、
薄皮一枚つながった、言うて、ほんで、浦瀬はんともうお一方向かわれるから、シャンパーニュ用意しといたらええやといわれましたんどす。
うち、山下はんと思わず万歳してしもた。お店のお客はん笑ろてはったけど、かまへんのどす。山下はん、お若いのにええお人どすな?おなごはこんな人好きにならなあきまへんな。」
「由布子はん、おれにもしゃべらしてーな。まず、山下、岡崎、おおきにや。今宵のことは忘れへん。二人になんかあったら、飛んでいくさかい、
今後ともよろしゅうや。由布子はん、今夜のことはいつか起きることやってん。しやから、あんたはなんにも責任感じたらあかんで。これはきっちり、頼んます。そやそや、由布子はんが持たせてくれたシャンパーニュが決め手になったんや。あれなしにはどないもしようがなく、今頃返り討ちや。あれなんちゅうの?」
「はい、ここにご用意させてもろてますえ。クルグ85年ものビンテージ。乾杯どすな?こちらのお方は?」
「はい、岡崎といいます。浦瀬の同僚で、いつもこいつの尻拭いしてます。それでもいいやつなんで、こんなやつを飛ばす会社の気持ちが分かりません。
京人形だとママさんに言われてましたが、本当ですね。すみません。見とれていてご挨拶遅れてしまいましたが、それじゃ、みんなで、浦瀬奪還を祝して、乾杯。」
みんな一気で飲んでしまった。
勝利の美酒ではなかったが、苦くもなく、信頼の糸がつながった喜びの味だった。
初めてのシャンパーニュに酔ってきた山下が、美人と話すことができただけでも役得だったといい始めた頃、淳之介は東京の騒ぎを知らずに、シンガポールチャンギ国際空港に着いた。
第2章完
2015年1月10日