
2005年のアメリカン・アイドル、シーズン4からカントリー界に、まさ
に彗星のごとくデビューし、第一線で輝き続けて来たキャリー・アンダ
ーウッド。そんな栄光の軌跡を、一昨年、2017年の11月に自宅の階段で
転倒、手首の骨折と顔を40針以上縫う災難が襲いました。そして、昨
年の春にようやく復帰した際に、その感動的なカムバックを後押しした
のが、リード・シングル"Cry Pretty"と同名タイトルの通算7枚目の本
アルバムです。メインストリームのディーバには少々似つかわしくな
い、どう見ても異質な感じを受ける涙のメーキャップには、様々な意味
が込められていそうです。
話題の"Cry Pretty"は、感情を抑える事に努めて来た女性が、それが
出来なくなった状況に苦しむ様を告白するという、まさにキャリー自身
の体験を表現した内容ですが、かつてなく歌声に気合がこめられている
気がします。もともとハイピッチで強く歌える人ですが、さらにエモ
ーショナルに力がみなぎっているのです。

アルバムが進む毎にそれはさらに確かな印象になってきます。つまり、
サウンド的にプログラミングを要所で採用してたり("Backsliding""Drinking
Alone")、スローの曲想ではR&B流の粘り節が多くなってたり("Ghosts
on the Stereo","Low")していますね。極めつけは、"The Champion"で、
ヒップホップMCのリュダクリスをゲストに迎えていることで、その
志向は明白です。一方、歌詞の面でも、雄大なスロー曲"The Bullet"
では、そのタイトルの通り、2017年ラスベガスのカントリー・ライブで
起きた銃乱射事件を題材に、強い姿勢で銃規制を訴えます。シングルに
なった"Love Wins"が従来通りのイメージを保っているかな。雄大なコ
ーラスが耳に残ります。
怪我の治療の期間、傷ついた自分の容姿を見て、彼女は今後の自身の
アーティストとしての方向性について考えたのではないでしょうか。
年齢も当然いやおうなしに積み重なっていきます。彼女は、マルティナ・
マクブライドの影響を大いに受けていると言われます。マルティナは
その豊富な声量を生かし、カントリーにソウル的な歌唱を持ち込みま
した。キャリア後期の「Everlasting」はそのルーツを素直に表現して
います。キャリーも尊敬する先輩の背中を追おうとしているように思
うのです。
カントリー・アルバム・チャートでは、並みいる男性陣の中で存在感
を放って健闘しています。彼女がいて、本当に良かったですね。
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