鹿児島市内共研公園の一角にある西郷旧宅の碑。昨日、3月15日昼ごろです。
「20世紀ドイツにおける国家・共同性・個人」
という副題がついた『社会国家を生きる』(川越 修・辻 英史編著、法政大学出版局、2008)を読んでいます。ドイツ近代史を専攻する9人による論集です。
*第1978号 2008.12.14 で、全体の構成を
第2444号 2009.03.06 で、家族とソーシャルワークの発展(第8章 中野智世)
を紹介しました。
今日は、この本の第1章「20世紀型社会とは何か」(川越 修)pp.3-33
を手がかりとしながら、日本社会の行く末というか基本的な流れ・課題を考えて見ます。
【資本主義の見直し】
昨年末からのアメリカの経済破綻、連動して国際的な経済危機のさなかです。
昨日、アメリカと日本の貧困の現状に詳しい 堤 未果+湯浅 誠 の対談を紹介しました。日米の現状は良く似ていて、貧困の問題が、最下層の問題ではなく、中流階層の問題でもあることを明らかにしていました。
*2009.03.15 第2525号
*本日発売の経済雑誌週刊ダイヤモンド(3月21日号)は貧困問題を特集。
ノーベル経済学賞のセンによれば、スミスやピグーといった経済学の始祖たちの描く資本主義には、もっと人間的・倫理的な要素が内在していた。
*2009.03.15 第2508号
*センの「潜在能力の開発」という概念は、湯浅の「溜め」の論理とつながるところがある。
【社会と国家】
現在のアメリカと日本は、「市場主義」「競争社会」という点でよく似ているが、社会の基盤にキリスト教・教会のあるアメリカと日本のとでは相違も大きい。
北九州で起きた飢餓のための餓死事件は、各国で驚きをもって報じられたという。
*上記、湯浅の対談では、アメリカのニューヨークタイムズの報道を紹介。p.79
在日の特派員は、「経済大国の日本でなぜ?」と思ったことだろう。
この教会あるいは、宗教、あるいは社会思想という軸をいれて考えることで、社会国家のあり方も相違する・・これが、本書第1章での川越 修の分析だ。
同じヨーロッパでも、
・プロテスタント スウェーデン デンマーク
・近代カソリック フランス ベルギー
・伝統的カソリック スペイン ポルトガル
・混合地域・地方分権 ドイツ スイス オランダ
・ヨーロッパ大陸とは別の宗教 イギリス
と、違いがあり、これを反映して、社会政策、ことに家族政策には違いがある。
p.16
【理念無き個人化】
アメリカと日本は、IT技術の発展とグローバリゼーションの時代に社会的な政策は破綻した。
ヨーロッパも、国際経済の難局の影響を免れないが、社会政策の厚みは市民の不安感に温度差を生んでいる。
川越によると、家族政策の動向を比較して、
・スウェーデンは、個人化を徹底し、
・ドイツは、理念の無いまま個人化が進み
・フランスでは、新たな社会連帯の道を探ったという p.29
この「理念無き個人化」という捉え方は、日本の社会政策を考える際にもキーワードになると思いました。
○ 社会保障制度は医療・年金・介護とそろっている。
○ 国民健康保険や国民年金での保険料の滞納は制度の根幹を揺るがすまでになっている。
○ 年金支給のサービスに重大な欠陥がある。
○ 政治家は、(与野党とも)行政の描くプランを下敷きに、かって経済成長の時代に「大盤振る舞い」をした。国民は、社会政策を連帯感よりは「もらえるもの」「とくなもの」という政治家のメッセージに乗った。
【北欧型を希求する場合の盲点】
ドイツと日本に共通の社会政策の問題点は、「男性が働く+社会保険」という方式が行き詰まっていることだ。
日本では、社会保障への北欧型を理想像とする考えも多い。その際の根本の問題は、北欧型は、政府への揺るがない信頼という前提が基盤であるということですね。
いまの日本では、政府の信頼は(マスメディア的には)地に落ちている。
それでも、(教科書的にいえば)政治が明確な理念に基づいて、新しい社会連帯の道を示し、実行することで行政の課題を克服可能です。
