シンガポール&美浜 発信 文左衛門の部屋

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コラム★心の梅雨を飛ばす気

「男と女」 第2巻 第6章 翔動 -丸の内 2&3ー

2012年04月30日 14時07分21秒 | 小説
-丸の内(2) 江藤カンパニー 勝崎デスク ハッカー-
 
朝の光が差し込む窓に向って勝崎は考え事をしているようだった。

「勝崎さん」

 不意に理恵に声を掛けられた。

「あ、山岡社長」

「どうかしましたか?」

「公募なんですが、殺到しているのはいいのですが一部の申請に何か作為を感じる文章があるパターンで頻繁に見かけられるんです。」

「社内システムのセキュリティーと話してみた?」

「まだです。今は私の個人的感覚と言うやつで彼らに論理的に説明できるところまで到達していないのです。」

「じゃ、CIOにだけ話したほうがいいわよ。その何となくと言うのはあたるから。色々と問いただすようだと私の指示と言っていいです。」

「直ぐに連絡します。」

 勝崎の電話が終わるまで待っていて、

「そのパターンは人生会社を浮き上がらせる文章ではない?」

「え、よくご存知ですね。」

「それはよく使われる手なの。本当の発信人は自分のが書き換えられているとは知らないわよ。こちらのファックスから相手のファックスに送ってから、電話して、またファックスから直接送ってもらうのが安全だわ。恐らくそのアドレスは盗まれているの。恐らく。」

「早速、思い当たるところ何箇所にトライしてご報告します。」

 電話が鳴った。

「山岡社長、会長からです。」

「勝崎さんのところにいるの?こちらに来てくれるかな。」

「会長室へ行くので結果は会長室へ電話頂戴。」

「わかりました。」


-丸の内(3) 江藤カンパニー 会長室 完全勝利-

「勝崎さんのところでサイバーアタックの可能性を見つけたんだね。」

「まだ確定していませんが症状を見ると、以前シンガポールで経験したときに似ていたので、現在ファックスと電話で本人確認させています。」

「それに関して文左衛門さんから知らせが来ているよ。あのラッフルズのパーティにもぐりこんでもらったとき、彼の昔の悪いほうの知り合いを見かけたので、追跡しているとある人物のところに近づいた。それはグレイスの過去のライバルだ。グレイスは、CEOに選出される前にやめたけれど、そのポジションをグレイスと争って負けたあいつだ。」

「ジョン?」

「そうだ。彼が後ろで引いていたんだ。文佐衛門さんは、過去の件で知り合いのFBIのサイバー関係者に問い合わせそのリストの中にジョンが使っているやつがいるかどうか調べた。その結果、彼がいたのでおとりを使ってその男とチームをサイバー上でおびき出し逮捕した。いずれも秘密裏にしているが昔のよしみで文佐衛門さんには連絡をくれた。特別の方法でその男が仕掛けた元の本来の公募者のリストと情報を文佐衛門さんのところに届けてくれるとのことだ。このことは勝崎さん、ウチのCIOにも言わないで欲しいと言うのが向こうの条件だ。」

「わかりました。シンガポールサイドで調べてもらうことにしてウチは手を引かせるわ。

 勝崎さんには何かで悟ってもらい納得してもらうわ。例えばグレイスマジックとかね。」

「了解。これで、ジョンの野望も砕けるだろう。グレイスに知らせても報復はしないけれどジョンの交わりを絶つ方向に動くのでこの方面からの攻撃はない。江藤カンパニーに関しては後味は悪いがパーフェクト ウィンだ。」

「もっといい形で終わりたかったわ。みんなあんなに一生懸命やってくれたのに。何か晴れやかな気持ちになれることをしましょう。後味の悪さは私たちだけの心の中に仕舞っておいて。」

