ぽよ熊さんのテレビ観戦記

活字好きはどうぞ!「昭和後期」(新命名)にTVと蜜月期を送った元女の子(笑)で、かつてのバブル世代が死語満載で送ります

たらこCMとたまひよCM

2006年11月08日 | CM
最近、You Tube(ユーチューブ)で閲覧数の多い日本のCMといえば、キューピーのたらこソースのCMと、ベネッセのたまひよのCM、この二つが双璧だろう。
それぞれ40万を超すビューをゲットしているので、日本関連のものの中でも、かなり多い方だ。

このキューピーのたらこCMは、キグルミという小学生の女の子二人組が、振り付けに合わせて「たーらこー、たーらこー」と歌う、例のやつ。
このたらこの歌のCDがちょっと前、オリコンチャートの上位に入ったとかで、ニュースになっていた。

ニュースでは、ブレイクの秘密をその「キモカワ」ぶり――気持ち悪くてかわいい?――に求めていたけど、あたしには、うーん、その感覚はわかるようで・・・いまいちよくわからない。
でも、あの不気味そのものの砂浜編シリーズに比べると、かわいい女の子がお遊戯のように踊るこのバージョンには、ちょっとほっとした。

しかし、「キモカワ」ですまなかったのが、ベネッセの育児雑誌、たまひよのCMの方だった。
夫婦がそれぞれ赤ん坊の頬にキスした後、二人で口にキスするというもので、ご存知の方も多いと思うけど、その夫婦のキスの様子が「エロい」「キモい」と苦情が殺到したとかで、放送中止になったいわくつきのものだ。
そのニュースを聞いて、じゃあどんなにエロキモなのか、と期待に胸を膨らませて(?)、ユーチューブやその他の動画サイトに向かった人も多かっただろう。
結果は・・・みなさん、ブログ検索をしてみればおわかりのように、「・・・なぜ、これが?」と拍子抜けしたという感想の方が多い。

で、中には、これは単なる話題作り、こうやってブログで取り上げること自体、ベネッセの宣伝に乗せられるだけ、という、なかなかうがった見方もあった。
確かに、育児雑誌なんて、関係ない人たちには全く関係ないから、そういう、ほっとけば一生たまひよなんて知らない層の間で、認知度を高めるには絶好の機会だったろう。

たとえ、今回のようにネガティブなニュースとして取り上げられたとしても。
だって、もともとネガティブじゃなきゃ、ニュースになんて取り上げられっこない、という話もあるから。
それに、実際にこのCMを見た人たちの感想が、「こんな内容、別に非難するに値しないんじゃない?」というものだったとしたら、プラマイゼロで、最終的には、そうネガティブでじゃないところに落ち着く、という読みがあったんじゃあ、という見方も可能。

ベネッセがこのCMを流したのは、関東地方ではたった三日ぐらいだったらしいから、それでこんなにみんなが、後から後から取り上げてくれるんなら、確かに安い投資だったと言うべきかもしれない。
もしかしたらベネッセの宣伝担当者は「たまんないっす」とどこかでこっそり祝杯でもあげているのかもね。
この成り行きに少々似た例として、あたしも最近このプログで取り上げた、どこぞの携帯会社も思い浮かぶ。
でも、残念ながらベネッセには今のところ、怒髪天衝き怒ってくれるライバル企業の社長はいなさそうだから、話題のネタもこの辺で打ち止め、かもしれないが。

ところで、あたしはこのたまひよのCMをオンエアでたまたま見た。
でも、ふーんと思っただけで、それほど何も感じなかった。
この程度で「エロい」というのは、まー世の中、そういう人もいるんだねえ、というしかない。

あたしが勘に触ったのはむしろ(今もですけど)、このCMで最初に入る"Benesse for Everyone"というフレーズの英語のイントネーション。
全ての人のためのベネッセ、とでもいう意味なんだろうけど、なぜか、この時の米語ネイティブの女性が話す口調が苦手だ。
ついでに言わせていただければ、最近クイズ番組などで時々使われるフレーズで、やはり米語ネイティブの女性が、「ワン、トゥー、スリー」と、「トゥー」をいささか不自然に強調するあの発音の仕方も、どうも鼻につく。自分でもなぜかはわからないけど。

