国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

第一回衆議院 運輸及び交通委員会 第2号から転載 2話目

2012-12-23 09:33:30 | 国鉄関連_国会審議
みなさま、おはようございます。
本日も、第001回国会 運輸及び交通委員会 第2号からの引用でございます。
いささか長文かつ、旧仮名遣いのため読みにくいところもございますが、これも時代の背景として読んでいただければ幸いでございます。

国鉄【当時は運輸省の現業部門】が独占であるにも関わらず値上げをすることに対する反発というか反論が述べられています。


○田中(源)政府委員 大臣から御答辯を申すはずでございまするが、ただいま參議院に參つておりまするので、私から代つてお答えをいたすことを御了承願いたいと存じます。
 今囘の鐵道運賃の改正を、國會の開議中にこれを諮らずして行つたということは、ただいま高瀬委員から御指摘になりました通りに御意見ごもつともだと私どもは了承いたします。しかも鐵道運賃は新しき憲法において、すべてかようなことは國會に諮つて、そうして現行鐵道法の規定の命ずるところによつて一箇月の豫告期間をおいて實施いたすということが明示されております。これは御指摘の通り當然のことと思うのであります。ただ政府が今囘かような處置をとるに至らざるを得なかつたという點を申しますることは、はなはだ一方的な釋明にすぎないようにお聽き及びになるかもしれませんが、この點は特に大所高所の觀點からひとつお聞き願いたいと思うのであります。申すまでもなく、今囘の措置が鐵道運賃の改正を伴いましたることは、現状日本の經濟状態に對しまして、政府が一定の安定蔕を物價の上に引いて、そうして物價と運賃の惡循環を阻止して、このインフレーシヨンを阻止し、國民の生活を安定いたすのみならず、ひいて日本の産業をして安定せしめるとともに、來るべき貿易再開に對する國家財政の基礎をつくらんといたして、この新政策をとつたということは、御了承のことと存ずるのであります。從つて産業經濟の面におきまして、運賃なるものが企業の上において非常な重大なる影響を與えているということは、申すまでもないことであります。今ここで政府のいう新物價體制の策定に伴いましたところの一定ラインに、もし鐵道の一般の運賃、鐵道のみならず海運の運賃のみを除外をいたしていたしまするということは、なし得られぬことであろうと思うのであります。これはいかなる方々でも、このラインを策定されるに當つて、總合的なる見地に立つてお考えを願いまするならば、必ずや一定運賃をどこにおく。從つてその運賃が各企業の生産原価に及ぼす影響というものを、まずもつて考えておかなければでき得ないのじやなかろうかと私どもも考えておるのでありまして、單にこれは運輸省そのものが單獨的な行為によつてなすということはでき得られない。いわゆる國家の經濟における總合的な觀點に立つて行うので、運輸省獨自の立場においてこれを論議することを得ない實情におかれた。かような觀點に立つて、今日の總合的經濟施策の上に行われた運賃の改定でございまして、これがたまたま開會されておる議會に對してその協賛を得なかつた。また法規の命ずるところによつて當然國會の協賛を得べきものであり、一定の實施期間をおくべきであるものが、これをいたさなかつたという、御指摘のように食い違つてきておるような状態に立ち至つておるのでありまして、これは今囘に限つて特殊的な事情のもとに、國家經濟の建直しのために行われた一つの行為であるという觀點から、特に今囘は御諒承を仰ぎたいと思うのであります。今後におきましてはかような問題のみならず、いわゆる運輸交通行政におきましては、もちろん當委員會のみならず國會の議決を經ていたすことには、萬萬了承いたしておりまするから、今囘のごときことのないようにいたすことを、特に併せて申し上げて、御了承を願いたいと思うのであります。この鐵道なるものは、先ほど高瀬委員からいわゆる國家企業であるために、安定蔕との關係においても多少違つた存續性をもつというふうに申されたのでありまするが、今日は日本經濟を直すためには、むしろ自由的な企業よりも、ある面において國家企業というものも國家が管理をいたして、適正なる産業の上の基礎を與えていくと同時に、これが完全なる機能を發達せしめたるためにおいては、むしろ國家管理の上におけるところの國家企業として行う方が、妥當ではあるまいかと思うのでありまして、この點は安定蔕に對する高瀬委員との考えとは多少所見を異にする次第であります。