「沖縄のコールセンター研修にするか?」

「短くて忙しいかもしれないけれどそれがいいわね。早速手配させます。会長から全員に告知してください。」

 電話が鳴った。

「あ、勝崎さん、どうだった。本人確認は取れたけれど本人はそんな内容を書いていない。OKそれで打ち切りましょう。え、詳しくは色々あって言えないの。シンガポールに振ってグレイスマジックをかけてもらうことになったの。CIOにもそう言って。変な幕切れだけれど。それで会長が了承しているので。」

「ひろみさん、会長室に来てくれる。」

 ひろみがあらわれた。

「ひろみさん、今我々のパーフェクトウィンが色々な情報網を通じて確認できたの。あんなにがんばった割にはあっけない幕切れなので、忙しい研修になるけれど、沖縄コールセンターへ全員で行くことになったの。会長がもう直ぐそのことを告知するから、麻由美さんを使って色々な手配や中田さんにも知らせて。お願い。」

「え、勝利したんですね。やっと終わったか。早速手配にかかります。麻由美さん喜ぶだろうな。」

 ひろみが出て行ってから

「比嘉麻由美さんのご両親についでに会ってこようと思います。シンガポール勤務の可能性もありますので。中田さんを通して趣旨をお話しておいたほうが向こうでの協力者を増やすことにもなりますから。」

「そうだね。よろしく頼む。ところで、我々も沖縄が終わったら休むか。」

「いいえ、でも来月、ワイナリーのボブが来る頃吉之助さんの披露パーティがあります。その時、グレイスが京都でブレーンストーミングをやりたいと言っていたので。休みではありませんが息抜きはできます。それでどうですか?二人で休むわけには行きません。」

「そうだね。そうするか。今日のそのつづきは、『クール ウエイブ』で。」

「じゃ、私は青山の病院経由で伺います。麻里さんがもう直ぐ退院なので。」

「それはよかった。だから、勝崎さん冴えてきたんだ、一段と。」

2012年4月30日
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ある日のシンガポールの街の風景 パート 167

2012年04月27日 09時01分53秒 | 写真

  

禅寺シリーズ第8弾です。

本堂に近づいています。

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白南風 86

2012年04月26日 10時04分22秒 | コラム
白南風(しらはえ)86

どこにも所属しない時間と題する本を読んだ。

所属していることでの安心感はある。

そこから定年退職などで、本人の意思に反して所属がなくなると、人生が一変する。

やっとそのときを待っていたと思ったら、回りからは、勝手にしてねと言われる。

何かをやろうと思ってもじわじわと、無所属の影響が出てくる。

自分が世界から不要とされているように感じてくる。

ところが最初から無所属であれば、そんなことはない。

そして所属することの不自由ささえ感じる。

無所属の時間の方が人生長くなるかもしれない昨今。

早めに無所属の疑似体験をしておいた方がいいかもしれない。

2012年4月26日
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ある日のシンガポールの街の風景 パート166

2012年04月25日 16時30分10秒 | 写真

  

禅寺シリーズ第7弾です。

真ん中の写真は大きな木彫りの魚です。

金色の塔も見えます。

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「男と女」 第2巻 第6章 翔動 -シンガポール(7)-

2012年04月24日 11時03分19秒 | 小説
-シンガポール(7) ラッフルズ ホテル プールバー 更なる戦い-

 ラッフルズホテルのビーチロード通りに面している正門から入り、左側に少し行ったところに別棟のプールバーがある。

 霞は目立たない服に着替えて待っていた。

「星さん、すみません。那美さん怒っていませんでした。」

「いや、少し興奮が残っていたようだけれど。」

「今日以外だったら一緒でもよかったのですけれど、」

「約束していたことだからいいです。ところで内部の情報はどうなっています。」

「画策していた勢力は分派もすべて活動を停止しているようです。ただ、これが撤退そして画策そのものを白紙にする動きにつながるのかの確認はまだ取れていません。」

「江藤カンパニーへの攻勢は今夜の提携でしばらく遠のくことになるのは間違いない。これだけの相手に向って何か仕掛けても割が合わない。まして未上場だ。シンガポールの上場もしばらく見送ることになった。」

