BONOBONO DIARY

BONOさん音響・照明奮闘記

大気圏突入

2010-02-11 | ガンダムレビュー
 機動戦士ガンダム、いわゆる“ファースト”の第五話「大気圏突入」です。序盤の大きな見せ場となるこの話は、公式設定によりますと宇宙世紀0079、9月23日、ガンダムにアムロが乗り込んで5日目、ホワイトベースがルナツーを出航して翌日の話しとなっています。シャアが、ホワイトベースの大気圏に突入する直前を狙って攻撃を仕掛けるという、スリリングかつスピーディな展開であり、私も大変好きなエピソードです。

 私は子供のころ、このガンダムで始めて、宇宙から地球に帰還するときは大気圏と言う“熱そうなところ”をくぐり抜けないといけないんだな~って思った覚えがあります。ヤマトもアルカディア号も999も、何事もなく宇宙から地表に降りてきます。本作では、大気圏突入時のガンダムやホワイトベースの周りの空気が赤くなるプラズマ状態も描かれていて、科学的に正確な描写にこだわっていることが伺えます。



 ホワイトベースはワッケインに一隻のサラミス級をつけてもらっていますが、これはホワイトベースの護衛と言うより、素人だらけのホワイトベースを先導する、と言う意味合いのほうが強いと思われます。ルナツーからここまで、正確な時間はわかりませんけど丸一日くらいかかっているようです。その間、相変わらずシャアに追跡されながらも攻撃はなく、無事にここまで来れたことは幸運です。ホワイトベース内にも安堵感が広がっている感じがします。


 フラウが避難民たちに石鹸とタオルを配り、「さっぱりとした気分で地球の土を踏んでください」と言っています。避難民たちを見ると、やたら年寄りが多く、彼らにとってはここまでの航海だけでも辛かったことでしょう。アムロが話しかけた老人が、孫の両親は一週間戦争のときに亡くなった、と言います。地球についたら自分の故郷で孫を育てたいこと、もとは南米でコーヒー園をやっていたこと、そして地球連邦のやつらが強制退去を言ってきたとしてももう絶対動きたくないことをアムロに話します。ガンダムのこう言った細かい心の触れ合いの場面が好きです。


 「一週間戦争」という言葉が老人の口から出てきました。これはUC0079、1月3日のジオン公国の地球連邦政府に対する宣戦布告から、一週間後の1月10日まで行われた、両軍の激しい戦闘と、ジオン軍による史上最大の虐殺のことを指しています。この一週間の中に悪名高いコロニー落下作戦である「ブリティッシュ作戦」が含まれていて、この一連の戦闘により28億人が死亡したとされています。ペロ(老人の孫の名)の両親はこのときの戦闘に巻き込まれて命を落としたのでしょう。



 「大気圏突入25分前」ミライが言います。ミライさん…、スペースグライダーで一度降りたことがあるとは言ってますが、今度は避難民を満載した戦艦です。この落ち着きようは並みの人物ではありません。ブライトが頼りとしているのもよく分かります。この時のブリッジの絵が途方もない広さに描かれていて、今回の作画も安彦さんじゃないな、と気づかせてくれます。


 「若造、聞こえるか」と横柄なリード中尉。これが後半のザクに攻撃されたときの狼狽の対比となり、彼を小さな人間に見せています。でもこんな方、周りに多いですね。中間管理職の悲哀と言うものでしょうか。リード中尉、嫌いじゃありません。


 シャアのムサイに接近する船をキャッチしますが、今回のブライトは落ち着いています。このタイミングでは仕掛けてこないだろうという過去の常識からでしょうか。「俺たちの追跡をあきらめたということなのか?」希望的観測をつぶやきます。それはサラミスでも同様で、ムサイに接触しているのが巡航船ソドンだと言うことまで判明しているのに、「われわれを追ってくるとは思えません」と楽観的です。この辺りの描写がシャアの非凡さを引き立てているのですね。



 
 サラミスが大気圏突入カプセルを射出。カプセル射出後のサラミスはシャアを警戒し、すぐ離脱していきます。ホワイトベースは大気圏突入プログラムの自動操縦に切り替えサラミスのカプセルに続きます。アムロはガンダムでスタンバっています。大気圏に突入するこのタイミングで戦闘を仕掛けたと言う事実は古今例がない…シャアがパイロットたちを集めてブリーフィングしています。今回は第一目標が木馬、第二がモビルスーツ。戦闘時間は2分とないはずとシャアが言いますが、ホワイトベースの一部に攻撃を集中し穴を開けてしまえば、大気圏突入時ですから引き返すわけにも行かず燃えてしまいます。

 前回アムロは「シャア、いったいどんな男なんだ」とつぶやいていました。アムロはずっとそのことを考えていたのかも知れません。シャアは攻撃してこないだろう、と皆が楽観している中で、おそらくアムロだけは絶対仕掛けてくる確信を持ちつつ、ガンダムのシートで待機していたのだと思います。「敵だ!」の声に反応するアムロの動きは尋常じゃないくらい素早い。ここは劇場版のほうが良いBGMを使っていて緊迫感があります。

過去に前例のない戦闘の火蓋が切って落とされました。



つづく

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-06-16 19:17:48
艦が反重力で飛べるんなら何事もなく大気圏突入させるのも可能なのでヤマトのあれもおかしくないといえますよ。

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