…片側が崖のようになっている道で、確かに危険だった。
そして…俺達のライトの中に浮かび上がった神社は、本当にこぢんまりとしていた。
カイに逃げられないようにと、音をたてないように歩くが砂利がうるさい。
まあ、ライトがついているのだから、誰かがやってきたということはもちろんバレているだろう。
「カイさんいますか? ダイキです…」
俺は呼びかけなかった。カイが俺に我慢できなくなったから、こんな事態になっているのだろうから。
とはいうものの、カイの方が声も出せない状態だと大変なので、ライトを当てて、境内をくまなく探した。
しかし、気配もない。
お社はカイが横になれるほどの広さもないし、裏は崖ということもあって、こんな所で寝起きをする訳もないが…
でも、どうせなら、ここですぐに見つかってほしかった。
諦められない俺はダイキと、いつも動画の撮影でやるように15分ほどライトを消して、無言のままカイの気配がするのを待った…
…夏の終わり、虫の音が聞こえるばかりだった。
家に帰ると、もう、何もする気にもなれなかった。
ダイキにシャワーをすすめ、でも俺は、落ち着かなくて応接室のソファに転がっていた。
すでにこの家から彼氏の部屋に引っ越して、幸せな生活を送っていたダイキが泊まり込んでくれるのは、申し訳なかったが本当にありがたかった。
ダイキの彼氏は、ミュージシャンの華島詮(はなしま・あきら)。今は再デビューの準備をしているロックボーカリストだ。
俺もプロのミュージシャンを目指していたときにお世話になった。
俺と同じ年なので、ダイキとはひと回りも違うが、付き合い始めのせいもあってか2人はアツアツだ。
お互い忙しいので、連絡はマメにしているという。
その夜は全く眠れなかった。
カイの捜索のためにも少しは寝ておかなければ、とベッドの上で横にはなっていたものの…気がつけばもう朝だった。