フクちゃんの店のカウンター席でカイが席を立った時、俺は何を話していただろう?
麻里華ちゃんとの婚約の進め方…
若いのに俺と3年近く付き合っているから、 早くプロポーズして欲しそうだったけど…
でも、仕事が忙しいからと結婚のタイミングや、家庭と仕事の両立にお互い悩んでいたのだ。
そのうち、俺はまずは婚約だけでもしてしまおうかなと思い始めて…
同じく独身の親友だからと、カイに尋ねたとたん、突然 席を立たれた…
フクちゃんの声で現実に戻された。
「オミ君、俺の車で帰りは送るからさ、一足先にダイキ君に帰っててもらったら?会社の方に カイ君 戻ってくるかもしれないし 」
フクちゃんの表情が意味ありげだったので、俺はそのままダイキに頼んだ。
2人っきりになるとフクちゃんはカーペットの上に腰を下ろして、
「俺これまでのこと 昨夜のこととか考えたんだけど、カイ君 は オミ君の結婚が嫌だったんじゃないのかな」
意外すぎて一瞬 返事ができなかった。
「えっ、ええっ? 」
「前々から麻里華ちゃんや、 結婚絡みの話の時は笑顔が引きつってるなと思ってたんだよ。気がつかなかった? 」
「いやあ… 」
俺は全然気づいていなかった。
「じゃあカイは麻里華ちゃんのことが…」
俺は混乱するばかりだった。
「そうじゃないよ 」
と言って フクちゃんは俺を見据えてくる。
え 、俺ってこと?
「いや、そんなこと、そんな…」
「いや 俺にも本当のところは分からないよ。でも、クールで仕事もできるカイ君とは思えないような寂しそうな表情でさ…
オミ君が電話で麻里華ちゃんと話してる時とか…」
「いやそれはやっぱり麻里華ちゃんのことをカイが…」
「違うと思うな。カイ君 は麻里華ちゃんとそんなに会ってないでしょ。 好きになるほどは」
「でも一目惚れ とか…」
フクちゃんは、こうなったらカイ君の 行きそうなところに電話してみようと言ってスマホを取り出した。
「念のため麻里華ちゃんのとこもかけた方がいいんじゃない?
俺は ドキッとした 。そしてどうにか、
「気が重いよ 」
「え? なんで? 」
「いや…もう、破局が近い みたいなんだ」
フクちゃんはびっくりしていた。
「え 、でも、 昨日婚約がどうとか言ってたじゃない?」
「うん。 うまくいってないないから取りあえず婚約までは提案しようかと思ったんだ。俺ひとりで勝手に。それでカイにその話を振ったらこんなことに…」