ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

イングリッド・アンドレス Ingrid Andress - Good Person

2022-09-10 | カントリー(女性)

 

今年のグラミー賞で、オールジャンルの新人賞を始め、3部門でノミネートされたイングリッド・アンドレスが、待望のセカンド・アルバムをリリースしました。自身の事を少し自虐的ぎみに゛3回のグラミー敗者゛と呼んでいるようが、゛ノミネートされた事自体で、人々は永遠にそのように紹介するようになるのよ゛と語る彼女は、やはりその事を励みにもしているようです。デビュー作「Lady Like」で触れたプロフィールで感じられる、高い音楽的素養が存分に感じられる、バラード系を主体にした和みのポップ・アルバムだと思います。

 

 

タイトル曲の"Good Person"では、冒頭から聴き手に問いかけます゛良い人/はじめまして/笑顔で目覚めるの?/良い人/それはどんなふうに見えるの?/世界を大きな幸せの場所として見ることなの?/私はページをめくる努力中/私にはそれが必要だと思う?゛世の中を楽観的に見る人たちに対する、彼女のメッセージのようです。

イングリッドによると、このアルバムのコンセプトは、彼女の人生で起った出来事を順番に最初から最後まで語ることのようです。だから、現在シングル・ヒット中の、サム・ハントとのデュエット"Wishful Drinking"は、その彼女の語りたいストーリーとは合わないことから、収録されませんでした(ストリーミングではボーナスとして収録)。このアーティスティックな姿勢は、カントリーでは珍しく見えます。

 

 

そのくらいパーソナルな思い入れを込めて制作した作品集ということもあって、バラードの"No Choice"では彼女がかなり感極まって歌っている感じが伝わってきます。゛私、感情的になってしまっていたから、「いいわ、これは明らかに収録は無理ね」って思ったけど、皆が「いやいや、これは絶対に入れるべきだよ」と言ってくれたのよ゛と製作秘話を語っています。

イングリッドは、゛この町(ナッシュビル)の多くのソングライターは、「悲しい曲を書くなんて、あなたはとても勇敢だ」と言うわ゛と語って笑います。柔らかで甘い歌声、そしてデビュー・ヒット・バラード”More Hearts Than Mine"の作風からそういうイメージが定着しているのでしょう。彼女は続けます。゛みんな私に悲しい曲を送ってきて聴かせるのよ。「イングリッドにぜひ参加してほしい」とか言って、悲しい曲ばかりなの。で、私は「いいわね。とても私のブランドらしい。ハッピーな曲があれば、私はハッピーな人間なのよ」って返すのよ゛確かに彼女の音楽にはソウルフルな面もあり、パワフルな歌唱にも個性が有る事は特筆すべきと思います。

 

 

楽曲の質は高くいい曲が沢山あって、年老いたかつてのロック少年には心地よく聴ける作品集です。ただ、カントリーというジャンルの現状からすると、エコーのかかったゴージャスなサウンドが前面に主張してくる曲がちらほら見受けられ、気になります。これはファースト・アルバムでも感じましたが、確かにそこがイングリッドの資質でありやりたい事でもあるのでしょう。”Talk”ではコーラス・メロのモダンさが異質です。この辺りが、パーソナルなコンセプトとマッチしてるかしら、とも感じたりします。"Good Person"や"Yearbook"、"Blue"あたりの控えめな音世界の方が、”More Hearts Than Mine"を期待する聴き手にはなじめそうに思いました。

 

 

少し前にご紹介した、ミカエラ・アンの音楽あたりと接点が有るようにも思えて、違いは一定のセールスを目的とした音(メインストリーム)か、そうでないか(アメリカーナ)の差だけのような。とはいえ、歌声だけでなくルックス的にもスター性溢れるイングリッドの、メインストリーム・カントリー界での今後の動向に興味が尽きません。

 


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