 また鐵道會議の問題につきまして、るる御所見がございましたが、仰せのごとくにこの國會法におきまして、新たに閣議の方で從來の既設の法規の不十分なる點、また非民主的なる點については、遠慮なく立法の上御改廢を願いますならば、われわれはそれに從いまして、行政の面において民主的に運行いたしていきたいと考えるのであります。
 なお貨物の問題につきましては、現在の日本の鐵道は、戰時中におきまするいわゆる陸主海從主義になつております。なかんずく船はほとんど沈没いたし、破壊されていると申していいのであります。元來日本のみならず世界經濟の上におきまして、ソヴィエト及びその他一、二の國を除きましては、まずもつて大きなる貨物は海による。そうして特定の土地より生ずるものの特定地域内における輸送は鐵道による。長距離輸送はすべて海によるべきが原則であります。從つて賃金率につきまして、鐵道運賃と海洋運賃との比較と申しまするならば、おのおの國際間におきまする為替レートの關係もございますけれども、一定の差額をもつてきておつたものであります。わが日本は戰爭のために、御承知のごとくにいわゆる陸地中心主義であり、船はほとんど徴用されまして、しかもこれが多くは大打撃を蒙つておる現状であります。ひつきようするに今日日本の輸送というものは、鐵道によらざるを得ない事態におかれている。これを今後におきましては、努めて船舶の建造をいたしまするとともに、現在續行いたしておりまする船舶の改造と合わせまして、この偏したる陸主海從の政策を竝行にもつてくるということを考えていかなければならぬのであります。こういうラインにもつてくることが一番大切なことでありまして、從つてこの海の施策のすべての點が充實していくに伴いまして、陸上と海上運賃の竝行というものを考えていかなければならぬのであります。從つていつまでも今日におけるところの貨物運賃の制定に關する考え方をもつておるわけではありません。今後の推移によりまして、貨物運賃は、當然一定のこうした海と陸との竝行の面におきまする適切なる運賃改正を行うていかなければならぬと考えておる次第であります。さよう御了承をお願いいたします。
○高瀬委員 ただいま田中政務次官の御答辯がありまして大體は了解いたしますが、私は實は鐵道を獨占禁止法にかけてばらしてしまえという意見ではないのであります。ただ獨占企業であるがゆえに國民生活に重大なる關係があるのだから、經營自體について國民の納得するように運營してほしい。こういう意見をもつておるわけです。それからなお今囘の運賃値上げによつて今年度の収入は二百五十四億見當、しかも支出は三百七十四億ということになりますと、約百二十億も足りないのであります。結局將來鐵道財政がまた赤字を續けていくことは必至であらうと思うのであります。從つて今後の運賃値上げに對する見透し、あるいは鐵道は一體どういう方法でその財政的危機を切抜けていく御所存であるか、特に、あらゆる面で鐵道が獨立採算制をとつたからといつて、運賃値上げによつて健全財政を立てていかなければならぬということがはたして必要であるかどうか、それはある程度まで必要でありましようが、とにかく國民全體が今赤字生活をやつてその日をしのいでおる今日、鐵道だけが全然借金もせずに健全財政でいくということは非常におかしなことで、官業の經營が、自分でやつたことがまずいからと言つて、それをつまり間接税式に國民に轉嫁するということになると、非常に國民は困る。そういう點で、本年度において約百二三十億の赤字が出ておる今日において、そういう方法で今後やられるか、鐵道財政を運營していかれるのか、特にまたこの次に運賃値上げというようなことが續々と現われてまいりますと、非常にわれわれとしてもその責任を感ずるわけでありますが、この點に對する鐵道御當局の所見を伺つておきたい。
