ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

リーバ・マッキンタイア Reba McEntire - Keep On Loving You

2009-08-31 | カントリー(女性)

●2019年の「Stronger than the Truth」についての記事をアップしました


 久々の新作を迎えるために、おさらいとして究極のベスト「Reba #1’s」を聴いていたのが災いしたかな・・・・

 今やカントリー・フィールドのリビング・レジェンドに域に達した感のあるグレイトなリーバ・マッケンタイアの、久々で待望のニューアルバム「キープ・オン・ラヴィング・ユー」(邦盤もアリ)が、テイラー・スウィストを世に送り出したスコット・ボルチェッタのレーベル、Valoryレーベルからリリースされました。長くメジャーMCAの看板スーパースターであり、70年代のデビュー以降、80中盤から90年代にかけてカントリー界の女王として君臨してきたリーバ(とファースト・ネームで通用する、アメリカン・ミュージック界でも数少ないアーティスト)。元々はトラディショナルでアコースティックな素晴らしいスタイルで人気を確立。その後カントリーのクロスオーバー化にも積極的に取り組んできた人ですが、その歌声はいつの時代もリアル・カントリー・ボイスであり続けました。キレと華やかさが見事な彼女の声から溢れ出るフレージングは、確かで緻密なテクニックに裏付けられた、情熱的で圧倒的なもの。カントリー・ファンの誰もが一目置く存在です。

 しかし、その彼女もさすがに2000年代に入ってからは若干ペースダウン、2007年のゴージャスなデュエット企画盤「Duets(デュエッツ)」を含め、これまでアルバムは3枚きり。それよりもTVドラマでの活躍や、ブロードウェイのミュージカル「アニーよ銃を取れ」に代役で出演する等の俳優としてのチャレンジの方で話題を振りまいていました。特にブロードウェイのパフォーマンスでは、トニー賞の特別賞(当時代役に対するカテゴリーがなかったから)を獲得するまでの賞賛を受けたのです。その彼女の、期待の最新オリジナル・アルバム。Nielsen SoundScanの集計によると、発売第一週で95,817枚を売り上げ、ビルボードのポップチャートで初登場No.1を獲得。



オープニングはリード・シングルとなった"Strange"、リーバには珍しくワイルドなアップテンポ曲をシングルにしてきました。この他にも、"Just When I Thought""I Want A Cowboy"、華やかなタイトル(リーフレットでは、ピンクのギターを持ち気を吐くリーバの姿も)"Pink Guitar"など、現代カントリーの主流と言えるコンテンポラリーで威勢のよいナンバーが目白押しです、50歳を超えてもなお(長年連れ添った旦那が出て行き、新たな人生を力強く歩もうとする、"She's Turning 50 Today"という曲もアリ)、そのパワーが衰えていない事をPRします。しかし、彼女の長年のファンの皆様はいかがでしょうか・・・・なんか物足りない、というか、時にオーバープロデュース気味の音圧の強いサウンドが彼女の声にしっくり来てないような。スロー・バラードの方も、期待のタイトルソング"Keep On Loving You"、残念ながらかつての名曲には及んでいない。どうしても期待が大くなってしまいますからね・・・しかし、"Nothing To Lose"では、ブルーグラス風のアップ・テンポ・ナンバーで思わず体が反応します(サウンドの質感が、先に触れた類の、少し気になるものですが)。スローでは、"But For"やLeslie Satcherが共作している"Eight Crazy Hours (In the Story of Love)" あたりは、聴きものです。"Consider Me Gone"はスムーズなミディアム・テンポ曲で、90年代のリーバのスタイルを彷彿とさせます。次のシングルですね。ラストは、ウェスタン・スウィング調"I'll Have What She's Having"で軽くジャジーにクロージング。



 CDでは、ボーナスとして"Strange"のPVと、"Consider Me Gone"のCMT.comでのライブ(CMT.comではその他、数曲見れる)がPCで見れます。そのライブの映像、さすが変わらない堂々たるエンターテイナーぶり(大分ふくよかになられましたね)が見事なのですが、実感として歌声は全盛期と同じとはいかなかったです。かつてのような細やかな表現の妙技があまり感じられず、少し声が枯れ気味、キレや輝きが弱めなのです。私は、1998年のファンフェアで、リーバのライブを見ているのですが、実に声量豊かで、時に力強く、そして時に叙情的に歌い込む表現力には圧倒されました。また、同年のアルバム「If You See Him」のオーストラリア盤には、オーストラリア・ツアーで収録された5曲("The Heart Is A Lonely Hunter""And Still""The Greatest Man I Never Knew""The Fear of Being Alone""Sweet Dreams")のライブ曲がボーナスCDとして付いていて、女王時代の彼女の脂の乗ったライブが記録されています。機会があれば、是非お聴きになってください。特に、アカペラで歌われる"Sweet Dreams"の魂の歌声は圧巻。