*これが、無理なことは政局に終始する昨今の政治状況から明白ですが。
「20世紀ドイツにおける国家・共同性・個人」
という副題がついた『社会国家を生きる』(川越 修・辻 英史編著、法政大学出版局、2008)を読んでいます。ドイツ近代史を専攻する9人による論集です。
*第1978号 2008.12.14 で、全体の構成を
第2444号 2009.03.06 で、家族とソーシャルワークの発展(第8章 中野智世)
を紹介しました。
今日は、この本の第1章「20世紀型社会とは何か」(川越 修)pp.3-33
を手がかりとしながら、日本社会の行く末というか基本的な流れ・課題を考えて見ます。
【資本主義の見直し】
昨年末からのアメリカの経済破綻、連動して国際的な経済危機のさなかです。
昨日、アメリカと日本の貧困の現状に詳しい 堤 未果+湯浅 誠 の対談を紹介しました。日米の現状は良く似ていて、貧困の問題が、最下層の問題ではなく、中流階層の問題でもあることを明らかにしていました。
*2009.03.15 第2525号
*本日発売の経済雑誌週刊ダイヤモンド(3月21日号)は貧困問題を特集。
ノーベル経済学賞のセンによれば、スミスやピグーといった経済学の始祖たちの描く資本主義には、もっと人間的・倫理的な要素が内在していた。
*2009.03.15 第2508号
*センの「潜在能力の開発」という概念は、湯浅の「溜め」の論理とつながるところがある。
【社会と国家】
現在のアメリカと日本は、「市場主義」「競争社会」という点でよく似ているが、社会の基盤にキリスト教・教会のあるアメリカと日本のとでは相違も大きい。
北九州で起きた飢餓のための餓死事件は、各国で驚きをもって報じられたという。
*上記、湯浅の対談では、アメリカのニューヨークタイムズの報道を紹介。p.79
在日の特派員は、「経済大国の日本でなぜ?」と思ったことだろう。
この教会あるいは、宗教、あるいは社会思想という軸をいれて考えることで、社会国家のあり方も相違する・・これが、本書第1章での川越 修の分析だ。
同じヨーロッパでも、
・プロテスタント スウェーデン デンマーク
・近代カソリック フランス ベルギー
・伝統的カソリック スペイン ポルトガル
・混合地域・地方分権 ドイツ スイス オランダ
・ヨーロッパ大陸とは別の宗教 イギリス
と、違いがあり、これを反映して、社会政策、ことに家族政策には違いがある。
p.16
【理念無き個人化】
アメリカと日本は、IT技術の発展とグローバリゼーションの時代に社会的な政策は破綻した。
ヨーロッパも、国際経済の難局の影響を免れないが、社会政策の厚みは市民の不安感に温度差を生んでいる。
川越によると、家族政策の動向を比較して、
・スウェーデンは、個人化を徹底し、
・ドイツは、理念の無いまま個人化が進み
・フランスでは、新たな社会連帯の道を探ったという p.29
この「理念無き個人化」という捉え方は、日本の社会政策を考える際にもキーワードになると思いました。
○ 社会保障制度は医療・年金・介護とそろっている。
○ 国民健康保険や国民年金での保険料の滞納は制度の根幹を揺るがすまでになっている。
○ 年金支給のサービスに重大な欠陥がある。
○ 政治家は、(与野党とも)行政の描くプランを下敷きに、かって経済成長の時代に「大盤振る舞い」をした。国民は、社会政策を連帯感よりは「もらえるもの」「とくなもの」という政治家のメッセージに乗った。
【北欧型を希求する場合の盲点】
ドイツと日本に共通の社会政策の問題点は、「男性が働く+社会保険」という方式が行き詰まっていることだ。
日本では、社会保障への北欧型を理想像とする考えも多い。その際の根本の問題は、北欧型は、政府への揺るがない信頼という前提が基盤であるということですね。
いまの日本では、政府の信頼は(マスメディア的には)地に落ちている。
それでも、(教科書的にいえば)政治が明確な理念に基づいて、新しい社会連帯の道を示し、実行することで行政の課題を克服可能です。
*これが、無理なことは政局に終始する昨今の政治状況から明白ですが。