-丸の内 外資系ホテル 西波グループの命運-
吉之助と霞は先にきていた。
星が中田を伴って現れたので吉之助は驚いた表情だ。
「いや、中田さん、お久しぶりです。鹿児島、沖縄ではお世話になりました。今日はまたどうしてこちらに?」
中田が吉之助を少しはずし、霞に話しかけた。
「霞さん、元気そうだね。いや、竹内さんのお礼方々那美さんと澤村さんのところに寄って来た。あなたに会えるということでくっついてきてしまったんだよ。」
中田はなるべく自然を装う。
食事を先にして、西波の慰労会と昨夜の那美とのワイン談義で盛り上がった。
「星さん、私が社長に就任したことで内外色々な動きが始まってしまいました。父も味方も多いが、敵も多いと言っていました。一波乱ありそうです。シンガポールからの情報では、どさくさにまぎれて、どうも、西波グループの分裂を画策している外部勢力が居るようなんです。そこで相談です。どのような方向が考えられるでしょうか?」
「吉之助さんは、どのように打開していきたいと考えていますか?」
「星さんが言われるように、社長は解決の妙案を知っている、と言うわけにはいきません。しかし、方向性としてグループ一丸となることを優先して私流の改革はその後にするべきだと思います。」
「ではどのようにグループ一丸とするのですか?」
「何か危機感を共有していく中で組織をまとめたいと思っています。たとえば、親父の本当の理由を公表する。そうすることで今まで親父についてきてくれた人たちとは一丸になれそうに思います。」
「しかしそれでは組織は動きませんね?」
「何か足りませんか?」
「西波氏への忠誠と言う意味で結束はできます。それでは、社長としての吉之助さんは浮いてしまいます。まず吉之助さんはどのような立場をお考えですか?」
「私は西波グループの総帥として、グループの社員、その家族、株主、取引先、お客様そして利害関係者をまとめて、父からの継承をスムースに図る立場にあります。」
「それは、どんな立場ですか?」
「きわめて公です。確かに、父から子という私的には見えますが、組織決定の上で進めているわけですから、公です。」
「とすると、公を何かで現す必要がありますね?」
「何か哲学のようなことですか?」
「そうとも言えますが?」
「人生会社で言うミッションのようなことですか?」
「それは、吉之助さん個人のもので組織では共有できるものではありません。」
「そうですね。今は法人会社のことですから。」
「いや、違います。そこで法人会社のほうへどっぷり行ってしまうと、社長は、吉之助さんでなくてよくなります。法人会社は誰でもいいのです。ここが法人会社の落とし穴です。」
「そうなると、経済の利ではなく、道のようなものですね。」
吉之助は考え込んでしまった。ロジックで考えることを止めてから初めての試練だ。
2011年4月28日<パソコンネット復活できました。>
吉之助と霞は先にきていた。
星が中田を伴って現れたので吉之助は驚いた表情だ。
「いや、中田さん、お久しぶりです。鹿児島、沖縄ではお世話になりました。今日はまたどうしてこちらに?」
中田が吉之助を少しはずし、霞に話しかけた。
「霞さん、元気そうだね。いや、竹内さんのお礼方々那美さんと澤村さんのところに寄って来た。あなたに会えるということでくっついてきてしまったんだよ。」
中田はなるべく自然を装う。
食事を先にして、西波の慰労会と昨夜の那美とのワイン談義で盛り上がった。
「星さん、私が社長に就任したことで内外色々な動きが始まってしまいました。父も味方も多いが、敵も多いと言っていました。一波乱ありそうです。シンガポールからの情報では、どさくさにまぎれて、どうも、西波グループの分裂を画策している外部勢力が居るようなんです。そこで相談です。どのような方向が考えられるでしょうか?」
「吉之助さんは、どのように打開していきたいと考えていますか?」
「星さんが言われるように、社長は解決の妙案を知っている、と言うわけにはいきません。しかし、方向性としてグループ一丸となることを優先して私流の改革はその後にするべきだと思います。」
「ではどのようにグループ一丸とするのですか?」
「何か危機感を共有していく中で組織をまとめたいと思っています。たとえば、親父の本当の理由を公表する。そうすることで今まで親父についてきてくれた人たちとは一丸になれそうに思います。」
「しかしそれでは組織は動きませんね?」
「何か足りませんか?」
「西波氏への忠誠と言う意味で結束はできます。それでは、社長としての吉之助さんは浮いてしまいます。まず吉之助さんはどのような立場をお考えですか?」
「私は西波グループの総帥として、グループの社員、その家族、株主、取引先、お客様そして利害関係者をまとめて、父からの継承をスムースに図る立場にあります。」
「それは、どんな立場ですか?」
「きわめて公です。確かに、父から子という私的には見えますが、組織決定の上で進めているわけですから、公です。」
「とすると、公を何かで現す必要がありますね?」
「何か哲学のようなことですか?」
「そうとも言えますが?」
「人生会社で言うミッションのようなことですか?」
「それは、吉之助さん個人のもので組織では共有できるものではありません。」
「そうですね。今は法人会社のことですから。」
「いや、違います。そこで法人会社のほうへどっぷり行ってしまうと、社長は、吉之助さんでなくてよくなります。法人会社は誰でもいいのです。ここが法人会社の落とし穴です。」
「そうなると、経済の利ではなく、道のようなものですね。」
吉之助は考え込んでしまった。ロジックで考えることを止めてから初めての試練だ。
2011年4月28日<パソコンネット復活できました。>