Reba #1's



 レジェンドに対して、生意気にもチョッとお小言めいた事を書かせていただきましたが、あくまで彼女のかつての数多くの名演と比較しての話。今のポップ~メインストリーム・カントリーとしては一定のクオリティはキープしていて、十分に楽しめるものですよ。そのくらいは、リーバにとっては軽いものなのです。ただ、このアルバムや「Duets(デュエッツ)」で初めてリーバに興味を持たれた方なら、もう1枚ベスト盤(2枚組みですが「Reba #1's」が一番イイと思います)と合わせて聴かれる事をお勧めします。

 
   My Kind of Country   Whoever's In New England



 1954年オクラホマ州チョーキー生まれ。ロデオ・ライダーの娘として産まれました。兄弟とコーラスグループを組んで、家族で活動をしていましたが、1974年にオクラホマのロデオ大会でリーバが国歌を歌った時、人生が変わりました。シンガー・ソングライターであるレッド・スティーゴールが彼女の歌声に感動、マーキュリー・レコードとの契約につながったのです。マーキュリーで、そこそこのヒットを数曲飛ばした後、MCAに移籍。1984年の名曲"How Blue"のNo.1ヒットをキッカケとして、カントリー・フィールドのディーバの地位を瞬く間に確立していくのです。名曲は、"Whoever's In New England""One Promise To Late""The Last One To Know""Cathy's Clown""You Lie""Is There Life Out There""Till You Love Me""And Still"などなどなど、ピックアップし出したら切りがありません。アルバムとしては、初期のオーソドックスなスタイルで聴かせる1984年の「My Kind of Country」、1986年の「Whoever's In New England」、そしてポップ・カントリーのナイスな雛形と言える1991年「For My Broken Heart」あたりの評価が高いです。CMAアワードでは何度も司会を務め、自身も1984年から1987年まで4年連続で女性ボーカル賞を獲得、1986年には年間エンターテイナー賞も受賞しています。

For My Broken Heart



 リーバの魅力は、トップに立ってもなお、気取らず、控えめで、誠実なところだと言われています。ラジオDJとコネを持ち、自分の音楽がリスナーにどう受け入れられているか、個人的に分析しているそうです。そして90年代の女王時代にこんな素敵なコメントをしています。「私はこういった(スターダムにからむ)騒ぎとはいっさい関係ないわ。私は多くを学び、人々の知恵を吸収した。観察し、勉強もして、貢献もしたけれど、私が流行を作り出したことなんてなかった。私はオクラホマ出身の、何も知らないただの田舎ものだった。ロレッタ・リン、ドリー・パートン、バーバラ・マンドレルをはじめ、仕事で出会った多くの先生達のおかげで立派な歌手となり、音楽業界にとても詳しくなった。チョッとは技術も身につけていて、子ども達にインスピレーションを与える活動をしてきているのならいいのだけど。それに何より、よい意味でのモデルとなっているのなら素晴らしい事だと心から思うわ」(参考文献:「カントリー・ミュージックの巨人」)

 ●RebaのMySpaceサイトはコチラ


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2 コメント

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ますます元気なリーバ (dengee)
2009-09-07 00:29:56
ビルボードのPOPチャートでも初登場1位だったので、「えっ?」という感じで聴いてみました。一曲目の"Strange"を聴いて納得です。パワフルで圧倒されました。私はリーバの流すような歌い方や声質があまり好きではありませんでしたが、これを聴いて考えが変わりました。今年のファンフェアで彼女のライブが見られたのはラッキーでした。4日間とも同じ席で前列に家族連れがいたのでつたない英語で小学生の子供に質問してみました。その子はカントリーが好きでオクラホマから両親とおばあさんと来ていたのです。好きなシンガーは誰かと訊くと隣のおばあさんが即座に「リーバ」と答えてくれました。家族ぐるみで地元出身のリーバ・マッケンタイアを応援していたのです。
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Reba (bigbird307)
2009-09-07 22:26:42
dengeeさん 
コメントをいただきありがとうございます。

ファンフェアのレポートでは、大変おせわになりました。家族ぐるみで楽しめるのが、カントリーのいいところですよね。

またよろしくお願いいたします
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