「すると、また西波グループに戻ってくるのですね。」

「可能性としてはある。今度は財団に仕掛けてくることを文左衛門さんは懸念している。これは困ったことになる。組織の要がいるようでいないからどう引き締めていけばいいか、あるいは線引きがかなり難しい。文左衛門さんと相談してみる。それより、攻勢はアジアに広げていくレンタル会社に個別に小さく仕掛けられると思う。孫子の「交わりを伐て」。レンタル会社の経営陣はこの方面は完全に素人で善人が多い。本社とのつながりやシンガポールからの支援を遮断されたら一気に崩れる。それを防ぐ手立てを考える必要がある。たとえば、モバイルマネジメントチーム。経営経験があり、現場からの信頼の厚かった人達を各分野から募り、レンタル会社を定期的に指導して回る。一方、SWATチームのように、盗難、暴動、スト、政変、テロ、自然災害が起きたら、直ぐに出動する問題自己完結型のチームをいつでもスタンバイさせておくこと。多分日本より、シンガポールのほうが交通手段の豊富さで適していると思う。これらの費用は莫大になるのでレンタル会社の案は無駄使いだと言い国内の雇用を求めてくる連中の後ろにも画策の可能性がある。」

「なかなか一筋縄ではいかない長い戦いになるのですね。」

「そう考えてしまうように彼らは仕掛けてくる。こちらは、そうならないように色々手立てを考えることだ。ひとたび混乱が起きたらレンタル会社にかかる費用なんか吹っ飛ぶくらいのことになる。ここは踏ん張り時だ。相手も同じだ。こちらがいくらでも金をつぎ込んで強固にして見せると言う姿勢が大事だ。それから、吉之助さんはシンガポールに頻繁に来て金融の昔の連中とランチや食事を絶やさないこと。霞さんは、グラスルートでレンタル会社に何が起きているかの情報網を作り上げること。財団の仕事を隠れ蓑にして、アジアであればどこにでもいける。」

「アクセサリーの販売は続けることに役員会で決まったので自動的に私の身分も延長されました。つまり、行動の自由が得られました。」

「霞さんのお祝いの言葉をと思って、今日、お会いしましょうと言ったつもりが、秘密司令塔の内容になり申し訳ない。」

「いえ、それでいいんです。正直申し上げてどうしようかと悩んでいました。吉之助さんと結婚したので気持ちも切り替えなくてはなんて思っていましたが、今お聞きしているような状況の中で、少し距離をおいてなんてできません。これからも今まで以上によろしくお願いします。」

「こちらのほうから言わなければいけないことなんだけれど、霞さんに先に言わせてしまって申し訳ない。今頃なんだけれどテキーラでも飲みますか?」

「そうですね、私、お祝い続きではあっても、意外と飲んでいないんですよ。落ち着かなくて。」

 テキーラをボトルで持ってこさせた。

「テキーラでおめでとうは、何か変だね。」

「え、でも、以前のようで何か気持ちがしっかりしてきます。」

「これからのほうが大変だけれどみんなで繋がってやっていきましょう。」

「そうですね。なにか新生スター軍団みたいですね。」

「なつかしいね。スター軍団か。みんなどうしているかな?おっと、それより乾杯。」

「ありがとうございます。」

 その後も、詳細な相談を続け、ボトルを空けて散会した。

 ラッフルズの宿泊している部屋に戻った霞は文佐衛門にメールした。

「星さんから今後のことについてかなり厳しい情勢分析と更なる攻勢の可能性を指摘されました。日本に帰りましたら、至急事務所にて会談を予定されたくお手配お願いします。霞 フロム シンガポール」

 吉之助はまだ戻らないので、まんじりともしないで夜を過ごしていた。

2012年4月24日
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