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ドイツモデルの行方【終章:土田武史】

2008-05-26 09:58:39 | 地球→ドイツブログ
【ドイツと日本の社会保障】
ミネルバ書房から出ている
『社会保障改革』の最後の終章が残っています。担当は、土田武史教授(早稲田大学)。pp.234-261 と厚い章です。

この本は、ドイツの研究者と日本の研究者とが年月をかけて発表と討論を重ね、
両国の社会保障の類似点・共通性と、相違点とを明らかにしたものです。

社会保障制度のような「実験が効かない」(失敗が許されない)ものを研究するのは、自分の国の制度の成り立ちを明らかにする歴史的研究と、
比較的類似する国との比較研究とが有効です。

どこの国が、わが国と比較的類似しているか?
社会保障の面では、ドイツと日本の類似性は高く、二国間研究では、日独の比較が量的にも質的にも一番多いと思います。

実際の研究には、語学上の制約もあって、英語国との比較研究も多いです。
(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなど)

【終章の構成】
はじめに 福祉国家とドイツモデル
1    社会保険の特性とその変容
2    各社会保険制度における改革の方向(医療・介護・年金)
3    社会保険の再構築

このブログでは、この本の序章から始まり、9つの章を順次読んできました。
最初の記事は、2008年1月20日ですから4ヶ月にわたって読んできました。
「ドイツ」のカテゴリからお読みください(43件の記事中、この本は17件です)

【最近の国内の社会保障論議と重ねて】
この本は、長い年月の研究活動の総決算ですし、土田・府川・田中など編集・執筆された先生方は、日本におけるドイツ研究を代表される先生方です。日本のこともお詳しい。
(例えば、土田先生は、先日まで日本の医療費を決める中央社会保険医療協議会の会長を勤められた)
ですから、「ドイツと比較して日本はどうなのか?」という問には、標準的な専門書として読まれていくでしょう。

ところが、この本が出た2008年2月以降、

○ 年金制度への不信が消えない(記録不備の問題とその対応)
○ 年金制度の財源をめぐる問題(消費税問題が関連して浮上している)
○ 4月から施行された後期高齢者医療制度をめぐる批判

などが続いて問題となっています。
「社会保障国民会議」が発足して議論が始まっています。

これらの新しい問題を読み解くには、「ドイツモデル」との対比だけでは
議論の整理が進まないでしょう。

【ドイツでは政治家が日本では?】
政策の大きな方向付けはドイツでは(欧米諸国では)政治家が自分のプランを発表して、意見が発展し、国会での議論では争点を収斂していく・・というプロセスです。

「社会保障国民会議」には、大新聞の3社からの年金制度案が説明されています。
新聞社の任務は、世の中に起きていることを報道することですが、日本では、しばしば「プレーヤー」として登場します。政治家もいろいろ発言・提言しているようですが、「にわか評論」の雰囲気は否定できません。

*写真は、去年の今頃、垂水港で。
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