小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

心霊YouTuber達のソフトなBL小説です。男の方もどうぞ。更新情報などはブログ1P目又はツイッター(X)にて🌹

小説「オミとカイ」19.ナンパされるオミ

2024-07-23 21:35:00 | 小説
「違うよ。いろんな人に言われるけど、 俺は華ちゃんと付き合ったことはないし、何より俺 、男性と恋愛したことないし、寝たこともないし」

 カイの顔が天井を見てこわばった。

「どうしたの?」

「…ってことは OK ということ?」

「え?」

「OK なんだねっ!」

 そう言って カイは笑ったが、しかしすぐに真顔になり、

「嘘だよ。でもありがとう。この数分間、俺 嬉しかったよ。オミに俺の気持ちも伝えられたし 。」

俺は拍子抜けしてしまった

「えっ?」

「無理しなくていいよ。 ハッテン場で、〈俺の男です〉って 手を引っ張った時オミ怒らなかったじゃん。あれは何だか 密かに嬉しかったな」




 あれは忘れもしない、とある日の心霊スポットの2つのトイレの撮影だった。

 最初の方が、二人の女性が一人の男性を取り合ってケンカになり片方を刺殺してしまった。

 その、美人の霊が目撃されているA公園のトイレ。

 二番目のB公園は、自殺が多く、スーツ姿のサラリーマンの霊がトイレでもそれ以外の場所でもよく現れるという。

 しかしトイレは〈ハッテン場〉と呼ばれる男性同士のナンパスポットで、夜の人通りは途切れることはないというのだが…



 どっちも 公園のトイレ なのだが、俺はAとBとを取り違えてしまったらしい。


 自殺の多い 心霊スポットということだったのだが、夜なのに駐車場には人も車も多くて、車の中でゴソゴソやっている男たちも多そうだった。

「なんかすごくない ? 」

 バーの店長もやってて、世間を俺たちより知っているフクちゃんさえ、驚いて声をあげた。

 責任を感じた俺は、
「確かにすごそうだけど俺、肝心のトイレの様子を確認してくるよ」

と 車から降りてトイレの方に向かって走った…

 どう見ても男性ばかり 。そして なんだかベタベタしている…

 トイレがハッテン場 なのはこっちの公園だったのか…

 その時、

「お兄さん 、一人? 初めて? 俺と遊ばない? 」

 見知らぬ青年に腕をがっちりと掴まれ、俺はフリーズするばかりだった…


小説「オミとカイ」18.釣った魚は殿様マグロ

2024-07-21 22:06:00 | 小説
「は?」

 その時のカイの驚きと不満の入り混じった複雑な表情を、 俺は一生忘れないだろう。

「簡単 ? 俺は、20年間我慢してきたのに、 簡単?」

「じゃあ 高校1年の時から俺のことを…?」

「いいじゃん、その辺は 」

 それじゃあさっきの俺の言葉に、怒ってしまうのも無理はない。

「簡単 って何だよ?」

本当に、言ってはならない言葉を言ってしまった。

「いや、俺の頼みに比べればってことさ 」

「ああ、そういうことね。 じゃあ オミの頼みは? 交換条件は?」

「戻ってきて、また 。礼霊ずにも」

「にも、 っていうのはどういうこと? 」 

「俺の人生と、礼霊ずに戻ってきて、っていう意味 」

 カイは照れたような笑みを浮かべた

 さすがにここまでくれば帰ってきてくれるだろう。

 しかし カイは、

「…そんなこと言って、昼はいいけど夜は大変だぞ…」

「何だよ、夜って 」

そして お互い、頬を赤らめてしまった。

「そう言うオミの方はどうなんだよ 」

「やだ、言いたくない 」

「じゃあ俺、帰らない 」

 俺はカイの作戦にはまってしまい、つい言ってしまった。

「いや、その…マグロとか、えーと殿様マグロとか、陰口叩かれてたみたいだけど…」

 殿様マグロって…さすがのカイも目を丸くしていたが、その次にはその目は怒りをぶつけてくる。

 その呼び名は誰につけられたものなのか、そしてそれを体験させたのは誰なのかと…

「その相手は華ちゃん? 華ちゃんなの? 」



小説「オミとカイ」17.恋の駆け引き

2024-07-19 21:55:00 | 小説
「その前からもう 破局に向かっていたから。そこに向こうからもういいって言われた。あと、お父さんが倒れたから、お父さんの会社を手伝いに福岡に帰るって言われたんだ。…東京でのことは全て忘れますって振られた…」

