-丸の内(2) 江藤カンパニー 勝崎デスク ハッカー-
朝の光が差し込む窓に向って勝崎は考え事をしているようだった。
「勝崎さん」
不意に理恵に声を掛けられた。
「あ、山岡社長」
「どうかしましたか?」
「公募なんですが、殺到しているのはいいのですが一部の申請に何か作為を感じる文章があるパターンで頻繁に見かけられるんです。」
「社内システムのセキュリティーと話してみた?」
「まだです。今は私の個人的感覚と言うやつで彼らに論理的に説明できるところまで到達していないのです。」
「じゃ、CIOにだけ話したほうがいいわよ。その何となくと言うのはあたるから。色々と問いただすようだと私の指示と言っていいです。」
「直ぐに連絡します。」
勝崎の電話が終わるまで待っていて、
「そのパターンは人生会社を浮き上がらせる文章ではない?」
「え、よくご存知ですね。」
「それはよく使われる手なの。本当の発信人は自分のが書き換えられているとは知らないわよ。こちらのファックスから相手のファックスに送ってから、電話して、またファックスから直接送ってもらうのが安全だわ。恐らくそのアドレスは盗まれているの。恐らく。」
「早速、思い当たるところ何箇所にトライしてご報告します。」
電話が鳴った。
「山岡社長、会長からです。」
「勝崎さんのところにいるの?こちらに来てくれるかな。」
「会長室へ行くので結果は会長室へ電話頂戴。」
「わかりました。」
-丸の内(3) 江藤カンパニー 会長室 完全勝利-
「勝崎さんのところでサイバーアタックの可能性を見つけたんだね。」
「まだ確定していませんが症状を見ると、以前シンガポールで経験したときに似ていたので、現在ファックスと電話で本人確認させています。」
「それに関して文左衛門さんから知らせが来ているよ。あのラッフルズのパーティにもぐりこんでもらったとき、彼の昔の悪いほうの知り合いを見かけたので、追跡しているとある人物のところに近づいた。それはグレイスの過去のライバルだ。グレイスは、CEOに選出される前にやめたけれど、そのポジションをグレイスと争って負けたあいつだ。」
「ジョン?」
「そうだ。彼が後ろで引いていたんだ。文佐衛門さんは、過去の件で知り合いのFBIのサイバー関係者に問い合わせそのリストの中にジョンが使っているやつがいるかどうか調べた。その結果、彼がいたのでおとりを使ってその男とチームをサイバー上でおびき出し逮捕した。いずれも秘密裏にしているが昔のよしみで文佐衛門さんには連絡をくれた。特別の方法でその男が仕掛けた元の本来の公募者のリストと情報を文佐衛門さんのところに届けてくれるとのことだ。このことは勝崎さん、ウチのCIOにも言わないで欲しいと言うのが向こうの条件だ。」
「わかりました。シンガポールサイドで調べてもらうことにしてウチは手を引かせるわ。
勝崎さんには何かで悟ってもらい納得してもらうわ。例えばグレイスマジックとかね。」
「了解。これで、ジョンの野望も砕けるだろう。グレイスに知らせても報復はしないけれどジョンの交わりを絶つ方向に動くのでこの方面からの攻撃はない。江藤カンパニーに関しては後味は悪いがパーフェクト ウィンだ。」
「もっといい形で終わりたかったわ。みんなあんなに一生懸命やってくれたのに。何か晴れやかな気持ちになれることをしましょう。後味の悪さは私たちだけの心の中に仕舞っておいて。」
「沖縄のコールセンター研修にするか?」
「短くて忙しいかもしれないけれどそれがいいわね。早速手配させます。会長から全員に告知してください。」
電話が鳴った。
「あ、勝崎さん、どうだった。本人確認は取れたけれど本人はそんな内容を書いていない。OKそれで打ち切りましょう。え、詳しくは色々あって言えないの。シンガポールに振ってグレイスマジックをかけてもらうことになったの。CIOにもそう言って。変な幕切れだけれど。それで会長が了承しているので。」
「ひろみさん、会長室に来てくれる。」
ひろみがあらわれた。
「ひろみさん、今我々のパーフェクトウィンが色々な情報網を通じて確認できたの。あんなにがんばった割にはあっけない幕切れなので、忙しい研修になるけれど、沖縄コールセンターへ全員で行くことになったの。会長がもう直ぐそのことを告知するから、麻由美さんを使って色々な手配や中田さんにも知らせて。お願い。」
「え、勝利したんですね。やっと終わったか。早速手配にかかります。麻由美さん喜ぶだろうな。」
ひろみが出て行ってから
「比嘉麻由美さんのご両親についでに会ってこようと思います。シンガポール勤務の可能性もありますので。中田さんを通して趣旨をお話しておいたほうが向こうでの協力者を増やすことにもなりますから。」
「そうだね。よろしく頼む。ところで、我々も沖縄が終わったら休むか。」
「いいえ、でも来月、ワイナリーのボブが来る頃吉之助さんの披露パーティがあります。その時、グレイスが京都でブレーンストーミングをやりたいと言っていたので。休みではありませんが息抜きはできます。それでどうですか?二人で休むわけには行きません。」
「そうだね。そうするか。今日のそのつづきは、『クール ウエイブ』で。」
「じゃ、私は青山の病院経由で伺います。麻里さんがもう直ぐ退院なので。」
「それはよかった。だから、勝崎さん冴えてきたんだ、一段と。」
