介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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年金と家族:日独対比

2008-05-02 10:25:38 | 地球→ドイツブログ
【第8章】
『社会保障改革』というタイトルの日独比較研究を読んでいます。
(ミネルバ書房、2008)

前回まで
ドイツの年金制度をかなり詳しくみてきました。
(第7章。4/05 4/10 4/21 の3回)

今日は、第8章。
「高齢期の貧困防止および家族と年金制度」(p191-p217)です。
執筆は、田中耕太郎先生(山口県立大学教授)

・公的扶助 年金の基礎的な所得保障機能
・年金分与 離婚の際の年金の扱い

がポイントですが、
ドイツとの対比で、日本での議論の不確かさが浮き彫りにされます。

【日独年金の比較:復習】
○ 共通点
 ・アメリカやイギリスに比べると、公的年金の比重が大きい。(企業年金が発達していない)
 ・年金の性格として、「老後の賃金」と考える(ドイツのほうが純粋だが)
 ・財政方式 その年の保険料収入でその年の年金給付を支払う(賦課方式)
  (ドイツの支払準備金は、0.5ヶ月に対して、日本は約5年分あるが、基本は同じ)
 →財政負担の点から、持続可能性については厳しい見直しが必須

○ 相違点
 日本の基礎年金に相当するものはドイツにはない。

【最近の年金給付水準の引き下げ】
○ ドイツ
2001年改革 これまでの給付水準を目標にする改正方針は、保険料負担の上限を目標とする改正に転換した。

○ 日本
1985年     年金の算定方式 (年間乗率)1%から0.75%に大幅引き下げ
1994/2000改正 支給開始年齢の引き下げ  60歳→65歳
2004      マクロ経済スライド
*この20年間、ずっと、給付水準の削減が続いている。

【公的扶助と公的年金】
・ドイツ民法の扶養義務は、日本よりずっと狭い
・ドイツの社会扶助の水準は、平均手取り収入の40%・・年金水準が低い
・日本では、公的年金と生活保護の総合的な見直しが必要

【年金制度の中の家族政策】
日本 厚生年金 世帯単位
   国民年金 個人単位
ドイツ 個人単位 *遺族年金はある

育児期間と介護期間の優遇策は、ドイツで発展してきた。日本ではまだ政策として具体的な検討はされていない。

○ 育児期間の評価
 育児のため保険料を払えない期間について年金制度上優遇する政策
ドイツでは、1985年以降採用し、次第に充実してきた。
*仮に、3人の子どもを育児した場合、3年間の優遇策で、月額3.5万円相当が年金給付と結びつく。
 子どもがいない人への保険料の加算(介護保険の場合:0.85%+0.25%上乗せ)

○ 介護期間の評価
 介護期間中に保険料が支払えない場合には、「みなし就労」として優遇。
(介護時間数などにより平均賃金に対する割合が違う)

【年金と離婚】
2つの意味がある。
・離婚した時の夫婦の財産分与の一環→「年金分与」といわれる Ausgleich
・女性の老後の年金保障の観点   →「年金分割」Splitting

民法学の知識が要るので、短く要約は難しいが、
ドイツでは、1977年から
日本では、2007年から
導入されたこと。(日本では、大幅に遅れた)

日独、いずれも論点が残されていること
・・第8章では、詳細に検討・紹介されている。

*写真は、4月27日午後、鹿児島中央駅西口の並木を見上げた。

 


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