○田中(源)政府委員 高瀬委員の御質疑はごもつともと存じます。今囘の運賃改正をいたしましても、本年度において九十億、平年度において六十億以上の赤字が出てまいるのであります。これは私はいわゆる獨立採算制と申しまする點から考えてみまして、國家の企業であるから、このものは必ずしも赤字が伴つてもいいという考えはもちません。そこに積極的なる面と消極的なる面の、この兩面における合理的なる運營を行つていかなければならぬと考えるのであります。積極面におきまする點においては、貨客車の修理であるとか、改造でありますとか、いろいろな點もありましようし、また消極面におきましては物資の節約、合理的なる消費というような點があろうと思いますので、いずれも兩面に多々の條件を備えるのであります。從つてこういうふうに、合理的な面に經營を行いまして、しかる後においてなお赤字が續くという場合におきましては、これは國民の納得のいくように運輸省よりよく説明をいたしまして、國家がその負擔をしていただくという方針をとつていかなければならんと考えておるのであります。でき得べくんば獨立採算制によつてその企業が獨立の形態に立つていくということでなければならぬ。しかし國家企業の上から考えまして、また國民の生活の上から考えてみまして、できるだけの努力を費して、積極、消極の兩面を含む合理的經營の上において出されたる赤字は、これは國民の納得のいく説明をいたしまして、納得のいくごとに國民の負擔としていきたいと思うのであります。まず運賃の改正におきましては、今後において一應積極、消極の兩面の合理的なる經營をやつてみまして、そしてしかる後におきまして、國會にわれわれも行政面におきまするところの結果を報告いたしまして、運賃なりその他の改正をはかつていくのが妥當であろうと考えておるのであります。大體運賃の將來におきますところの引上げ、改正という點については、右よう御了承をお願いいたしたいと存じます。
○正木委員長 佐々木更三君。
○佐々木(更)委員 ただいま田中政務次官は、物價の總合決定の上から鐵道運賃の引上げをしなければならない状況をるる御説明になつたのでございますが、ある程度私たちはその點は認めざるを得ないと思います。ただそれによつて今囘の値上げにとつた運輸省の國會無視の釋明の理由には、私はならないと思うのであります。聞くところによりますと、運輸省は今囘の運賃値上について鐵道會議にこれを諮問したということであります。しかもその鐵道會議に諮問した時期というものは、これはごく最近でありまして、しかも鐵道會議に諮問する必要がありますならば、言うまでもなく開會中の國會特にわれわれ運輸交通の委員會にこれを諮問しないということは、はなはだ私は新憲法の現在において好ましからざる態度と斷ぜざるを得ないのでございます。この點につきましてどういう理由があつて、他には諮問するけれども、この國會に諮問しないのか。その理由についてお伺いいたしたいと思うのであります。
 次には運賃値上げが、これはやむを得ないとかりにいたしますなら、この問題が國民生活の上に何らかの利益を與えるものであることが私は條件であろうと思います。言いかえるならば、この運賃値上げが日本の國營の運輸にどういうふうに反映するか。殊に輸送力の増強にどういう役立をするかということについてお伺いしたい。
 次に現在の國家財政から、運輸交通の事業が急速に改善されようとは思つていないが、日本産業の再建の上において、運輸交通がきわめて重要な要素であることはいうまでもない。しかも資源の開發上、必要な路線が中途にして放置されている。既定路線というか、すでに國會で決定された路線がいまなお放置されている現状である。こういう路線は一日も早く開通され、新資源の開發に役立たねばならないことは當然である。こういうものに對して運輸省はどういうふうに推渉させるか、お伺いしたい。
