「違うよ。いろんな人に言われるけど、 俺は華ちゃんと付き合ったことはないし、何より俺 、男性と恋愛したことないし、寝たこともないし」
カイの顔が天井を見てこわばった。
「どうしたの?」
「…ってことは OK ということ?」
「え?」
「OK なんだねっ!」
そう言って カイは笑ったが、しかしすぐに真顔になり、
「嘘だよ。でもありがとう。この数分間、俺 嬉しかったよ。オミに俺の気持ちも伝えられたし 。」
俺は拍子抜けしてしまった
「えっ?」
「無理しなくていいよ。 ハッテン場で、〈俺の男です〉って 手を引っ張った時オミ怒らなかったじゃん。あれは何だか 密かに嬉しかったな」
あれは忘れもしない、とある日の心霊スポットの2つのトイレの撮影だった。
最初の方が、二人の女性が一人の男性を取り合ってケンカになり片方を刺殺してしまった。
その、美人の霊が目撃されているA公園のトイレ。
二番目のB公園は、自殺が多く、スーツ姿のサラリーマンの霊がトイレでもそれ以外の場所でもよく現れるという。
しかしトイレは〈ハッテン場〉と呼ばれる男性同士のナンパスポットで、夜の人通りは途切れることはないというのだが…
どっちも 公園のトイレ なのだが、俺はAとBとを取り違えてしまったらしい。
自殺の多い 心霊スポットということだったのだが、夜なのに駐車場には人も車も多くて、車の中でゴソゴソやっている男たちも多そうだった。
「なんかすごくない ? 」
バーの店長もやってて、世間を俺たちより知っているフクちゃんさえ、驚いて声をあげた。
責任を感じた俺は、
「確かにすごそうだけど俺、肝心のトイレの様子を確認してくるよ」
と 車から降りてトイレの方に向かって走った…
どう見ても男性ばかり 。そして なんだかベタベタしている…
トイレがハッテン場 なのはこっちの公園だったのか…
その時、
「お兄さん 、一人? 初めて? 俺と遊ばない? 」
見知らぬ青年に腕をがっちりと掴まれ、俺はフリーズするばかりだった…