離しません!

YouTuber達のソフトなBL小説です。男の方もどうぞ。更新情報や雑談はツイッター(Ⅹ)で🌹不定期更新すみません

22.オミとカイの実物。

2023-12-31 17:50:03 | 小説
「いや 言ってる意味がわからない」

 すごく急いでいるらしいカイさんはオミさんにそう言ってから、

「じゃあ 入社祝いということで、はい ケーキ 」

とコンビニで買ってきた 美味しそうなケーキをテーブルにレジ袋ごと置いた。

 そして、俺には笑いかけてくれて、
「ごめんね。歓迎会で埋め合わせするから 」

 オミさんには、
「ごめんね。デスクトップの方が突然動かなくなっちゃったから…」
「ああ、全然。あ、そうだ。ちょっと俺のデータがまだ…一緒に行くよ… 」

 すぐ戻ってくるからお茶でも飲んで待ってて、と俺に言い置いて、オミさんはカイさんと作業部屋に行ってしまった…

 …動画と同じ感じで、何だか微笑ましい…

 今俺は、実物を見てる…

 二人は高校以来の仲で、何でも言い合えると動画で見たことがある。
 
 言葉通りオミさんはすぐに戻ってきたが、カイさんはずっと作業をしていて、終わったのは俺がもらった部屋で布団を敷いて、一人でぐったりしていた頃だったようだ。

 緊張から少しだけ解放された俺は、布団に入つても熟睡出来なかった。

 ようやくうとうとし始めた時、暗闇の中でドアがそーっと開いて誰か入ってくる気配がした。

 でも俺はもうそれが誰であっても何をされようとどうでもよく、眠りに落ちていった。
 
 