 次に道路運輸の關係でありますが、獨占禁止法の施行とともに、當然日通その他の存在に對して何らかの變更がなされるであろうと思うが、同時にこれに附蔕する一般の道路上の輸送事業における統制關係がどうなるか。小運搬その他の關係の問題がどういうふうに處理されるか、伺いたい。なお道路運輸の省營自動車と民間の自動車營業とのいろいろな摩擦面が現在起きつつあり、將來も起ると思いますが、この省營自動車將來の方針と民間自動車との關係についてお伺いしたい。
○田中(源)政府委員 佐々木さんの御質問の第二點について、私わかりにくい感がありましたが、その點は後囘しにして、第一點の趣旨は、鐵道會議に諮つて、國會に諮らなかつたことは、はなはだ不當ではないかというように拜聽しました。鐵道會議に諮問したのは、最近では三月に一囘であつて、今囘は諮問していないのであります。しかし御質問の趣旨は、鐵道會議に諮問するかしないかという意味ではなく先ほども申しましたように、國會に諮るべきものであるという原則をどうするか、かような御質問と解するのが妥當であると思います。鐵道會議は、現行法が改正されない以上は、これも一應法の運用をいたしていかなければなりません。ただ原則論として、國會に諮るべきではなかつたかということについては、運輸省だけの立場においてこれを行う場合においては、今後その期間がいかほどかかり、いかほど今後運輸面に缺損が生じようとも、當然いたすべきであると思います。なおかつこの問題については、今囘に關しては、先ほど申しましたように、日本のいわゆる經濟國策の上からとられたる總合的なる一貫したものの中に含まれておるのであつて、運輸省自體ででき得なかつた事情も存在いたしておりますので、今後責任をもつてかような事態の起らないことを申し上げた次第でありますから、この點については一つ御了承を願いたいと思います。
 第二點の問題は私十分に了承することができませんでしたから、第三點の既定路線の問題について申上げますが、いわゆる計畫路線とでもいいまするか、この問題について將來どういうふうな處置をとつていくかというふうに御質問を拜承いたしたのであります。御承知のごとく、今日は鐵道建設面の上から申しましても、必要な物は鐵でございます。わが國の鐵の所要量は、申すまでもなく今日二百五十萬トンは要るであろうと想像いたします。しかもそれが生産面におきましては、政府の安定本部の計畫が、今年はたしか七十萬トンのように想像いたしますが、現在におきましてはわずかに三十萬トン餘りしか出ていないというような現状でございまして、鐵道に振向けられるところの各種の資材というものは、まことに寥々たるものであります。かような状態で、既定路線を一日も早く、鐵道自體の觀點から申しますならば、なし遂げたい。かような心持をもつていますが、實際その實施面において非常なそこに支障を來しておりまするので、できるだけわれわれは今後においてこの資材の獲得をいたしまして、既定路線の遂行に努めていきたいと思いますが、路線だけできておりまして、あるいは線路の敷設してないところのものに對しては、場合によつては省營バスを運行いたしましてこれに代るべき處置もとつていかなければならぬかと思います。わが日本の今日の鐵につきましては、まだ講和條約も締結されておりません。從つて賠償問題も未確定のときにおきまして、一定の資材の見透しというものを今日確實につけるということは困難であろうと思うのであります。從つて努めて將來におきましては、許される範圍において省營のバスを利用いたしまして、そうしてこれに代つていくという處置をとる方が妥當でなかろうかと考えておりますが、この點につきましては特にいま一段の研究を要することと存じております。
 なお今後におきまする省營、民營の摩擦をどうするかという點でございますが、既設の業者と省營との間におきましては、努めて隔意なき了解のもとに、國家的見地に立つてこの障害を除去して圓滑に行きたいと考えております。道路法竝びにその統制の面についてのお尋ねのことは、近く法案を提出いたすことにいたしておりますから、その際詳しくお答えをいたす方が妥當であろうかと存じます。
 なおお答えに漏れております點竝びに詳細の點は他の政府委員から代つてお答えをいたすことにいたしたいと思います。

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