 カイもびっくりしていた。

「それ本当なの?」

 うん、とうなずいたものの、俺はカイの気持ちを知ったけれど、どうしていいかわからない。

 すると カイの方が、
「さっきの続きだけど俺、高井神社から帰ろうとしたらいい香りが漂ってきたんだよ」

「線香っていうこと?」
 俺はてっきり霊が近寄ってきた証と言われる線香の香りかと思ったのだ。

「違う。違うよ。 線香 じゃなくて 、オミの香水の香り」
「え?どうして?」

「俺にも分からない。
でも、それにびっくりして、オミが来てるのかなってキョロキョロしてしまったら次の瞬間、足を踏み外してこんなことに…」

 カイと俺はなんとなく見つめ合ってしまった。

「カイ、頼みがあるんだけど」

「内容による」

 そのきっぱりとした口調が、いつものカイになったような気がして俺は嬉しかった。

「じゃあ俺も 、カイの頼みを1つだけ聞くから」

 するとカイは絶対にオミには無理なんだと思うよ 偉そうに言い、

俺も ムキになって

「何だよ 言ってみろよ」

するとカイは早口で

「俺と付き合って彼氏になって 婚約して結婚して…」

なぜか ドヤ顔された 。
しかし俺は負けじとこう答えていた。

「簡単じゃん」

「は? 」



小説「オミとカイ」16.恋のフリー宣言

2024-07-18 21:52:00 | 小説
「で、迷っているまま、 昼間の高井神社に来た。
 そこで 、俺は寺社仏閣について学んで、いつか礼霊ず、に貢献すればいいと思いついたんだ。そしたら…」

 カイは何も言わなくなってしまった。ややしばらくして また俺の方を見ると、


「オミ、やつれてるな…」
と、かすかに笑う。

「笑うなよ。カイのせいなんだからな」

「そうなんだ」

 カイは穏やかな笑顔で、ちょっと不吉な気もする。

「俺なんか 心配で飯が喉を通らなくって 、カブトムシみたいに栄養ゼリー飲んでるんだから。もう二度と いなくならないでよ 」

 カブトムシ …カイは大笑いしてくれた

「笑いすぎだよ。でも大変な日々だったけど、ちょっと俺にもね 色々変化があったんだ」

 カイの話の腰を折ったまま、俺は自分のことを話し始めた。

「何があったの?」

 カイは真っ青になってしまった。やばい。

「俺ね、フリーになったんだよね。だから今は恋人募集中 」

「え? 婚約するとか言ってたじゃん 」

「うん… 」

 次の言葉を選ばないと、カイを決定的に傷つけてしまうと俺は思った。


小説「オミとカイ」15.ささやかな告白

2024-07-17 21:55:00 | 小説
「カイ、どうしてこんなことしたんだよ? 俺に悪いとこがあるなら言ってくれよ。俺が変なときに鈍いのは、カイが一番良く知ってるじゃん 」

 二度とこんなことになりたくなくて、自分は叫んでいると思った。

 すると 遠い目をしてカイは言った。

「悪いところなんて…ないよ。…むしろその逆…」
「逆? 」
「本当は悪いところはね、1つだけある。ダイキにだけは話したことがあるからダイキに訊いて 」
「なんだよ、ダイキにばっかり。何で名刺 持ってたんだよ。俺のじゃなくて 」

するとカイは寂しそうに、

「俺はあいつが羨ましくて仕方がなかったんだよ。
好きな人が男性でも、他人のお前に言えて、障害があっても突き進んで、大好きな華ちゃんをゲットして 」
「…」

 カイはため息をついた。
「俺の方は、すぐ隣にいるヤツの…恋愛に耐えるしかなくて、そいつに婚約の相談をされるのはもう耐えられなかった。
結婚なんてされたら…もう…」

「ああ…」

 …やっぱり俺のことだったのか…

「似合いの2人だからもう決まりだろうし、もうここにはいられないと思った それで…」

 カイは視線を俺から逸らした。声は震えているようだった。

 俺は立ちつくすばかりだった。

 …フクちゃんの読みは当たっていたのだ。

「…どこへ行くつもりだったの?」

「いや行く当て なんか考えられなかった。この町から出て行くのがまず嫌だった。死ぬことは しばらく 思いつかなかったし」

「でも思いついてたんだ…」

「まあね。でも自殺は俺らしくないから、じゃあ俺に会っているのは何だろう、って考えながらうろうろしていたんだ。
礼霊ずにはもう戻れないだろ。覚悟はしたよ 」

 …戻ってもお前に会うなら仕方がないし…

「そこまで考えていたんだ」

 俺は改めて ショックを受けた。
  冷静に考えればそうなるのだろうけど…