ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

ケルシー・バレリーニ Kelsea Ballerini - SUBJECT TO CHANGE

2022-10-01 | Kelsea Ballerini ケルシー・バレリーニ レビューまとめ

 

メインストリームのカントリー界で若手トップ・クラスのアイドルであり、しかも伝統あるグランド・オール・オープリーのレギュラー・メンバーであるケルシー・バレリーニが、2020年の「Kelsea」とそのアコースティック・テイク集「Ballerini」に続く、5枚目となるオリジナル・アルバムをリリースしました。カントリーならではの生音を適度に生かした清涼感のあるポップ・アルバムで、一聴して人気者の彼女らしく手堅くまとめた作品ということになりますが、彼女としては一つの節目と考えているようです。シングルとしては、"HEARTFIRST"がヒット中です。

 

 

アルバム・リリース予定の発表の際に、ケルシーはソーシャル・メディアでコメントを添えていました。゛今よりもっと若かった頃、私は変化することを恐れていました。変化というのは、私の過去を不確かに彩った、顔の見えない力でしかありませんでした。成長という贈り物によってのみ、ありのままで、そして変わらない事が並立する人生を、生きていくことを学びました。拳を解き、踵を返し、そして若い時期に築いた建物を解きほぐす時に、本当の変容を起こすことが出来るのです゛そして続けます。゛これは、自分らしくあり、癒し、愛し、踊り、感じる季節です。そして、すべてのもののように、それは変化することがあるのです゛

 

 

このリリース予定の発表の後に、ケルシーは近年連れ添った夫モーガン・エバンスとの離婚を発表しました。゛この深く困難な決断は、最終的に終わりを迎えた愛と成長と努力の旅の結果です゛゛ここで言葉を見つけるのは難しいですが・・・モーガンとの長年の結婚生活に非常に感謝し、次のシーズンに向けて希望を感じています゛そしてこの頃、本アルバムの最後を飾る、感傷的なカントリー・バラード"WHAT I HAVE"を先行して発表しました。

゛隣人の草は通りのヒット商品/でもだからといって私の草も同じように緑じゃない/ピカピカの新しいおもちゃを比較してきた/それは私の喜びを奪う根源にすぎない/それは単なるポニーショーだとわかっている゛という歌詞で歌い出し、そしてコーラスに続きます。゛だって、私には屋根があるし、ベッドには暖かい体がある、私は大丈夫、今いる場所で、今あるもので゛。

 

 

カントリーミュージックの特徴はシンプルな構成であるとよく言われますが、まさにそれを体現したカントリー・バラードだと思います。この曲はすでにグランド・オール・オープリーで歌われましたが、その時ケルシーは、゛今あるものを違った角度から見ることができるようになったの。私にとっては、小さなことにもっと感謝するようになったわ゛とオーディエンスに語ったそうです。

 

 

このような前置きを踏まえて本作を聴くと、どこか吹っ切れたかのような爽快感を感じて、確かにケルシーが次のステップに進もうとしている感じがします。オープニングの"SUBJECT TO CHANGE"は、彼女らしい爽やかなコーラスとアコギのストロークで始まりますが、゛それは季節のしわざ/そして夜が明ける時に起こるの/私たちはそれを乗り越えられると思うわ/正しい事と辛い事は時には同じことだから゛と歌われるテンポはかつてなく早く、リズムもタイトになってるように聴こえます。

そんなイメージのナンバーがあと2曲("I CAN’T HELP MYSELF"は、彼女が敬愛するシャナイア・トゥエインっぽいナンバー)続いた後に来るのが、草の根のアコースティック・サウンドが響く"IF YOU GO DOWN (I’M GOING DOWN TOO)"で、本格派カントリー・ファンへも対応(ビデオはそうでもないようですが)します。従来の、彼女の温和な歌声に合わせたソフトなサウンドを、今回は少しソリッドめにシフトした感じです。

 

 

ただ、中盤の"MUSCLE MEMORY"あたりからは、かねてからケルシーが取り組んでいたポップなダンス・ナンバーもラインアップしてたりして、全体としての変化度合いは穏やかな調整レベルのものと言えるでしょう。また、ホンキートンク・シャッフルの"YOU’RE DRUNK, GO HOME"では、ケリー・クラークソンと、昨年CMAアワードの女性ボーカル賞を受賞したカーリー・ピアースらと華やかなデュエットを聴かせてくれて、話題にも事欠きません。

ダンス系の作品に、どうしても要るのかな・・・とは思いつつ、全曲ケルシーがクレジットされた楽曲もなかなか粒ぞろいで、カントリー・アイドルからカントリー・アーティストへのイメージの変化をほんのりと演出したアルバムではないかと思いました。決して強いシンガーではありませんが、その穏やかな歌い口は全く持って個性的で、個人的にも好感触をもっている人なので、これからもカントリー界に彩を添え続けて欲しいと思います。

 


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