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ドイツでは社会的入院が生じにくい理由(土田武史)

2008-03-02 06:29:19 | 地球→ドイツブログ
【ドイツと比較した日本の社会保障】
『社会保障改革ー日本とドイツの挑戦ー』(ミネルバ書房、2008)
を読んでいます。

医療・年金・介護という社会保障の基本をなす各制度の課題が論じられています。
先進国との比較で日本の特色を明らかにする試みが多いのですが、北欧のように進んだシステムをすぐに日本に適用するには公的組織への信頼や財源の負担の問題などハードルが高いです。また、公的な健康保険制度さえ作っていないアメリカのような市場原理的な国の社会保障制度は問題の多い反面教師として学ぶ意味があるにすぎません。

ドイツは、産業の歴史的発展の程度、人口規模、社会保険による社会保障制度という点で、日本と多くの共通点を持っています。

この本では、日独の専門家による共同研究をまとめています。
日本側の3人の編著者(土田武史、田中耕太郎、府川哲夫)は、日本を代表する社会保障の研究者です。

今回は、「第3章 医療と介護の連携」(p80-p100)で、担当は土田先生です。

【社会的入院はドイツには無い】
中央社会保険医療協議会が2005年11月に行った「慢性期入院医療実態調査」によると、療養病床の入院患者の半数は、いわゆる社会的入院でした。

日本では、医療費の面でも、医療経営の点でも、そして高齢者の福祉という点でも克服すべき問題として1970年代から指摘されてきましたが、ドイツでは」このような問題は無いのです。

その理由について、土田先生は、
1 医療が必要かどうかは医師が判断するので、病院以外の目的で入院することは通常ありえない。
2 ドイツでは、入院は、保険医(開業医)の紹介状が必要で、入院が必要で必要でなくなると保険医の元に帰される。
3 MDK(メディカルサービス)という審査機関が入院の可否を判断し、退院を勧告するシステムがある。
4 在宅介護優先の原則が徹底していて、医療施設はもとより、介護施設に入る場合にもその必要性が無いのに入所するケースは少ない。
と説明しています。(p93)

【医療以外の問題点が】
鹿児島県は、全国的にも病床数が多く、医療費も高いことで知られます。
その原因には、まさにこの「社会的入院」があげられます。

医療機関の行動原理だけではなく、経済的な理由、家庭的な理由などがあって、病院以外に行き場所が無いという高齢者や精神障害者が多いのでは、という仮説を何人かの方から聞きました。

生活保護や住宅問題など広く関連する領域から考察する必要がありそうです。

*写真は、カントリー雑貨さくらんぼさんで私が撮ったもの。
(ドイツとは関係ないのですが、ヨーロッパの雰囲気はあります)
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