それはさておき、今一生懸命思い出してみるに、このたまひよのCMを見たとき、ちょっと変、とあたしもかすかに何かを感じたような気がする。
そして、もっと繊細な方々はすぐに気づいて、苦情の電話だかをかけたのだろう。
ここからがあたしが本当に言いたいことなんだけど、その、あたしがちょっと変と感じたのは、他のCMでは隠されている何かがここでは露出している、というようなことだと思う。

他のCMでは隠されていて、このCMでは露骨に現れているものとは何かというと、つまりこのCMには変なリアルさがあったのだ。こちらを若干気恥ずかしくさせるようなリアルさ。
普通、テレビはある種ありえない、フィクションの世界を創って見せる。CMならなおさらのことだ。
もちろんCMにもよるけど、基本はモデルのような美男美女が、美しく計算された設定と構図の中であたしたちを魅了する。

でも、このたまひよのCMは、たぶんわざと、この夫婦をその辺のコンビニや路上のどこででも見かけそうな人たちに映した(赤ちゃんだけはモデルなみにかわいいけど)。
つまり、この夫婦はテレビを見てるあたしたちと同じような人たちで、いわばあたしたちは、鏡のように、この夫婦を通して、等身大の自分たちの姿を見させられてしまうのだ。

しかも、この人たちは画面の中でフォーカスされ、背景もほとんど映されてないから、視聴者はほかに目を転じようにも、その対象が見つからない。
画面を見ている限り、この夫婦から目をそらしたくても、そらせないのだ。
いきおい、この夫婦の動作を凝視するしかない。
夫婦の後ろから、わざとらしく日の光が強くさしこんでいるのも、なんだか光り輝く鏡の反射を見ているような錯覚を、無意識のうちに呼んでいるのかもしれない。

そして、「幸せ、かもね」というコピーが画面の中央に出て来る。
まさにちょうど、キスしている夫婦の口の辺りだ。
視聴者のあたしたちは、その合わさっている二人の口元を見つめるしかない。
カメラは、ちょっと下からその口元をのぞき込むような位置にあって、なんといえばいいのか、とにかくビミョーな構図だ。
そして、夫婦のキスをしている時間が、ちょっと普通より長すぎる。
極めて単純な構図、極めて単純な動きしか存在しない画面に、視聴者はしばらくの間むりやり吸着させられ、イライラし始めるのだ。

あたしが思うに、なんとなく、これってちょっと、裏切られたような気にさせられるんじゃないか。
つまり、テレビがウソをついてくれないのだ。ビジュアル的にちょっときつい、というものを突然強制的に見せられて、いつもの夢の世界を見せてくれないのだ。
そして、見せられているのは、別に見たくもない自分の姿。

そうだとしたら、こんな姿を見せつけて、視聴者をあっけにさせておいて、彼らに向かって、「幸せ、かもね」と語りかけるのは、はっきり言って、かなり確信犯的にきついブラック・ジョーク、痛烈な皮肉ともいえるのかもしれない。

ところでちょっと最初にかえると、ユーチューブでは、投稿画像に対して、自分で作ったビデオをレスポンスとしてさらに投稿できるのだが、さっきも言ったように「キモカワ」で多くのビューを獲得したキューピーのたらこCMにも、そのビデオ・レスポンスが何本かついていた。
その一つが、このたらこCMを見ている自分/視聴者の反応、というものだった
取り付かれたように何度も何度もCMを見ているうちに、口からよだれをたらし出し、最後は唇から血がにじんで落ちてくる、という、相当キモい映像だ。

ここまで「キモキモ」ではないにせよ、たまひよCMで見せられたのは、ある意味こうした、ビジュアル的にナイスとは言いがたい、CMを見ている自分自身のようなものだとしたら、このCMに対する強い拒否反応が起きるのも当然のことと言えるだろう。

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