介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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第3296号 「つなぐ」方法としてのソーシャルワーク

2009-11-12 03:31:55 | ヒューマンサービス
写真は、安曇野カンポンLIFE の2009.11.12付けの記事からお借りしました。

【国際性】
医学は、medicine
法学は、law
哲学は、philosophy

日本で言う言葉・概念は、そのまま国際社会で通ずる。

「社会福祉学」についてはどうか?

あまり、くわしくは立ち入りませんが、
「ソーシャルワーク」あるいは、その実践家としての「ソーシャルワーカー」これは、社会福祉と同じなのでしょうか?

【日本の大学では社会福祉を学問扱いしてこなかった】
日本の学問体系は、明治以降、西欧の学問を取り入れてきた。
すでにsocial work は、イギリス、アメリカにあったが、日本の国立大学では、これを学問分野と捉えてこなかった。

というか、現在でも、
例えば、
東京大学、京都大学、名古屋大学、・・・旧国立大学
それに私立でも、慶應義塾大学、中央大学、明治大学・・といった老舗
では、
「社会福祉学部」「社会福祉学科」はおかれていない。

【厚生労働省が決める学問体系とは・・】
社会福祉士という国家資格ができたが、
そのカリキュラム、国家試験委員・・と
(文部科学省の系譜ではなく)厚生労働省の縦割りの統制を受ける結果となった。

事細かに
事業官庁による行政指導によって
学問内容が固定されている。

【外国のソーシャルワーカーと日本の社会福祉との違い】
インターネットの時代になり、
イギリスやアメリカのソーシャルワークの学問内容、カリキュラムは
私たちでも容易に知ることができます。

*最近の情報は、随時、「坂之上介護福祉研究会」のブログにストックしています。

そこで、気がつくのは
日本でいう「社会福祉」は、縦割りであり、これに対して外国では幅広い分野を扱っているということですね。

【現実のニーズから】
私が勤務する大学院では、
院生は、職業を持っている人が殆ど。
つまり、昼は、社会福祉や医療の現場に働いています。

おのずから、院生の研究テーマは、働いている現場からの発想からでています。

最近、私が指導したり、講義で聞いたりしたテーマの例を挙げると、
・高齢者や障害者への成年後見
・グループホームへの園芸療法の適用
・音楽療法の効果
・早期療育の方法

何れも、さまざまな専門職が共同して進める必要があるテーマです。

【つなぐ意味】
これらを従来型の固定的な社会福祉の考えでやると、もれてしまいます。

成年後見、園芸療法、音楽療法、早期療育・・これらの分野や方法は、
医学、心理学、リハビリ、教育、司法など
さまざまな専門職を「つなぐ」仕事ですね。

事例ごとに違う条件
参加する専門職も多様
適用する制度(法律・予算)も多様

これらを「ゆるやかにたばねる」ためには
ただの物知りやよい人柄だけではつとまりません。

*成年後見、園芸療法、音楽療法については、これまでもこのブログで触れてきました。

【早期療育】
毎週水曜日、会議でつぶれる魔の日ですが、
会議のあと、
早期療育の実務家であり、社会福祉士でもある院生のAさんと、
アメリカのEarly Childhood Intervention (児童への早期療育)のマニュアル本をテキストに、英語を読み、日本の事情を聞き、という勉強会をしました。

コロンビア大学の先生が書いたものでわかりやすく書かれていました。
「医療でも教育でもない」その各分野をつなぐものこそソーシャルワーカーではないのか?

Aさんの仮説をもとに議論しました。

【現場のテーマは研究しない?】
日本社会福祉学会などの発表テーマ、教科書、国家試験問題・・
などには、このような複合的なテーマはでてきませんね。
縦割り発想の限界です。



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つなぎの実践 (Maa-chan)
2009-11-12 19:39:43
 まさに今日,「つなぎ実践」となる,ケース会議(児童福祉法の「要保護児童地域対策協議会」)の進行をいたしました。
 これまで学校や教委,児童相談所などからいろいろと話してきたので,なんとなく頭の中の予想通り会議は進行し,さらには私の見落としていたところが関係機関から明示され,参加した機関それぞれが「何かを担う」という話し合いができました。

 ワーカーとしての力量のなさを痛感しながら,最低限の役割を果たせたような気がするので,そこはよかったかなと勝手に評価しています。

 ソーシャルワーク実践のひとつが,ご指摘の「つなぎ支援」ですが,ご指摘のとおり単なる物知りでは難しいと感じます。自らがケースを把握して予想することや,関係機関が「ここまでならやってくれそう」ということを事前に把握しておくこと等が必要なのだと,改めて痛感しました。

 そう考えると,ソーシャルワークにはきちんとした専門性が必要なのだと思います(知識や技術,そして何より倫理と価値ですね)し,そうした役割こそが重要なのだと私たち自身が主張していくことが大切だと痛感しました。
返信する
問題に対峙しての「つなぎ」 (bonn1979)
2009-11-13 13:15:41
Maa-chanさん

具体的な事例をご紹介いただき
ありがとうございます。

大上段の議論ではなく
貴見のように
具体例の即しながらも
日本におけるソーシャルワークの倫理や価値を構築していく時代ですね。

*最近は、貴ブログの読者数も一段多くなり、鋭いコメント、再コメントが書かれていて何よりです。
返信する

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