21.カイさん現る

2023-12-26 22:21:00 | 小説

「分かった ちょっと聞いてみただけだから。気にしないで。

うちはみんな見えないから安心して 」


 俺はほっとした。

「じゃあ うちに来てくれるって言うことでいいのかな 」

 俺はちょっと複雑だった。


 確かに YouTube の仕事はやってみたかったが、オミさんとはそういう関係だし…


 でも一度は決心したことだからお願いすることにした。


 華島さんの手がかりも得られるかもしれないし、好きな仕事もできそうだし…


 ただ、俺の技術と知識のなさで追い出される可能性もあるかもしれないが…


「はい よろしくお願いします 」


 オミさんより俺の方が強引かもしれない…



 その時 玄関のドアが開き足音がした。


「こんにちはー 」


 ノックをして入ってきたのは カイさんだった…


 切れ長な目の美しいカイさんの本物に、俺はまた びっくりしていた。


 しかしそれにはお構いなしで、オミさんは、


「この人 、入社したから 」


そう嬉しそうにカイさんに紹介してくれた。


「あ、どうも。で、この人が友達? ケーキ三個しか買ってこなかったからさ 」


「いや 北海道の人をナンパしたの。千代田区で。オフィスの前で」


20.オミさんは手段で踏み台。

2023-12-25 22:46:00 | 小説
 でも、俺はオミさんについて行くことにした。

 やっぱりこれしか華島さんに会えそうな手段はないように思えたからだ…


 オミさんの愛車で連れて行かれた自宅兼事務所は新しくて広めだったが、自宅としては使いにくそうな間取りのように見えた。
 


 …狭めの応接室の黒いソファーの上で、ペットボトルのお茶を勧められながら緊張していると、オミさんもなぜか緊張したように、

「あのさぁ 笹本君…いきなりだけど、うちの会社に転職しない? 」

 俺が口をパクパクさせていると、

「住み込みで、もちろん 給料は払うし、ここに住んでていいし、食費も持つし」

 俺はただ ただ びっくりするばかりだった
 
「好きなだけ 動画 作りもできるし、YouTube の最先端もわかる。

本当はそういうところに勤めたかったんじゃないの」

 痛いところを突かれた。


ちょっとぐらい ブラックでも、いや ブラックでもこういう仕事の方がいい。

 俺には嬉しい条件だった。

 
 ただ、オミさんとは 華島さんを取り合った中なのだ。

 いや正確には取り合ったというのでもない、

 俺はただの一夜の関係。

 それに引き換え、オミさんは華島さんにに愛されていたのだ。
 オミさんの気持ちはどうだったのかわからないけれど。

 でも男同士は知らないけど、元彼と別れた後も友達同士として付き合いがあるというのはよく聞く話だし…

 それを狙って、俺はできる限りオミさんのそばにいようと思った。

 でもちょっと黙ってしまっていると、オミさんは、

「笹本君も、リスナーとして感づいていると思うけど

〈礼霊ず〉は 今、正念場なんだよね。でも圧倒的に人が足りない。

動画の技術とか知識とか持ってる人はすぐ欲しい。できればお願いできないかな…」

それから 何事でもないようにオミさんは、

「そういえば 笹本君って 霊感はあるの? 」

「…すみません、ないんです…」




19.まくらえいぎょう?

2023-12-22 22:00:00 | 小説
 俺は言葉がなかった。

 まるで自分と華島さんのことを貶められているようでショックだった。

 それと、 オミさんは爽やかな人のはずなのに、まさかこんな人とは思わなかった。

 そんな時に、

「ごめんね、メールが来たみたい 」

 オミさんはスマホの画面をすごく真剣に見ると、

「カイからだったんだ 」

と言って ものすごく嬉しそうな顔をした。そして返事を打ち始めた。

 そして下を向いたまま、さっきまでの生々しい話など忘れたように、

「笹本君 、今日泊まるところは決めてるの? 」

 虚を突かれて、俺は一瞬黙った。

「ん? 」

 オミさんが一瞬あげてくれた瞳は、でもやっぱりさわやかだった。

「いえ、ネカフェでも探そうかと思ってたんで」

「もしよかったら俺の家に泊まらない? 」

 俺は 動揺してしまい何も答えられなかった。

「大丈夫だよ。襲ったりなんかしないから。僕は若い子はダメなんだ。

っていうか、 俺 、枕の時しか男の人とは寝ないんだよね 」

「枕? 」

「あれ?  聞いたことない? 枕営業ってことだよ」

「え ? こんな 爽やかな オミさんが…」

「さわやか? こんなのキャラに決まってるじゃん 」

 俺には驚くことばかりだった。

「こんなこと 他の人には言わないでね。今ちょっといい子を引っ掛けてるんだ。

実家がすごい お金持ちの女の子。

お兄さん二人が会社を継ぐ予定だから、

俺は別に彼女と結婚しても田舎に来いとは言われないし。でも彼女は両親に溺愛されてるからおこずかいも多いし。」

 俺は下を向く ばかりだった。

「それに今日 はカイくんが来るよ」

 おもちゃがあるよ って言われてついていく 子供じゃあるまいし…



18.消えたミオ

2023-12-20 22:13:00 | 小説
「でも、君はその頃はまだ未成年でしょ? 男の子でしょ? そんな人とその…そういうことを華島が… 」

 オミさんはなかったことにしたいんだろう。
 華島さんと俺のことを。

「でも、未成年とか、そんなのあの頃のミュージシャンには関係なかったですよね。 女の子は… 」

他の男のことなんて考えられない。オミさんも含めてだ。

「そりゃそうかもしれないけど…」

 もしかすると、オミさんは俺が華島さんに対して何か悪いことをするかも、と思っているのかもしれない。

 恨みから恐喝とか、切りつけるとか…
 もしくは、恨みというよりただの頭のおかしいファンとか。

「俺もその…華島さんに、華島さんの部屋に引っ張り込まれたんです」

「…そうだね あの人は女の子に飽きて、男が好きになってたみたいだからね…」

 また俺はその言葉に傷ついた。

「でも、俺を廊下で助けようとしてくれそうになったのは、隣の部屋から出てきた ミオさんでしたよね? 」

「覚えてない 」

 冷ややかな切り返しに、俺は泣きたくなった。

 俺があられもない姿で廊下に追い出された時、たまたま通りがかって助けてくれそうになった〈ミオ〉ももうどこにも存在しないのだ。
 華島さんと俺との関係の証人は誰もいないのだ。

 すると、オミさんは笑みを浮かべ、

「でもあの人 そういうこと上手いでしょ。俺もベッドの中でいい思いさせてもらったし…」