2012年4月30日
朝の光が差し込む窓に向って勝崎は考え事をしているようだった。
「勝崎さん」
不意に理恵に声を掛けられた。
「あ、山岡社長」
「どうかしましたか?」
「公募なんですが、殺到しているのはいいのですが一部の申請に何か作為を感じる文章があるパターンで頻繁に見かけられるんです。」
「社内システムのセキュリティーと話してみた?」
「まだです。今は私の個人的感覚と言うやつで彼らに論理的に説明できるところまで到達していないのです。」
「じゃ、CIOにだけ話したほうがいいわよ。その何となくと言うのはあたるから。色々と問いただすようだと私の指示と言っていいです。」
「直ぐに連絡します。」
勝崎の電話が終わるまで待っていて、
「そのパターンは人生会社を浮き上がらせる文章ではない?」
「え、よくご存知ですね。」
「それはよく使われる手なの。本当の発信人は自分のが書き換えられているとは知らないわよ。こちらのファックスから相手のファックスに送ってから、電話して、またファックスから直接送ってもらうのが安全だわ。恐らくそのアドレスは盗まれているの。恐らく。」
「早速、思い当たるところ何箇所にトライしてご報告します。」
電話が鳴った。
「山岡社長、会長からです。」
「勝崎さんのところにいるの?こちらに来てくれるかな。」
「会長室へ行くので結果は会長室へ電話頂戴。」
「わかりました。」
-丸の内(3) 江藤カンパニー 会長室 完全勝利-
「勝崎さんのところでサイバーアタックの可能性を見つけたんだね。」
「まだ確定していませんが症状を見ると、以前シンガポールで経験したときに似ていたので、現在ファックスと電話で本人確認させています。」
「それに関して文左衛門さんから知らせが来ているよ。あのラッフルズのパーティにもぐりこんでもらったとき、彼の昔の悪いほうの知り合いを見かけたので、追跡しているとある人物のところに近づいた。それはグレイスの過去のライバルだ。グレイスは、CEOに選出される前にやめたけれど、そのポジションをグレイスと争って負けたあいつだ。」
「ジョン?」
「そうだ。彼が後ろで引いていたんだ。文佐衛門さんは、過去の件で知り合いのFBIのサイバー関係者に問い合わせそのリストの中にジョンが使っているやつがいるかどうか調べた。その結果、彼がいたのでおとりを使ってその男とチームをサイバー上でおびき出し逮捕した。いずれも秘密裏にしているが昔のよしみで文佐衛門さんには連絡をくれた。特別の方法でその男が仕掛けた元の本来の公募者のリストと情報を文佐衛門さんのところに届けてくれるとのことだ。このことは勝崎さん、ウチのCIOにも言わないで欲しいと言うのが向こうの条件だ。」
「わかりました。シンガポールサイドで調べてもらうことにしてウチは手を引かせるわ。
勝崎さんには何かで悟ってもらい納得してもらうわ。例えばグレイスマジックとかね。」
「了解。これで、ジョンの野望も砕けるだろう。グレイスに知らせても報復はしないけれどジョンの交わりを絶つ方向に動くのでこの方面からの攻撃はない。江藤カンパニーに関しては後味は悪いがパーフェクト ウィンだ。」
「もっといい形で終わりたかったわ。みんなあんなに一生懸命やってくれたのに。何か晴れやかな気持ちになれることをしましょう。後味の悪さは私たちだけの心の中に仕舞っておいて。」
「沖縄のコールセンター研修にするか?」
「短くて忙しいかもしれないけれどそれがいいわね。早速手配させます。会長から全員に告知してください。」
電話が鳴った。
「あ、勝崎さん、どうだった。本人確認は取れたけれど本人はそんな内容を書いていない。OKそれで打ち切りましょう。え、詳しくは色々あって言えないの。シンガポールに振ってグレイスマジックをかけてもらうことになったの。CIOにもそう言って。変な幕切れだけれど。それで会長が了承しているので。」
「ひろみさん、会長室に来てくれる。」
ひろみがあらわれた。
「ひろみさん、今我々のパーフェクトウィンが色々な情報網を通じて確認できたの。あんなにがんばった割にはあっけない幕切れなので、忙しい研修になるけれど、沖縄コールセンターへ全員で行くことになったの。会長がもう直ぐそのことを告知するから、麻由美さんを使って色々な手配や中田さんにも知らせて。お願い。」
「え、勝利したんですね。やっと終わったか。早速手配にかかります。麻由美さん喜ぶだろうな。」
ひろみが出て行ってから
「比嘉麻由美さんのご両親についでに会ってこようと思います。シンガポール勤務の可能性もありますので。中田さんを通して趣旨をお話しておいたほうが向こうでの協力者を増やすことにもなりますから。」
「そうだね。よろしく頼む。ところで、我々も沖縄が終わったら休むか。」
「いいえ、でも来月、ワイナリーのボブが来る頃吉之助さんの披露パーティがあります。その時、グレイスが京都でブレーンストーミングをやりたいと言っていたので。休みではありませんが息抜きはできます。それでどうですか?二人で休むわけには行きません。」
「そうだね。そうするか。今日のそのつづきは、『クール ウエイブ』で。」
「じゃ、私は青山の病院経由で伺います。麻里さんがもう直ぐ退院なので。」
「それはよかった。だから、勝崎さん冴えてきたんだ、一段と。」
2012年4月30日