離しません!

YouTuber達のソフトなBL小説です。男の方もどうぞ。更新情報や雑談はツイッター(Ⅹ)で🌹不定期更新すみません

40.初めての廃神社。

2024-01-30 22:51:00 | 小説
 階段を上り終えると、

「失礼します 」

 カイさんにならって、俺も鳥居の前で一礼して、境内に入った。
 
 こういう場所に相応しく、どんよりとした曇り空だった。

 社殿は崩壊こそしていなかったがものすごくさびれていて小さく、鈴も鈴紐もずいぶん古く見えた。

 賽銭箱はなかった。

 扉の格子からそっと中をのぞいてみると、男二人が座るのがやっと、の広さのように見えた。

 床にはかなりホコリもたまっていて、神具のようなものがニ、三個ほど転がっていた。

「ご神体もなさそうだし、本当に廃神社なんだな 」

 振り返るとカイさんは、今度は社殿の脇の石碑をじっくりと見ていた。

「あれ、高井神社って書いてあるんだ 」

 高井といえば、カイさんの苗字と同じだ。

 近づくと俺にもどうにか読めた。このように神社の名前が書いてあるこういう石碑は〈社号碑〉と言うそうだ。 
 


39.現場はきついよ。

2024-01-28 17:42:00 | 小説
 そんな恐ろしい霊が…出会ってしまったら、俺はどうすればいいのか…

「かなり手前でいつしか消えるとはいうけど…俺も写真はネットで一回しか見てないけど、目撃談とは違って、頭が髑髏ではない感じだった」

「…というと? 」

「怖い顔の幽霊。白い着物は着てる感じだったけど 」

 そして、カイさんは、
「何か、かなり昔からの霊かなって個人的には感じたけどさ。鎌倉時代とか 」

 でも、現代人でも死に装束は白い帷子だしなあ、と付け足すと、ごめん、そろそろ行こうか、とカイさんは機材の入った黒のリュックを持ち上げた…


 思い機材を持っての山道は結構きつかった。
 
 傾斜も厳しいが、道が広めとはいえ、右手の崖、鬱蒼と生い茂った草木が嫌で嫌で仕方がなかった。

 見ると来るとは大違い、といったところだ。

 そして…本番は夜…務まるのかな、俺…

 でも、涼しい顔で歩いていくカイさんの足手まといになりたくなくて、あと、これから続くであろう撮影生活を考えて、俺は必死で歩いた。

「階段か…」

 30分ほど歩いて、左手を向いて立ち止まったカイさんが上の方を見つめた。

 そう段数は多くはないが、たしかに一番上には鳥居があるわけで…

 
 もう勘弁して…

 
 と、内心思いながらも、カイさんについていくしかなかった。




38.さまよう骸骨の話

2024-01-26 23:05:00 | 小説
「そうですね… 」

 俺もしみじみそう思った。

「それじゃあ、〈ず〉は?」

 〈ず〉かあ…

 カイさんは面白そうに笑い、

「オミとカイで、絶対に解散しない二人、ってところかな。でもフクちゃんも手伝ってくれるようにもなったし、ダイキ君も入ってきたしな。仲間が増えるいい名前なのかもな 」

と、俺に笑いかけてくれた。

 そして、カイさんははっとして、

「そうそう、 心霊のこと。ここで何より一番特徴的なのは、昼間、その山道をふらふらと骸骨が歩いていることがあるんだって 」

 俺は、弱すぎと思われないように何か言わなければと、

「え? 首だけじゃないんですか? 」

「うん、髑髏だけじゃなく、全身骨で。ぼろぼろの、もともとは白だったんだろう帷子(かたびら)を身にまとった骸骨がよろよろと歩いてくるんだって。でも、髪もまだ抜けきってないってさ…」


37.カイは礼を尽くしたい。

2024-01-25 22:15:00 | 小説
「ここは特徴的な霊が出るんだよ」

と言いさして、また急いで別の説明を始めた。

「そういえば、〈礼霊ず〉の由来って話してないよね? 」
「あ、はい 」

「今となってはなんだかダサいチャンネル名なんだけど、まずすぐに心霊ものだってわかるように霊の字を入れた。礼って字は俺が提案したんだけど…」

 見えなくても、出会っているかもしれない霊に対しても礼を尽くしたい、ということだそうだ。

「悪霊のことまで考えるのは忘れてたんだけど 」

と、カイさんは笑い、

「でも、もとは我々人間に関わった存在なんだから、ご挨拶くらいはした方がいいと思うんだ 」


36.カイさんの優しい指導

2024-01-23 23:05:06 | 小説
 「怖いものなし」と言われるカイさんが怖いというのだから、俺は少し身構えた。
 それにしても、どうして来てからそんなこと教えるかなぁ。

「まあ夜に、髪の長い白い着物の女性、っていうのはよく聞く話だけど、ここにもその話はある。あとは斧とか鎌をを持った昔の人、着物の男性を見たって言う人もいる。そして昼は…」

「昼も何かあるんですか?」

「ああ。心霊写真でも、昼なのにはっきり霊体が写ってるのってよくあるだろ? ここもそんな感じなんだ 」

 動画やテレビでしか心霊写真を見たことのない俺にはまだピンとこなかったが、

「今日は自分のスマホで撮影していいから。あと、撮ったものは帰って3人でチェックが終わるまで絶対に削除しないで 」

と言われて、自分のスマホに心霊写真が残ったり、残されたりするのかと思うと初めて心から怖くなった。

 心霊YouTuberの世界をナメていたわけではなかったのだが、
 
 …自覚が足りないということだったようだ…