【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

めくるめく知のフロンティア・学究達 =155=/ 堀川大樹(07/11)

2021-03-30 06:13:26 | 浪漫紀行・漫遊之譜

ちょっと間抜けで憎めない、いや、愛すべき容貌をしたクマムシ

低温にも負けず、高圧にも負けず、乾燥にも放射線の照射にも負けず

2700メートルの海底から標高5000メートルくらいの山まで、頑健丈夫な体で生き抜く

華の都パリでそんな“かわいいけど最強”の生物・クマムシを研究する堀川大樹

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】

(文=川端裕人/写真=川端裕人・堀川大樹 & イラスト・史料編纂=涯 如水)

クマムシ/堀川大樹 : 第3回 ヨコヅナクマムシ登場 =3/3= ◆◇

  そんな中、正統派のアプローチが大当たりを取る。

「草食のものがいいと思っていたわけで、藻類も試したんです。ワムシの培養槽にたまたま湧いてきた、緑のものを集めて、十何種類ぐらいのクマムシに与えてですね。そうしたら、何てことはない、札幌にいた時に見つけたクマムシ──今ヨコヅナクマムシって名前ついてますけど、その頃は、属の名前でツメボソヤマクマムシって呼んでました──それが、藻類を食べて、卵を産んで、更に孵化したやつも藻類を食べて、また卵を産んで……ってサイクルが回るのをみて、これは藻類を食べて繁殖させられるんだと分かったんです」

もっともいくら藻類といっても、自分で培養して供給するのは大変だ。市販されているものを使えないか。実はこの時点で堀川さんは、とてもラッキーな(しかし後々まで自分では気づかない)選択をしている。

「わくわくしながらインターネットなどで、色々文献探しなどをしてましたら、九州の会社が作っているクロレラが良さそうだと思ったんです。もともとは海産のワムシに栄養を与えるためのもので、そのワムシは養殖の稚魚に食べさせる。つまり水産業のためのクロレラだったんですね。それがピンポイントで当たりだったんです。入手しやすいし、本当に与えてみたら、もうボンボン増えました。自分の中で、キター! ってかんじで。あのときが多分、今までの研究人生の中で一番嬉しかったですね」

 ここから先はとんとん拍子に進んだ。餌は買えば簡単に手に入る。

 卵もボンボン産んでくれる。飼育下で産まれた子も、さらにその子も変わらずに産み続ける。1週間くらい培地を交換せずに放っておいても大丈夫。唯一のデメリットは、体のサイズ。体長0.3ミリメートルと、0.7ミリメートルはあるオニクマムシに比べて小さく扱いづらい。しかし、それを補ってあまりあるメリットだった。

  堀川さんは、ヨコヅナクマムシ(以降、この名で統一)が、25℃の環境でどれだけ生きるのか、生涯にどれだけ卵を産むのか、といった基本的な生活史データを調べ、それが博士号論文となった。

 基本的ながら、その意味は非常に大きい。オニクマムシでは難しかった「簡単な飼育」ができる飼育系を確立したということなのだ。これまで研究者が倒れるほど手間が多かった飼育が簡単になることで、放射線耐性を含む極限環境に対する応答のメカニズムの分子生物学的研究やゲノム解析などができるようになる。なにしろ、クマムシのような小さな動物の生体中のタンパク質やDNAを調べるには、とにかく野生からの採集ではとうてい不可能な数を集めなければならない。また、遺伝的なばらつきが結果を曖昧にする可能性があるから、遺伝的に単一個体由来のものであることが望ましい。

 実際、今現在、ヨコヅナクマムシは、極限環境動物のモデルとして、堀川さん自身をはじめ、多くの研究者が活用し、研究を進めている。

 クマムシがかかわる、少し目先の違ったテーマとして、極限環境の極み、宇宙での生命を考える「アストロバイオロジー(宇宙生物学)」という分野がある。堀川さんは、自分自身で系統確立したヨコヅナクマムシをひっさげて、アメリカ・カリフォルニア州にある、NASAのエイムズ研究センターに招かれることになる。

次回は“第4回 宇宙生物学のためにNASAへ! そして、パリへ!”に続く……

■□参考資料: 遺伝子が明かす、最強生物クマムシの強さと進化の道筋 (1/3) □■

2017.09.14  丸山恵 / サイエンスライタ

クマムシとはどんな生物か?

クマムシは、海、山、熱帯のジャングルから南極まで、あらゆる場所に棲む。身の回りのちょっとした池や道路脇のコケの中にも見つけることができる。周りに水がないと活動できない水生(すいせい)動物であるのに、泳げない。水の中を熊のようにゆっくりと歩いて移動する様子が、名前の由来にもなっている。

 クマムシの中には、周りに水がなくなっても生き延びることができる陸生のクマムシもいる。水のない場所では、乾眠(かんみん)と呼ばれる脱水した仮死状態となり、全ての代謝をストップさせる。クマムシがその“最強”の威力を発揮するのはこのときだ。マイナス273℃から100℃の温度、真空から75,000気圧までの圧力、数千グレイ※1の放射線、実際の宇宙空間に10日間曝露した後も生存が確認されるなど、乾眠状態のクマムシが私たちの知る地球生物の常識を超越した環境への極限耐性を持つことが確認されている。

※1 グレイ/放射線が“物質”に当たったときに与えたエネルギー量を表す単位。よく使われる「シーベルト」は、放射線が“人”に当たったときの健康影響を加味した単位。例えば、1グレイのガンマ線を全身に浴びたとき、被ばく量は1シーベルトとなる。

コヅナクマムシとドゥジャルダンヤマクマムシ

 ここで、今回の研究で解析対象となった2種類のクマムシを紹介しよう。(イラスト参照)

 注目したいのは、両者の乾燥耐性の違いだ。乾燥耐性の強さは、急速な乾燥に耐えられるかどうかで評価する。ヨコヅナクマムシは、陸に棲む陸生クマムシで、乾燥耐性が強く、約30分程度で乾眠状態に入ることができる。一方のドゥジャルダンヤマクマムシは、水中に棲んでおり乾燥耐性は弱く、24〜48時間かけてゆっくり乾燥させないと、乾眠状態に入る前に死んでしまう。今回の解析の見どころは、両者に共通する“乾燥耐性を生み出すしくみ”と“乾燥耐性の強さの違いを生みだすしくみ”だ。

 ちなみに、クマムシはどこにでも棲めるわりに飼育が難しく、研究のためのサンプル確保は大きな課題だ。幸い、この2種のクマムシは飼育系※2が確立しており(ヨコヅナクマムシは慶應大学の同研究チーム、ドゥジャルダンヤマクマムシはアメリカの研究チームによる)、研究の環境が整っていた。この2種の他に飼育やゲノム解析が進められているクマムシは、国内外でほんの数種類しかない。

※2 飼育系/研究対象の生物の適切な管理用法。成長に適した環境や餌などの条件が明確で、交配を繰り返して遺伝的に均質化され、実験に利用できる状態の生物を、「飼育系が確立した生物」という。

What Is A Water Bear? 

動画のURL: https://youtu.be/mkom1gCkovU 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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