小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

YouTuber達のソフトなBL小説です。男の方もどうぞ。更新情報などはブログ1P目又はツイッター(X)にて🌹

小説「オミとカイ」24.カイとオミ

2024-07-31 22:25:00 | 小説
 退院の手続きをカイがすませたところで、俺たちは駐車場にむかった。
 
 運転席は俺、助手席はカイ。後部座席にはダイキ。そして今は昼間。
 
 新鮮でもあり、物凄く幸せな気分だった。

 高井神社の駐車場で、俺たちは神社に向かって一礼して、木陰に停めてあったカイの車にカイと俺が乗り、俺の車はダイキにまかせた。

 車が走り出すと助手席のカイは、

「…オミ、今回は本当にごめん 」

「うん 」

 本当は「うん」どころではないのだが、俺と同じでプライドが高く、不器用で、謝ることが嫌なカイには、これが限界だろうと思ったのだ。

「でもさ、もう二度と黙ってどこかに行かないでよ 」

「うん。もうそういうこと…する理由が…」

 信号待ち。

「…なくなった…って、オミ…その…ほんとに俺とつきあってくれるんだよね? 」

 そのときのカイの顔は今にも泣き出しそうで、俺も胸がいっぱいになり、

「うん 」

と、答えるのがやっとだった。



小説「オミとカイ」23.カイを迎えに

2024-07-30 22:03:00 | 小説


「すぐそこのネカフェにダイキと一緒に泊まってるから。何かあったら SNS で…」
 
ようやくいつもの調子に戻れた。

「そうなの? 俺もそっち行きたい 」

「今どうしてここにいるのか考えてください、専務」

「はーい 」

 まだ体を起こせないようだ。もうおしゃべりはやめて帰った方がいいな…

「でも本当は専務にポテトぐらい差し入れしたいな 」

「でしょ?」


 駐車場に向かう時 、先に車に走って行ってくれたダイキの姿がなぜかなまめかしく見えた。

 そのわけに気づいて 俺は一人で照れた。

 そうかダイキは華ちゃんとうまくいってるから…

「…俺、何考えてるんだろう…」

 でも、ダイキにああいう時のことなど訊いておいた方がいいのか?

 それにしてもあいつの方が先輩とは…

 いや、華ちゃんに訊けばいいのか…

何でもいい。

 カイと二度と離れたくない。
 

 でも色々と悩んで 一晩寝られなかった。


 次の日、朝9時に病院に行くと、カイはちょうど私服に着替え終わったところのようだった。

「昨日の夜には、今日お昼食べてから午後退院って言われてたんだけど、朝になったら午前に帰っていいよって言われて…
来てもらって良かったよ 」


 転がった時に落とした バッグも戻ってきたらしい。

 他の荷物は、神社の駐車場に停めた車の中にあるという。


小説「オミとカイ」22.少年みたいなカイ

2024-07-29 22:07:00 | 小説
「ほんと?」

 まるで少年のように喜ぶカイにはうなずくしかなかった。

「うん」

「えー!」

「あんまり興奮するのって良くないと思うけど…」

「それはオミの責任だよ 」

「何でだよ 」

「言わなきゃだめ?」


 ぽっ…


 見ればカイも恥ずかしそうに視線をそらしていた。

 カイとこんな話をする日が来るとは思わなかった…

「それじゃあ、明日9時に来るよ 」

 本当は面会時間は午後からなのだが、その前に退院ということになれば、さぞかし不便だろうと思ったのだ。

 …というのは口実でもある。早く会いたいとしみじみ思うから…


小説「オミとカイ」21.襲われたい。

2024-07-26 22:25:00 | 小説
 3人は俺に挨拶をしてくれると、次々とベッドの上で点滴を受けているカイと話し始めた。

 友也君は、俺に相談したいことがあるので待っていて欲しいと言う。

 俺はダイキのいる談話室で友也くんを待つことになった。

談話室に行ってみると 、ダイキは疲れているのか暗い表情で、

「オミさん、 俺 、今夜はこの近くのネカフェに泊まろうかと思ってるんですけど 」

「それいいね。 俺もそうする。でも…まさかカイに何かついてるのが見えたとか? 」

「いや 、相変わらず俺はそういうの見えないですけど、何て言うかカイさんのできるだけそばにいたいような気がして 。もしも社長命令で帰れとおっしゃるなら帰りますけど…」

「いやいやそんなこと言わないでよ」

 安心して疲れがどっと出た俺たちは 甘い缶コーヒーを飲みながら、ぼーっとしていた。

 すると友也君が顔を出し、

「オミさん、すみません…」

 聞けばカイの退院後について困ってしまったのだという。

 本人は自分の部屋に帰る というのだが、
「体は治ってもまたどこかに行かれたらと思うと もう親も僕も気が気ではなくて…」

 しかし 3人ともエリート。仕事で忙しいので 、平日の昼だけ俺の部屋でカイを休ませてもらえないかというのである。

 夜遅くに帰ってくるであろう3人のことを考えると、大変すぎるとダイキも感じてるのが伝わってきて 俺は答えた。

「それだったらカイ君が落ち着くまで、俺の部屋兼会社に泊まるっていうのはどう?」

 友也君は遠慮したが 、俺が押し切ってしまった。

 その後、カイともご両親とも話をしてカイはウチで静養することに決まったが…

当の本人は家族が帰ってしまうと、

「いいよオミ。脳にも異常はなかったし 明日には退院できると思うから 自分の部屋に帰るよ」

「ダメだよ 。みんな心配してるんだから。誤診ってこともあるし それで 孤独死したらどうするんだよ」

「いや、そうじゃなくて、お前の部屋なら、俺お前のこと襲っちゃいそうで…」

「いいよ。就業時間外なら 」



小説「オミとカイ」20.俺の男という言葉。

2024-07-25 21:46:00 | 小説
 女の子相手ならどうとでもできるけど、男のターゲットになんかなったことがなかったから、どうしていいかわからなかった。

 …前に ダイキに行ったことは嘘。

 俺は男と寝たことはないし 誘わせたこともない。

 なので、これはどうすれば…初めての恐怖だった…

「ごめんなさい。こいつ俺の男なんで 」

 腕を掴まれて振り向くと、カイだった。

 ポロシャツ姿の青年はカイの迫力に気圧されたらしく、すぐに俺の腕を放すと、ごめんなさい、とだけ言って、さっさと逃げていってしまった。

「オミ、ここの撮影はやめよう。 次の公園にはこういうとこじゃないんでしょ? 」

「うん、そのはず。」

 そして心配してやってきたフクちゃんとダイキと合流して、また次の心霊スポットに向かったのだった…


「そっか… あの時カイはそんなこと考えてたんだ 」

「あぁ、ここまで話しちゃったな… 忘れて」

「いやいやそんな 」

「オミだって嫌でしょ。俺のこと友達と思っていたのに俺は…」

 そんな時 数人の足音が近づいてきた。

 振り返るとカイの両親と弟の友也君だった。