国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

国鉄労働組合史 148

2011-04-24 10:00:00 | 国鉄労働組合史

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第三章 分割・民営化攻撃の本格化と国労闘争

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第四節 分割・民営化に反対する国民運動
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├○ 一 地方議会の反対決議 │
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 先にも述べた5000万署名運動とならんで国労は分割・民営化反対の国民世論、多数派の形成をめざす多様な運動を展開した。
1984~1985年の時期を中心に展開された、全国の市町村自治体野議会におけるローカル線切り捨て反対や国鉄の分割・民営化に反対する地方議会の反対決議が広がっていった。
1980年(昭和55)11月、国鉄再建法案が国会で可決され、翌12月に公布された。そしてこの法律によって赤字ローカル線(特定地方交通線)の整理・廃止についての手続きが定められた。
国鉄の分割・民営化に反対する地方議会の反対決議という問題の発端はこの法律の制定を契機とするものであった。そして、国鉄再建法の下で、1981年5月に国鉄当局は「経営改善計画」を運輸大臣に提出したが、この計画のなかで貨物部門の合理化や7万5000人の人員削減計画と並んで、赤字ローカル線の整理・廃止がひとつの柱として位置づけられることとなった。
 これに対して、国労は、1981年1月には「国鉄再建についての要求」を国鉄当局にたいして提出していたが、この要求のなかで、「地方交通線の切り捨ては地域住民の足を切り捨て、また、地域の産業、経済、文教等の面を含め地域社会の破壊計画である」と指摘し、「地方交通線の廃止政策に反対する」という立場を鮮明にした。そして、地方交通線の廃止を阻止するために「住民の足を守る会」などの地域共闘組織が全国の各地に結成されていった。
(以上第二章に上述)
 しかし、特定地方交通線の廃止という不採算部門からの撤退という考えは、1982年7月の臨調第三次答申や再建監理委貝会にも一貫して継承されていくこととなった。
 かくしてローカル線を利用する住民にとっては日常生活に不可欠な交通手段を奪われるという不安が高まった。同時に、国鉄労働者にとっても大規模な人員削減によって職場そのものがなくなってしまうという深刻な事態が現実のものとなってきたのである。国鉄の分割・民営化に反対する国民運動が、国鉄労働者と地域住民の共同闘争として展開され得る社会的基盤はここに存在していたといってよいだろう。そして、このような状況を背景として、分割・民営化に反対する地方議会の決議が、全国各地に結成された共闘組織を支えとして、広がっていったのである。
 1985年7月26日監理委員会「分割・民営化」による国鉄再建という主旨の最終答申を中曽根首相に提出する直前の7月24日現在、国労本部に報告された集約結果によれば、県議会での反対決議が12県、市議会での反対決議が120市、町議会での反対決議が319町、村議会での反対決議が54村で、総計515の市町村自治体が反対決議を採択していた。このうちの102の自治体が1985年6月の地方議会での決議となっている。なお、このような地方議会での分割・民営化反対の決議への動きは、早い所では1982年から始まっており、先の集計結果は1982年~1984年の時期に行われた反対決議は含まれていないので、1986年7月の時点では、先の数字をはるかに上回る反対決議が行われていると思われる。ちなみに、国労が1987年1~2月の時点で集計した結果によると、全国で850の市町村議会が反対決議を行っていた。
 これらの地方自治体の反対決議において特徴的なことは、北海道の釧路や旭川ではほとんどの市町村議会で決議がなされていることや、四国では全部の県議会が反対決議を行っていることからうかがえるように、ローカル線が住民の日常生活にとって重要な役割を担っている地域の自治体が反対決議の中心となっていることである。また、その決議も、各々の地方議会内部の与野党間勢力のバランスや地域的な利害関係を反映して、決議の内容は多様なものとなっている。例えば、長野県の事例を挙げれば、「国鉄分割・民営化に反対する意見書」(堀金村)、「貨物駅廃止に関する意見書」(松川町)、「国鉄ローカル線の維持と運行確保に関する意見書」(長野県)、「国鉄小海線の存続に関する意見書」(佐久市)、といった主旨の決議になっている。しかし、いずれにせよ、これまで説明してきたような地方議会の反対決議や意見書は、国鉄の分割・民営化を阻止していく世論を生み出す大きな契機となったのである。

続く


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